『コシナレンズ工場見学ツアー2018』レポート
2018年9月12日(水)、マップカメラ屈指の人気イベント「コシナレンズ工場見学ツアー2018」が開催されました!今回は散策ルートも追加され、ますますパワーアップした内容でお届けをいたします!
長野までは新幹線で、長野に到着してからはバスでの移動です。
今回のレポートで使用した機材は、『SONY α7II』+『Voigtlander VM-E クローズフォーカスアダプター』+『Voigtlander ULTRON 35mm F1.7 Vintage Line Aspherical VM』という組み合わせ。
ULTRON 35mmはボケの透明感と光条の美しさに惹かれて最近購入したばかり。このレンズが作られている工場に今から行けるのかと思うと、ワクワクが止まりません!
長野駅からバスで移動すること15分。最初の目的地である善光寺へと到着しました。
このタイミングでお客様に事前にお伺いしたご希望の貸出しレンズをお渡しさせていただいたのですが、なんと約8割の方のご希望がMilvusとOtus!確かに一度じっくり試してみたい気持ちはとても良く分かります…。
ガイドの方から善光寺の説明をしていただいた後は、いよいよお待ちかねの撮影タイム。生憎の曇り空ではありましたが、皆さん思い思いの場所で撮影を楽しまれていました。
次の目的地は昼食会場である「泉石亭」です。泉石亭では、長野県小布施町の名物である栗おこわをいただきました。食べ終わるころには先ほどの曇天が嘘のように綺麗な青空が!
お腹もいっぱいになったところで、次はいよいよコシナの小布施事業所へと向かいます。
小布施事業所 -光学ガラスの開発・製造-
泉石亭からほど近いところにある『小布施事業所』。コシナのロゴマークが描かれた大きな看板が私たちを迎えてくれました。こちらではレンズの元となる硝材の加工とプレス加工を見学します。
私たちの目にまず入ってきたのは、「バー材」と呼ばれる板状の光学ガラスの山でした。レンズに使用するガラスは、原材料に含まれる成分やその配合を調整することで特性を変化させることが出来、現代の高性能レンズにはこうした硝材の多様性が欠かせません。取り扱っているガラスの種類は様々で、メーカーや厚みの違いも含めると500をも超えるとのことですから驚きです。また、カメラのレンズだけでなくプロジェクターのレンズも作成しているとのことでした。
次に見学したのが、レンズへの第一歩となる、「プレス成形」です。
ガラスがサイコロ状にカットされていますが、このようにサイコロ状にしないと熱の加わり方が均等にならないため、この形にしているのだそうです。実際にガラスをカットするところも見せていただき、皆さんだけでなく私も興味津々。すべて手作業でカットしているという拘りぶりにも感動しました。
小さくカットされたガラスは、大きな炉を使って加工が出来る温度まで熱せられ、それぞれの形へと変形してゆきます。そして、熟練の職人の手作業によってプレスされるのですが、この時の炉やガラスの温度はなんと500℃~700℃!特に夏場は過酷な作業です。こういった職人の方々がひとつひとつ手作業で作っているレンズを私たちが普段使っているのかと思うと、感慨深いものがあります。
アテンドをして下さった小布施事業所の皆様、ありがとうございました。
飯山事業所 -スムージング・レンズ研磨-
小布施事業所から20km程北に位置する『飯山事業所』。小布施で成形されたガラスは、ここ飯山でそれぞれの規定の曲率になるよう研磨され、本来の性能を発揮できるものへと進化します。
プレスされたガラスはまず、「研削」とよばれる工程によって形を整えます。
ダイヤモンドを用いた専用の機械で指定された表面曲率へと変形し、それぞれのレンズ構成ごとの役割を担うパーツになってゆくのです。
印象的だったのは、工場の方の「ほとんどこの段階で曲率に関するレンズの精度は決まります」という一言でした。次に待つ「研磨」の行程の研きしろを残しつつも、ガラスがレンズになるように削りかたを見極めなければならないこの作業。
蓄積された経験と技術があるからこそ成せる、まさにモノづくりの真骨頂を見たような気がします。
