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ALPA 10d

[ Category: ヒストリカルピース|掲載日時:2008年10月24日 11時07分]


「ALPA」といえば、そう、数少ないスイス製のカメラ!カメラといえば、日本とドイツが二大大国。
しかし、日独同様に精密機械に強い、かのスイスにもカメラを作ったピニオン社という会社がありました。
ピニオン社はもともと機械時計の部品を製造していた会社で、その精密機械工作の技術をもってカメラの製作
にあたったわけです。時計部品メーカーが造るカメラ!これだけでも興味が涌いてきちゃいます。
 時計メーカーが造ったカメラといえば、もうひとつありました。現在でも、良質な機械式時計を作り続けて
いるジャーガー・ルクルト社が1938年に発売したミニチュアカメラ、「コンパス」。小さなボディ表面
いっぱいに数字や文字、ダイヤル類が所狭しと並んだその様は一見カメラとは思えず、その内部は一体どれ
ほどの細かなパーツがひしめいているのか・・・、さすがは時計職人が組み立てた超精密カメラ、といった
感じのカメラです。
 そして下が“アルパ10d”です。

 

 ルクルト社のコンパスと比べれば、普通の一眼レフカメラです。今となってはかなり大柄ですが発売は68年
でライカフレックスSLと同年、ニコンF2発売の3年前のことですからサイズ的にも当時としては普通ですか。
ですが、TTL測光が可能で、当方式をトプコンREスーパー、ペンタックスSPについで採用していて
とても先進的な一面を持っています。そもそもアルパの原型は1930年代に出来上がっていて、30年代と
いえば35mm一眼レフの最初期に当ります。しかも一眼レフなのにレンジファインダーまで組み込まれているという
独創性。したがって、カメラ開発においてピニオン社は非常に進んでいたといえます。ファインダーからの逆入射光
を減算するという10dの凝った仕組みもその証左と言えます。
 ただ、使いづらい部分もあって、まず何よりご覧のとおり巻き上げレバーがボディー正面側から手前に引く
仕様になっていて、通常の動作とは真逆になっています。本機種の数代前までは順巻きだったのにこの仕様変更
はなぜでしょう。また、トプコンやエキザクタがそうであるように、一眼レフであるのにボディ側に絞り連動
機構がないため、外部自動機構のないレンズでは一旦開放で合焦させて絞り込む必要がありますし、レンズに
外部自動機構があってもシャッターの切れる直前に絞りが作動するためミラーの跳ね上がりに先駆けてファイン
ダー像が暗転しちゃいます。そんなこんなで敬遠する向きも・・・。
 しかしこのカメラ、魅力はまずそのフォルムにあると思います。直線を基調としたシンプルでシンメトリカルな
デザイン。直線的なのに側面のアールを大きく取ることでやわらかい印象を与えています。また、ペンタ部が
レンズ側に張り出しているのが、目を引きます。フランケンシュタインのおでこ、と言うなかれ、アルパの名は
アルプスに由来するといいます。ペンタ部が尖状でないところからすると、10dの頂上は、さしずめスイス中部
の高峰アイガーか!その下に輝くエンブレムは山麓の古城を現しているかのようです。いかにも山男が脚を大きく
広げて踏ん張ってるかのような「ALPA」のロゴがとても力強くて印象的です。
また、きれいになめしたクロームメッキがいいですねえ。「金属をなめす」というのも変ですが、まるで上質な
皮革の手触りを思わせる滑らかさで、本当に素晴らしいです。

 ただアルパの本当の魅力はレンズにあります。
 まず筆頭に上げられるのが上の写真のマクロスイーターでしょう。スイスのムービーカメラ用レンズメーカーの
ケルン社が数少ないスチルカメラ用に製造したレンズ。(そういえば、上のコンパスにもケルンのレンズがついて
ました)。しかも、マクロレンズの開放F値がまだF4程度が一般的だった時代に、アポクロマート補正(色消し)
して、驚異のF2クラスにしたレンズ。アウトフォーカスのなだらかで溶け入るようなボケ味は絶品。合焦部が浮き
上がってくる立体感には恍惚とさせられるほど。そんな、レンズファン垂涎のレンズがアルパでしか使えません。
いや、プラクチカ(M42)マウントで、あるにはあるようですが80本前後しか作られなかった超希少品。お目に
かかるのも至難の業ですので、このレンズを試したければ、やっぱりアルパ!というわけです。
 次はやはりアンジェニューでしょうか。こちらも他社のレンズと比べていかにもフランス映画風の色が出るという
ことでとても人気があります。逆望遠型広角レンズの代名詞となった“レトロフォーカス”なるレンズもあって標準
がスイーターなら、広角はアンジェニューか。では望遠は?
 アルパマウントはドイツの名門シュナイダーやシャハト、キルフィット、エンナなどの各メーカーがレンズを供給
していたので、本当に名玉の宝庫です。その中で、個人的に気になるのがオールド・デルフト、珍しいオランダの
レンズメーカーによるものです。一体どんな写りをするのか。デルフトといえばフェルメールが生涯を過ごした町。
“オールド・デルフト”、かつてフェルメールがそうしたように、中世の町並みを、庶民の生活を、優しい眼差しで
のぞかせてくれそうな、そんな響きのあるレンズです。

  

 最後に、アルパには、専用マウント以外のレンズも使えるように多数のマウントアダプター(アルパバグ)が作ら
れました。そのため、他機用のレンズを同じ感覚で使用することもできます。多少の使いづらさはほんのご愛嬌、
アルパを1台持って各々のレンズの由緒に思いを馳せつつ、ゆったりとレンズを覗いたら、また一味違った絵が
創れるかも知れません。

[ Category: ヒストリカルピース|掲載日時:2008年10月24日 11時07分]

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