

フォクトレンダー『 Voigtlander APO-SKOPAR 75mm F2.8 VM 』のフォトプレビューをご紹介いたします。本レンズは、光の三原色を構成するRGBの軸上色収差を限りなくゼロに近づけるアポクロマート設計を採用。絞り開放から画面周辺部に至るまで、色滲みのない高い解像感を実現しています。新設計の光学系は6群7枚構成で、そのうち4枚に異常部分分散ガラスを用いることにより、優れた光学性能と全長44mm・重量191gという標準レンズ並みの小型軽量化を両立させました。この特性を最大限に活かすべく、専用設計された金属製ねじ込み式フードは、装着時の突出部がわずか3mm。光学式レンジファインダー使用時でも撮影フレームを遮ることなく、作画に専念できます。高性能とコンパクトさを高い次元で結実させたこの中望遠レンズを、実際に撮影した写真とともにぜひご覧ください。
ファーストカットとして、モノクロで撮影した一枚をご紹介します。私自身の好みが強く反映されていますが、このレンズで描くモノクロームの世界は格別です。一日中モノクロだけを撮り続けたいと思わせるほどの魅力があります。建築の一部を切り取ったこのカットは、一見すると解像しすぎてモアレが出ているようにも見えますが、拡大すれば白と黒の極細線がびっしりと描き分けられているのが分かります。中央を分かつ一本の線の「硬さ」に対し、差し込む影のラインが見せる「軟らかさ」。その描き分けと緻密な質感描写に加え、粘り強いシャドウの階調表現が実に見事なカットです。

手前側、なだらかな傾斜に密集して咲く三輪の黄色い花にピントを合わせました。平面的な描写になりがちなシーンですが、被写体が浮き立つような確かな立体感があります。白い花びらの縁にも色滲みは一切なく、アポクロマート設計によるヌケの良い、濁りのない写りを実感できました。

F8に絞っての撮影。実際には背景の木々と距離があるのですが、影の落ち方も相まって、中央の樹が背後の葉っぱにもたれかかっているかのように見えたカットです。これも中望遠レンズの圧縮効果による視覚的なおもしろさでしょう。また、これほど距離のある引きの構図であっても、樹の幹のディテールを克明に描き出す解像力があります。

筆立てに並ぶ筆の毛先にピントを合わせました。筆毛1本1本の繊細な質感はもちろん、ピント面の延長線上にある木箱の縁が見せる立体感など、レンズの素性の良さを感じる1枚です。アウトフォーカス部のボケ味も極めて自然で、静かな室内の空気感まで余さず捉えてくれました。

最短撮影距離は0.7m。特筆するようなスペックではありませんが、被写体のテクスチャへ肉薄するという役割を十二分に果たしてくれます。開放絞り・近接撮影時においても解像力に一切の妥協はなく、クッションの絢爛な装飾や生地の質感を精細に描き出してくれました。

陽が傾き始めた午後のひととき。空へ向かって突き出すように伸びる葉を、青空を背景に捉えました。画面周辺まで光量落ちがほとんどなく、隅々まですっきりとした写りです。

水面へ顔を出した瞬間の、鯉の潤った質感を実に見事に再現してくれました。濁りのない鮮やかな発色も、まさにアポクロマート設計の真骨頂。暗い水面とのコントラストの中で、存在感が際立ちます。

湖に浮かぶボート、水面に配された浮き、そして遠くの陸地。ボートを繋ぎ止める細い縄の一本まで、手を抜くことなく描き出されています。幾度も触れてしまいますが、やはり「空間を切り取る」ことに極めて秀でたレンズです。

今回撮影した中でも、とりわけ滑らかなボケ味に驚かされた一枚です。夕日に照らされた水面や空のグラデーションが、濁りなくとろけるように溶けていく様にただただ見惚れてしまいました。

置きピンで構え、自転車が横切る瞬間を狙い撃ちました。ケラレがなくファインダーを覗けるため、一瞬のシャッターチャンスも逃さず捉えることができます。開放絞りで見られる周辺減光も、こういったシチュエーションでは視線を中央へと誘う演出になってくれます。

大きな木のシルエットと、その枝間から覗く月を配置した一枚です。中望遠レンズ特有の圧縮効果によって、木と月に関係性を持たせた切り取りができました。重ねてにはなりますが、やはり個人的には、こうした意図的な表現ができることこそが中望遠の魅力だと感じます。


世界を切り取る
一時期、プライベートではこの75mm F2.8というスペック一本で撮影していたことがありました。今回、久しぶりに手にしてみて、この焦点距離が持つ「切り取る力」に改めて惹かれています。開放F2.8というスペックは、どんな場面でもボケに頼れるわけではなく、撮影には相応の工夫が必要です。しかし、だからこそ気付ける小さな発見があり、世界を見つめ直す感性が呼び起こされるのだと感じます。制約があるからこその発見。それを見つけ出しさえすれば、あとは『 Voigtlander APO-SKOPAR 75mm F2.8 VM 』の緻密な描写に舌鼓を打つだけです。万人に勧めるのは難しいかもしれませんが、自分の眼が捉えた世界のディテールやテクスチャを、ありのままに、時にはユニークに伝えたい方には、ぜひ手にしてほしい1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff





