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【FUJIFILM×マップカメラ】GFX 50R 担当者インタビュー : Part 3


GFX 50R インタビュー

レンジファインダースタイル誕生の理由 「GFX 50R」と「GFX 50S」の違い センサー開発について
中判センサーの優位性 レンズ・周辺機器の展開 将来の展望

中判センサーの優位性について

マップカメラ フルサイズ機でも4000万画素といった高画素モデルが出てきている中、中判5000万画素の有利な点はどういったところでしょうか?
上野氏 仮に同じ画素数でも、一見して画質が違うと思います。ただ、それは単に高画素だから、ということではないと思います。センサーのサイズや画素数というのはあくまで画質を司る要素の一つでしかなくて、写真としての表現力というのはセンサーだけでは決まりません。

先ず大切なのはやはりレンズだと思います。高性能レンズで撮影し、しっかり解像した画像に色再現や階調再現、ホワイトバランスといった信号処理、いわゆる画作りをプロセッサーが付加する。その総合力で画質が決まってくるので、同じ5000万画素なら中判もフルサイズもほとんど同じ画質、などとはユーザーの方も考えていらっしゃらないのではないでしょうか。事実GFXはそういったトータル性能で画にして見たときに全く違うと思うので、是非撮り比べてみてほしいですね。ボケの質や階調再現性、またはダイナミックレンジの広さや立体感など、違いはすぐに分かると思います。

もちろん最近出ている各社主要のフルサイズミラーレスに、高画素機用に作られた最新鋭のレンズを付けて撮影すれば、すごく高い画質が出ることは知っています。私は本来道具の良し悪しを比べることがあまり好きではなくて、人それぞれ良いと思う基準あるでしょうから、それに従えばいいと思っているんです。その結果として50Rや50Sの画質が良いと思う人もいれば、フルサイズが良いと思う人もいる。私が言っているのは、ただ客観的に画の質を見たら「違いが分かる」ということです。

5000万画素の中判センサーだと1画素あたりの直径は5 ミクロン以上の大きさですから、光を取り込む性能にも余裕があります。そして画素ピッチが細かくなっていった場合、レンズに求められる性能もどんどんシビアになってきます。デジタルカメラの解像度は1つ1つの小さな画素にしっかり解像するかどうかです。その画素がどんどん小さくなっていったら、画質において必ずしも良いことばかりではないと思います。ちなみに、GFX のレンズは最初から1 億画素超を視野に入れて作っているので、5000万画素の解像は朝飯前みたいなものです。先ほど画質の違いが分かるといった最大のポイントは、主に富士フイルム独自の画作り(信号処理)とレンズ性能、ここではないかなと思っています。センサーの性能だけで画質は決まらない、というのが我々の考え方です。だからこそXシリーズにはフルサイズではなくAPS-Cを選んだ訳です。

マップカメラ 最終的な「写真」というところを見て、どのサイズ感が市場に出しやすいか考えた結果がXシリーズとGFX シリーズの両輪になったということでしょうか?
上野氏 そうですね。結局写真の価値はそこにありますから。ある被写体を撮りたいと思ったときに最適なシステムというものが絶対にあるので、それが何ですか?ということです。

ルポルタージュを撮りたいとか、街中歩いてスナップを撮りたいと言っている人にとって、たくさんの重い機材を背負うことが本当に良いことですか?という話だと思います。

中判を商品化した今でも「フルサイズは出さないんですか?」と聞かれますが、なぜフルサイズが欲しいのか逆に聞きたいですね。「画質がいいから」とか「フィルム時代の画角に慣れているから」、「絞り開放のときによりボケるから」とか「何よりも周りがみんなフルサイズがいいと言うから」というように、フルサイズでなければダメ、という風潮があります。特に日本では。

