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Hugo Meyer Kino Plasmat 5cm F1.5

見たことのないレンズが入荷しましたので可能な限り調べてみました。

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名前は「Kino Plasmat (キノ・プラズマート)5cm F1.5」ライカスクリューマウントです。しっかりとした作りとデザイン。ずっしりと重みのあるレンズです。

このレンズ、一体どういうレンズなのか。可能な限り調べてみました。レンズメーカーは「フーゴ・マイヤー」。ドイツのブランドで現在は存在しません。1896年創業、主にカメラ用、シネマ用レンズを製造していました。

そして、この「キノ・プラズマート」というレンズは1900年代初頭に誕生しました。このレンズを誕生させた人の名は「パウル・ルドルフ」。一体どのような人なのか。

カメラのことが好きな方は一度は耳にしたことのある「Carl Zeiss」というブランド。

かつては、中判カメラの代表といわれるハッセルブラッド・ローライフレックスやフィルム一眼レフ「京セラコンタックス」用の交換レンズとして、そして現在ではSONYブランドやコシナで製造され、今なお多くのカメラユーザーに愛用されているレンズブランドです。

この「Carl Zeiss」ブランドのレンズの中でもよく名前としてあげられる「プラナー」というレンズ、ご存知の方も多いと思いますがこのレンズの設計を今から約114年前の1897年に発明した人なのです。

ちなみに、このパウル・ルドルフ氏、もうひとつCarl Zeissを代表するレンズ、「テッサー」というレンズを発明しており、レンズの歴史においてなくてはならない人物なのです。

もともとCarl Zeissにいた方なのですが、いろいろありましてCarl Zeissを退職後、フーゴ・マイヤー社に再就職、そしてこのレンズを発明しました。(このとき61歳。すごいです)

キノプラズマートは映画撮影用に作られたため明るく、当時としては性能の高いレンズでした。そして、高いのは性能だけでなくその価格です。

資料が乏しく正確ではありませんが、昭和11年(1936年)のライカの価格表によると、エルマー5cm F3.5の価格が160円、さらに明るいヘクトール5cm F2.5の価格は230円でした。

一方、キノ・プラズマートですが、1939年のプライスガイドによると130ドル、当時1ドルは約3.5円だったそうなので単純計算すると約455円、エルマーの約3倍です。同じ焦点距離でものすごい価格差です。
※1939年当時白米10kgの価格は約3円だったそうです。そばは一杯15銭(100銭で1円)当時の時代背景もあってこれが参考になるかは分かりませんが参考まで。

ちょっと余談ですが、このレンズを調べているうちに行き着いたフーゴマイヤーの当時のカタログに面白い記述がありましたので紹介します。
なお、翻訳に関しまして、当時の記述を完璧に翻訳できないのでもしかしたら語弊があるかもしれません。こちらも参考程度にお読みいただけますと幸いです。

「写真レンズを作る光学ガラスの製造過程において、ガラスメーカーが気泡の存在を完全に防ぐことは、絶対に不可能です。あなたのレンズに気泡がいくつ存在しても、価値が下がるということにはなりません。

これらの気泡は、一般的な収差補正に関して言えば、レンズの機能に何ら影響を与えません。唯一の影響と言えば、ごく小さいため実質的に重要性のない光の伝導についての損失です。例えば、直径3cmのレンズに直径1mmの気泡が含まれている場合、光量損失はおよそ1/9000に過ぎません。」

古いレンズには気泡が入っていることがあります。知らない方にとっては単なる「レンズの劣化や不良」という風にも見られるかもしれません。しかしながら、当時のレンズの製造過程において気泡を完璧に取り除くということは不可能だったのです。では、レンズはどのようにして作られていたのか。

まず、ガラスを作るために大きな「るつぼ(筒状のものでその中に材料を流し込み高熱で融解、合成するもの)」を用意し、その中にガラスの材料である硝材を流し込みます。高熱で硝材を溶かし、その後冷やして大きなガラスの固まりを作ります。

当時は職人さんが手作業で行っており、現在のような技術もなく、気泡を取り除く手段とすれば、憶測ですがるつぼを木槌でトントンたたいて空気を追い出すぐらいの作業しか出来なかったと思います。
(私も昔、工事現場のアルバイトをしていたときに、コンクリートの詰め込み作業の際に似たようなことをやったことがあります。でも中を見ることは出来ないため大きな空洞は音で何となく分かりますが、数センチ、ましてや数ミリの気泡を外から発見することは不可能です)

そして、おおきなガラスの固まりは砕かれて、それぞれのレンズの大きさまで研磨する作業に入ります。これがレンズ製造のおおまかな作業工程ですが、作ったレンズの中に目視で確認できるような気泡が入っていたら、やっぱり気になる、ということでメーカーとしてもこの記述は消費者に向けて理解をしてもらう必要性があったために記述されていたのではないでしょうか。

そういえば、昔の建物の窓ガラスやコップなんかにも気泡ってあったような気がします。今のガラスにはそういったことがありませんね。現在の技術がいかに素晴らしいものかということもよくわかります。うん、納得。

最後にこのレンズ、前期と後期でバリエーションがあります。

初期のタイプは鏡胴の前半分がブラック塗装の仕様になっており、ヘリコイドのデザインはライカ・エルマー50mmによく似ています。ライカ Lマウントのものと、A型(最初期のバルナックライカ)に装着されたものも存在するそうです。

今回ご紹介する本レンズは後期型で、先端はブラック塗装、あとはシルバークロームの仕様です。同じ形のレンズでも、デザインにバリエーションがあったらしいのですが、当時は全て手作りだったため、今みたいに全部同じように作ることが出来なかったんです。

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この世の中にはまだまだ私たちの知らない謎の多いレンズがあるんでしょうか。

しかも、ライカマウントのレンズはマウントアダプターを介せばデジタルカメラにも取り付け可能で撮影もできる。

夢は膨らむばかり。だからオールドレンズはやめられません。



[ Category:Leica | 掲載日時:11年11月09日 19時00分 ]

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