こうした作業を経て、次はいよいよレンズ研磨です。
1枚のレンズだけを磨く「1個磨き」、一度に複数枚を同時に磨く「多数個研磨」など、レンズの材質や形状、役割によって多様な方法でレンズを磨きます。
研磨されたレンズは研磨材やガラスの微粉を落とすために洗浄を実施しますが、ここでもデリケートなガラスは手作業で洗浄という拘りぶり。
さて、ピカピカになったレンズはここで「心取り」と呼ばれる、中心を探り当てる作業に入ります。
レンズ構成の図をご覧になった事のある方はお分かりかもしれませんが、中心を貫く線は、実際には「光軸」と呼ばれる目に見えない中心軸になっており、これがずれてしまうとレンズは本来の性能を発揮できません。
コシナではこの「心取り」作業や、この後に控える端面の削り出し作業も出来る限り人の手をかけて行うことで、製品の高いクオリティを維持しているのです。
なぜ、ここまで作業に人の手を加えてこだわりを貫くのかと言えば、それはひとえに「精度」のため。
我々が日頃何気なく使うレンズたちですが、「何気なく使う」ことが出来るのは、こうした妥協のない姿勢の賜物なのかもしれません。
飯山事業所の皆様、ありがとうございました。さて、最後に向かうのは中野事業所です!
中野事業所 -機械部品加工・組み立て-
プレス・研削・研磨などの厳しい基準をクリアしたレンズは、ここ『中野事業所』に集積し、組み立てられて完成品のレンズとして世に出てゆきます。
ここではローレットなどの金属加工の様子や、実際にレンズを組み立てているところを見学し、私たちが実際に使用しているレンズがどのように作られているのかを知るのと同時に、スムーズに使うために施された数々の工夫についても知ることが出来ました。
中でも、ヘリコイド部分のラップ作業は手作業で行っているとのことで、「実際に使うのは人の手なので、人の手でチェックしています」と仰っていたのが印象に残っています。
刻印されたレンズ名やシリアル部分への塗装は、塗料を注射器に入れてひとつひとつ手で行っているというのにも驚きでした。
コシナ製のレンズは「長くお客様につかっていただけるように」という思いの結晶なのだなと、改めて感じた瞬間です。
中野事業所で最後に訪れた『コシナショールーム』。
ここでは過去の銘玉や銘機をはじめとするコシナの歴史や、開発秘話など、興味深いお話をたくさん聞かせて頂きました。
また、9/12時点ではまだ発売となっていなかった『Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM』も特別に触らせていただくことができました!
中野事業所の皆さん、ありがとうございました!
さて、ここで見学は終了。コシナのモノづくりに対する拘りや熱意を改めて感じたところで、最後に『竜王マウンテンパーク』での撮影をたっぷりと楽しんでいただきます。
竜王マウンテンパーク
竜王マウンテンパークは標高1,770m雲の上のテラス『SORA terrace』があることで有名ですが、この日は天気が不安定で雲海が見れるかどうか少々気がかりでした。
ドキドキしながらロープウェイに乗ること8分、窓の外には見事な雲海が…!
ロープウェイから降りると、そこはまさに雲の上の世界。
私も含め皆さん一斉にカメラを構え撮影を始めます。この光景にはかなりテンションが上がりました。
SORA terraceでの撮影タイム中にお客様とも少しお話をさせていただいたのですが、何台もカメラを持ってきている方や、マップカメラのオリジナルカメラバッグ『マップカメラ×横濱帆布鞄 別注デイリーシューターバッグ』を使ってくださっている方(他にもトートバックを使用して下さっている方が多数いらっしゃいました。ありがとうございます!)など、皆さんの「カメラが大好き」「写真が大好き」という思いがひしひしと伝わってきてとても嬉しかったです。
その後は長野駅で解散をしましたが、皆さん満足いただけたようで、皆さんの笑顔を見るとスタッフ一同その日の疲れが吹き飛ぶ思いでした。
ご参加いただいたお客様、株式会社コシナの皆様、本当にありがとうございました!