“Viso-Hektor 125mm/f2.5″、堂々としたクロームメッキの質感にぎっしりとガラスが詰まっている様な重量感。フードやキャップ等もオーバークォリティの仕上がりで往年のLeitz製品の作りの良さを感じさせる本レンズ。ビゾフレックス用のレンズの中では大口径のF2.5を誇り、シャープネスと柔らかさの両立するその描写でファンの多いレンズでもある。
実際使用してみると、光線状況と絞りの組み合わせで描き出す絵が随分異なる印象で、使いこなしがいのあるクセの強いレンズという感じだ。 まず1枚目はF2.5の開放でモノクローム。純粋にハイライトの滲みとトーンを見て頂ければと思う。つややかさのある質感描写は重みを感じさせる描写で、解像線にフレアが伴い情感ある描写を演出してくれた。
最短距離での撮影。ビゾフレックスでは、M型ボディで近接撮影が出来るのが強みである。フルサイズのOVF一眼レフとなる訳で、これはなかなか楽しいもの。ちなみにMデジタルボディではビゾフレックスの使用と装着に制限がある。基本的にはビゾフレックスIII型であれば装着が可能であったが、しっかりと説明を受けた上で使用したい。
初期の大口径望遠レンズだけに、周辺に滲みや収差を見る事も多い。それでもしっかりとした線とコントラストで描き分けていくその描写は魅力的なものである。
無機質な被写体も想像以上に良く描写する。明暗もしっかりとあり、力強い表現だ。
開放でこうした被写体を撮影すると、光が大いに暴れてくれる。もちろん優秀な描写、とは言わないかもしれないが、個人的には大いに歓迎したい描写だ。新緑の木々の、光が滲む若芽が実に美しい。
一変、F5.6まで絞り込むとこの描写である。舌を巻く解像感と、コントラストの再現。この豹変ぶりが面白い。
最短、F2.8程度での撮影。絞り羽根の枚数は一番下の写真を見てもらえればお分かり頂ける様に、驚くほど多い。絞り込んでもほぼ円形を保ち続ける様は圧巻だ。後ろボケは決して素直とは言いがたいが、円形絞りのおかげか不思議と煩わしくない。綺麗な光である。
こうしたカットでは、同じ絞り値でも随分おとなしい、シャープな描写をする。予想を裏切られる事も多いレンズだ。
非常にプリミティブながら、しっかりと仕事をする事に改めて感動してしまったビゾフレックス。「レンジファインダーLEICAをなぜ重くしてまで一眼レフとして使うのか。」これは全く真っ当な疑問だが、しかし理屈は抜きにして魅力的なのだから仕方が無い。説得力のある反論としては「ビゾレンズ群」がおしなべて優秀、味わい深い銘レンズ揃いだという点があるだろう。今回使用した”Viso-Hektor 125mm/f2.5″も実に個性的な1本、これだけでも大きく重いビゾフレックスの代償として、歓迎すべきレンズではないだろうか。
Photo by MAP CAMERA Staff