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Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 L39
2025年02月14日
50mmLeica Boutique MapCamera ShinjukuM11-PNOKTONPREMIUM COLLECTIONVoigtlander
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Leica Boutique MapCamera Shinjuku はおかげさまで2025年2月20日に12周年を迎えます。これを記念して期間中は希少価値の高い「PREMIUM COLLECTION」の掲載を行います。今回の「Kasyapa for LEICA」では特別編として掲載商品の中からピックアップしたものをご紹介。年月とともに進化を続けるカメラボディと往年の銘レンズとの組み合わせはその度に私たちに新しい景色を見せてくれます。ぜひお楽しみください。
その始まりは1950年頃。「夜」を意味する「Noct-」に由来し、開放F値がF1.5以上と明るく、夜でも撮影できるようにと誕生したのがこの「Voigtlander Nokton 50mm F1.5 (ライカLマウント・オリジナル旧モデル) 」です。プロミネント用レンズとして製造されましたが、今回紹介するレンズはライカLマウント。生産数が少なく稀少な逸品となっております。過去、マップカメラでも数本入荷したことがありますが、見比べてみると面白いくらいにデザイン、コーティングの色さえ違います。製造年によってそれぞれのバリエーションがあり、同じモデルを見つけるのはかなり困難かもしれません。今もなお継承され続けるノクトンの始まりとも呼べる本レンズを最新のレンジファインダー機『M11-P』に装着して撮影を行ってきました。ぜひご覧ください。
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まず開放絞りでフレア・ゴーストを取り込んだカットを撮影してみます。何枚か撮った中で一番豪快に入り込んだものを選んでみました。このF1.5は今、3代目「Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II VM」が現行モデルとして発売されていますが、ボケ感やゴーストの現れ方など通じるものがあるように感じます。比較対象にするには違いますが「Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical VM」ともまた系統が違う描写です。レンズを選ぶ意味というものを改めて感じました。
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こちらもまた開放絞り。逆光下でも光が入らないように撮影すればピント面はしっかり写ります。手前ボケがやや賑やかな感じになっているギャップが面白く、じっと見ていると前後関係が曖昧になってきます。
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少し絞ってみました。開放絞りと比較しても滲みやボケがおとなしくなっている感じやピント面がよりシャープになったのが見て取れます。白飛びしてしまう不安があったのですが、描写の柔らかさに救われました。
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まだまだ寒い時期が続きますが、季節は着実に春へと歩みを進めているようです。空の青に映える梅の花を撮影してみました。周辺収差は若干ありますが、F4に絞ると周辺減光が解消しさらに画が引き締まったと一目で伝わる写りです。
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F5.6に絞ったカット。1950年代のレンズとは思えぬシャープな写りです。と思うと同時にコントラストの強弱に現代レンズとの差を感じました。光が当たっている面はあと少し強ければ抑えたくなるし、日陰になる面はあと少し暗かったら暗すぎると感じます。絶妙なバランスに素晴らしいの一言です。
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F4と撮り比べての開放絞りでのカットをご紹介します。光が射しこむ室内ではアウターが少し暑いくらい。「自分以外誰もいなく、物音もしない静かな空間にいたあの時間」を表現してくれたのは開放絞りのほうでした。F4ではあらゆる線から滲みがなくなり整った世界を見せてくれる一方、開放絞りでは穏やかな滲みが包んでくれました。
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モノクロでF8に絞って撮影してみたところ、背景の雲の輪郭までクッキリと写してくれました。濃淡の描き方が非常に美しいレンズです。
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改めて開放絞りのカットです。シャワーのようなフレアが降っていますが、少し入射角を変えるとソフトなフレアに変わります。どちらも美しい表現なので優劣つけがたく、どちらを選ぶべきか悩みました。ボケ味や柔らかいコントラストなど開放絞りの魅力に改めて惹かれた一枚です。
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優しい写りをすると気づいたからこそシャッターを切る瞬間があります。真っ黒ではなく、光は確かにそこに降っていたという美しい余韻をこのレンズはしっかりと写してくれていました。
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開放絞りの柔らかさと曖昧なものが重なったとき。絞ればシャープになると分かるからこそ、凛とした芯があるからこそ、その柔らかさに目を向けたくなります。ライブビューが使える『M11-P』だからこそ見ることが出来た世界ではありますが、今回撮った中で最も心に引っかかったカットかもしれません。よく写るという言葉だけでは咀嚼しきれない魅力がこのレンズの開放絞りにはある気がします。
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夜を継ぐ瞳
明るいレンズがこの世に生まれる理由は様々です。その中でも「夜」を意味する「Noct-」と名付けられたこのレンズがどのような人たちが、どのような理由で造ったのかを想像してしまいます。当時と現代を比べれば夜の灯り、明るさというのは全く違うものだったと思いますが、その時間を撮ることの出来る明るいレンズの存在価値というのは、今以上に貴重なものだったであろうことは疑いようもありません。ここからノクトンが生まれて約70年。稀少なコレクションとしてだけではなく現役の撮影用レンズとして十分すぎる魅力を持っていることを身をもって体感しました。3代目となる「Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II VM」はもちろん、F1など様々な明るさのノクトンの描写を味わいつつ、ノクトンの歴史を語るうえで重要な『Voigtlander Nokton 50mm F1.5 (ライカLマウント・オリジナル旧モデル)』もぜひ使ってみていただきたい一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff