ライカ、ハッセル、ヴィンテージカメラなど

CONTAX I

Contax Iが発売されたのは1932年。メーカーであるツァイスイコンが設立されてから6年、ライカの最初の量産型であるA型から遅れること7年。ドイツにおける第一次大戦後の大変な経済混乱が一応は終息したものの、カメラ産業も再編成の必要から、カールツァイス財団の下に当時最大メーカーであったイカ社をはじめ、エネルマン、ゲルツ、コンテッサ・ネッテル社が合同して設立したのがツァイスイコン社でした。それまでしのぎを削りあってきた4社が一蓮托生して、その技術を結集させて完成させたのが今回取り上げるContax Iです。(なおイカ社などがカールツァイス財団の下に合同した背景には財政的に逼迫していたカメラメーカーがレンズの一大供給元であった当財団より出資を受けたり、借り入れをしていてその影響力を多大に受けていたことがあったようです。)

第一に、何より目を引くのが

無骨なほど“四角い”その形状でしょう。カメラはラテン語で暗室を意味するといいますが、要は暗箱ですね。そしてContax Iど“箱”を意識させるカメラも多くありません。その意味で最もカメラ然としたカメラと言えます。あまりに四角いので「黒い弁当箱」と揶揄される事もありますが、このカメラはレンジファインダーカメラの中にあって何処となく超然としています。
 Ⅰ型以降のContaxもカメラ史にその名を残す名機達ですが、Ⅰ型にはそれらにない特別なオーラを感じます。“初代”ものにはその設計陣の並々ならぬ情熱が結実している物が多く、Contaxもその例に洩れません。その超然たる感じはどこから来るのか、はて、これはなかなか難しい。やはりその極度にシンプルな四角形とダイヤル類やレンズが作り出す円形、つまり円と矩形の形状のコントラスト、および、モロッコ革とブラックペイントで覆われた黒の精悍な容姿に操作部の金属の輝きが見事なコントラストを形成して、見る者に孤高のカメラであるとの印象を与えているように思われます。


第二に機能面ですが、

もちろん当時の最高水準で過剰設計とも言われます。 35ミリ判カメラに先鞭を打ったライカがContaxⅠ型と同年に出したⅡ型のシャッタースピードの最高速が1/500秒だったのに対してContaxは?型から1/1000秒を組込みました。
 またバヨネットマウントを採用しました。スクリューマウントとよりも格段にレンズ交換がし易く機能面での大きな優位性でした。ライカに先駆けるところ22年、生まれた赤ちゃんが大学を卒業する時にやっとライカがこれに追いついた計算になるわけで、かなり先んじていたといえます。 距離計の基線長を103mm(初期、ContaxⅠには細かく分けると7種類あります)と極めて長くして同時期のライカⅡ型の38mmの2.7倍、望遠域での測距精度にかなり有利な仕様になっています。
 そしてここからが過剰設計とも言われる部分ですが、後期のは2つのクサビ状のプリズムを回転させるドレーカイル方式なる距離計を組み込んで、極めて高い測距精度を出させています。初期のミラー式が最短から無限までで3度の回転角しかなかったのに対してドレーカイル式は回転角140度を要し、多少のずれをものともしません。その上、通常左右の距離計の採光窓に独立して設けるプリズムを一本のガラス棒で成形して衝撃によるずれを回避しています。
 また、シャッタースピードの高速化と幕の耐久性を考慮してシャッター幕に航空機用のジェラルミンを採用し、幕の動作は縦走りを採用しています。シャッタースピードで特筆すべきは通常フォーカルプレンシャッターの幕の走る速度は一定で先幕と後幕の走り出す時間的間隔(それによって生じるスリットの幅)を変えることで、フィルムに当たる光の量を調整しています。しかしContax I(後期)はなんと4段階にも幕速を変化させてシャッタースピードをコントロールしています。これはより正確な幕速度を出すために必要と考えられたのでしょう。


第三に、後期のⅠ型には

操作面での魅力もあります。幕速を変化させたことに起因して、シャッターダイヤルが一軸不回転式の4段階切替式になっています。この操作感が楽しい!?楽しいと思うのはやはり機械好きで、でなければ煩雑と思うのでしょうけど、まあ今の時代にただ写真を撮る目的でこのカメラを使う人も無いでしょうから、機械(メカ)が好きで選ぶ人には是非プッシュしたいワンポイントということになります。
最初はどうセットしたらいいか分からず、シャッター不良ではないかと思ったほどですが、まずシャッタースピード切替ダイヤルの根元にある三角形の指標にシャッタースピード表記のあるリング上の白ないしは赤の三角形を合わせる。次に巻き上げノブとシャッタースピード切替リングの間に赤い点と白い点が少し離れて打ってあって、赤い数字で書いてあるシャッタースピード群は赤点に、白い数字は白点に合わせるとその表示通りのシャッターが切れるという仕組み。
文章で表現するとすこぶる分かりにくいですが、要するにシャッタースピード1つ合わせるのに、何段階かの操作を必要とするのであって、この操作してる感が機械(メカ)好きにはたまらないというわけです。これに比べればライカのシャッターダイヤルが今いち物足りなくなること必至ですね。


 言うまでもなくカメラは写真を撮るための道具です。そして映像を実際に形成するのはレンズですから、レンズの性能を最大に発揮させられるのが最良のカメラということになります。合同したメーカーの技術者達は「これまでにない最高のカメラを!」と意気込んだといいますが、仕様を見ていくとContax?は本当に最高のものを目指した結果という事が分かります。レンズを最大限に生かすという至上命題、レンズメーカーのカールツァイス傘下にあったならなおさらですね。



written by マップカメラ1号店地下(小野)
この記事のカテゴリーは『ヒストリカルピース』です | この記事は2009年01月29日現在の情報です。


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