かつて、これらはありふれ、何の変哲も無いレンズとして扱われていたのかもしれません。
しかし、今はタクマーをタクマーとして使うことのできる時代です。
カメラ雑誌のバックナンバーを読んでいて、たまたま関連する特集があると、著名な写真家諸氏が、「初めて使ったレンズだ」とか、「ずっと気に入って使っていた」とか、去りし良き日を振り返っている記事に出会えることもあります。
ありふれていたからこそ、日本の写真表現の一角を支え、底上げしたと言っても決して過言ではないのが、これらタクマーレンズたちだったと言えるのではないでしょうか。
実際、他のキワモノや海外モノにひとしきり浮気(?)してからタクマーに戻ってくると……そう、自然にそう書いてしまいましたが、「戻ってきた」というような安心感を感じることができるレンズなのです。
操作性にせよ、使い心地にせよ、もちろん写りにせよ、他のレンズを評価する時に、いつも「タクマーより優れているかどうか」を基準にしていたようなフシもあります。いつの間にか、自然とそういう体質になってしまっていたのです。
しかし、トータルバランスにおいて、そして何よりコストパフォーマンスにおいて、タクマーを凌ぐ逸物というのにはなかなかお目にかかれないという皮肉な事実もあります。
邪魔にならず、しっかりと結果を出すので、おのずと出動回数も増え、機材を意識することなく、ごく自然に撮影に向かうことができます。
「元をとった」という話になると、控えめなこれらタクマーが、間違いなくトップに躍り出てくるでしょう。
手に入れて満足するのではなく、実際に使ってこそ喜びを得られるシブい道具たち。それがペンタックス・タクマーなのであると、筆者は確信して疑いません。
タクマーとの付き合いは、これからも続いていきそうです。