でも私たちはまず「ライトサイジング=相応しい大きさ」を考えます。撮影目的に応じて、最適なサイズと画質のバランスを取るということが一番重要だと考えています。例えばX-T3 にF1.4クラスの単焦点3本、F2.8通しのズーム2本でシステムを組んだとき、トータルで約3Kgなんです。一方、某フルサイズカメラで同じシステムを組むと5.2Kgになり、2.2Kg差が出るんですよ。ほぼ同じスペックを持った製品同士を比較してみたときにセンサーサイズの差でレンズの大きさ、重さが全然違うんですね。この差はけっして小さくないと思います。

実はある時、当社の35mm F1.4のレンズを一切画質を落とさず全く同じ設計でフルサイズ用にするとどうなるかシミュレーションして欲しいと光学設計者に頼んだことがあるのですが、やはり他社さんの高性能な50mmF1.4と同じくらいになることが分かりました。今だと50mm F1.4でフィルター径が70mmを超えるものもあって、重さも700g以上あります。フィルム時代から写真をやっている私としては、50mm F1.4といったらフィルター径は52mm か55mmでした。フィルター径72mmって、85mm F1.4の間違いじゃないの?って感じです。

ただこれはデジタルとフィルムの入射角の違いで、結局こういうものになってしまうんです。各収差などを許容してソフトウェアで修正すればいい、というのであればレンズの枚数を減らして小さくすることもできますが、結果として画質は落ちてしまいます。なので、本当に良い画質のフルサイズ用レンズを作ったとしたら、やっぱり大きく重くなるし、値段も高くなってしまうものなのです。フルサイズユーザーはこのことに文句を言ってはいけませんね。

フィルム時代なら、高性能な機材とはカメラで1台20万円くらい、単焦点レンズ1本10万円くらいからだったと思います。そしてレンズは表現力に直結しますので、半年に1本くらいは新しいものが欲しくなるじゃないですか。でも、半年に1回30万円かかりますって言われたら、特に若い人にはなかなか厳しいですよね。自分のお小遣いやボーナスの中から、次は何のレンズを買おうかな?と思える価格はやはり10万円くらい、高くても20万円くらいであって欲しいのではないでしょうか。個人的には機材購入も含めて「写真って楽しいな」という経験がありましたから、そういう部分も出来れば守って行きたいことの一つなんです。レンズと信号処理に力を注ぐことで、十分高画質な写真がXシリーズのAPS-Cセンサーから得られる様になっていますので、それならばその方がさらに楽しく経済的でしょう、と私たちは思っている訳です。

一方GFXは、中判ということもあって開放F値こそ違いますが、全て最高性能レンズとして設計しています。立ち位置としてはフルサイズの高級レンズと同じです。なので、先ほど言った価格帯には入ってこないかもしれません。それでも今までの中判デジタルカメラ用レンズより軽く、リーズナブルな価格になっていますから頑張ればなんとかなるのでは!?結局目指しているところはXシリーズと変わりません。あとは中判とAPS-Cのどちらが自分にとって最適なシステムなのか?を判断してもらえば良い訳です。もちろん、両方とも使っていただくのが一番嬉しいですが。

私が商品企画をする上で常に念頭においているのが「一つの目的において万能機は専用機には勝てない」ということです。機動力なら小型軽量のX シリーズ、超高解像が必要なら大サイズセンサーで高画素のGFX シリーズ、というふうに分けた方が最終的には撮影が快適になり、いい写真が撮れる可能性が高い、と。

例えばスポーツ写真の場合ですと第一に機動力が求められますよね。その場合は小型軽量モデルを選ぶ。一方で風景写真の場合ですと解像力が必要ですし、三脚でしっかりフレーミングするので機動力はあまり求めないから中判を選ぶ、といった具合です。より解像力やトリミング耐性が要求されるコマーシャルフォトですとか、緻密で重厚感を表現しなければならない建築写真などにおいては、正直APS-Cで表現できる範囲にも限界があります。そこで現在その分野の多くはフルサイズで撮影されているわけですけれど、我々はここにGFX で応えようと考えました。どちらも高解像を求めているわけですが、より一層余裕のある解像力で狙っていきましょうというスタンスです。このようにX シリーズとGFX シリーズを棲み分けしています。

マップカメラ それがあって2017年にGFXシリーズを出して表現の幅を広げたと。
上野氏 そうです。被写体への対応力、そしてその表現の幅というのを1つのシステムでカバーしようとすると、ボディやレンズの大きさであったり値段であったりと、どこかに無理や不満が生じてしまう。そこでAPS-Cと中判というところに行きついたんです。
マップカメラ 最適なサイズ感、モノを提供することでユーザーの方に楽しんでいただく。そこが富士フイルムの強みということがよくわ分かりました。そこをいかにユーザーの方に知らせていくのかというところが大事になってくると思います。

ではこの『GFX 50R』の作例をいくつかご紹介いただけますか?

GFX 50R 作例1

絞り:F2 / シャッタースピード:1/450秒 / ISO:400 / 使用機材:FUJIFILM GFX 50R + GF110mm F2 R LM WR

上野氏 まずはこちらですね。ボケの柔らかさはもちろんのこと、かなりハイキーな露出にしてもダイナミックレンジが広いので白い洋服もしっかり再現出来ています。

画としての質が高いなというのがわかっていただけるのではないでしょうか。また拡大して見たときのこの目です。まつ毛が数えられますよ。でも、場合によっては写って欲しくない様々な「粗」まで出てしまうので、実はGFX でポートレートってあまり使わないようにしているんです。写りすぎてしまう分、モデルさんとメイクさんがかわいそうで。

GFX 50R 作例2

絞り:F8 / シャッタースピード:1/1100秒 / ISO:400 / 使用機材:FUJIFILM GFX 50R + GF63mm F2.8 R WR

上野氏 次にスイスで撮った風景写真です。列車と奥の山が写っていますけれど、列車は車両の型番もすべて読めるくらい解像しています。それでいて背景の山のこのディティールも見てください。雪がギリギリ飛んでいないんですよ。こんな遠いところのディティールが、これだけ写っているんです。先ほど言った中判における画質の余裕とはこういうことなんです。フルサイズユーザーの方にも是非GFX で一度撮っていただきたいですね。しかもこれは手持ち撮影です。

GFX 50R 作例3

絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/160秒 / ISO:800 / 使用機材:FUJIFILM GFX 50R + GF63mm F2.8 R WR

上野氏 次はケルンに行ったときの夜景です。手持ち撮影ですが、これだけ街並みをシャープに写すことが出来ました。レンズは63mmを使用し、シャッタースピード1/160秒 でISO 感度800でした。これが1億画素対応レンズの実力で、5000万画素が朝飯前というのはこういうことです。撮影した時、多少ブレたかな?と思ったのですが、シャッターショックも小さいですし、しっかり構えられるレンジファインダースタイルだったので、手振れ補正が入っていなくてもブレていませんでした。機動力は十分にあると思います。そして何より、このカメラは撮っていて楽しいです。これらはすべてJPEG の撮って出しです。この楽しさと画質を考えたら、個人的には50Rの価格は大バーゲンだと思います。
マップカメラ 欲しくなりました…。
上野氏 高速動体以外の被写体で、撮影技術が一通りある方でしたら、ほぼ撮れないものはないと思います。画質を一言で表すのは難しいのですが、一番的確な表現は何度も言っている通り「ゆとり・余裕」ですね。画面全体から感じる余裕があります。フジフイルムのAPS-C はフルサイズに対抗するためにX-Trans センサーを採用するなど、ある意味ストレッチしている部分もあります。

クルマのエンジンでいうところのターボチャージャーみたいなものです。本来の排気量は小さいけれどもターボチャージャーで馬力を上げているように、フルサイズ画質に近付けるために独特の工夫をしている部分が所々あります。逆にGFX にはそういうのが少なくて、判の大きさを最大限に活かして非常に余裕をもった設計をしている。これが中判の良さかな、と考えています。

マップカメラ ますます欲しくなりました…。



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[ Category:FUJIFILM | 掲載日時:18年11月22日 19時52分 ]

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