
「いつかはオールドレンズで、あの柔らかく、包み込むような光を撮ってみたい」
カメラを手に取ってからずっと頭の片隅にあった小さな憧れ。 最新のレンズが魅せるシャープで歪みのない完璧な世界も素晴らしいけれど、時に私の心が惹かれるのは、どこか不完全で、けれど圧倒的にノスタルジックな「光の表情」でした。
そんな願いを叶えるため、私は最新のフルサイズ機 SONY α7C II に Leica ズマール L50mm F2 をマウントアダプター越しに装着し光を探しに出かけました。

今回撮影に持ち出したのは、現代のテクノロジーが詰まったSONY α7C IIに、およそ90年前の銘玉Leica ズマール L50mm F2。α7C IIのシャープでモダンなボディにズマールのクラシカルなニッケルメッキの深いツヤ。時代を越えたふたつがカチリと噛み合ったその姿は手にするだけでも所有欲を満たしてくれる特別な存在感を放ちます。


やってきたのは都内の植物園。
ガラス張りの室内にやわらかな光が差し込み、緑の葉々を鮮やかに照らし出しています。天井から降り注ぐ光にレンズを向けると、ファインダーの中に柔らかい光のヴェールがふわりと広がりました。
現代のレンズがいかに「光の乱反射を抑え、忠実に写すこと」を追求しているのに対し、およそ90年の時を歩んできたズマールは注がれる光をただそのまま優しく受け止めてくれます。またα7C IIに搭載された約3300万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」は、ズマールがもたらす極めて繊細な光のグラデーションやシャドウ部に残る豊かな階調を余すことなく捉えてくれます。


少し歩き回ってお腹が空いてきたので、カフェで一休みすることに。Leicaのオールドレンズは最短撮影距離が1m前後のものが多く、そのままでは目の前の料理に寄って撮ることができません。けれど今回は、くり出し量を増やせるヘリコイド付きのマウントアダプターを装着してきました。本来なら苦手なはずのテーブルフォトも、このアダプターのおかげでグッと被写体に近づいて撮影することができました。このピザがとにかく絶品でした。

子どもがぎりぎり通れるくらいの小さなトンネル。
しゃがみ込んで中を覗いてみると、暖かなライトの中道が奥へ続いていました。子どもの頃の自分なら、好奇心に駆られて躊躇なく潜り込んでいただろうなと、少し懐かしい気持ちになりました。



散策を続けていると、ファインダー越しに「あ、これはいい写真になる」と確信できる瞬間が増えてきました。シャッターを切るたびにズマールは期待以上の柔らかい光と情景を写し取ってくれます。歩みを進めるごとにカメラを構える手が軽くなり、撮影に夢中になっていく自分がいました。


日が傾くにつれて、差し込む光の角度が変わっていくのと同時に、レンズはまた新しい表情を見せてくれます。
ななめから差し込む西日をフレームの端に捉えた瞬間、画面を覆いつくすようなダイナミックな大フレアが現れました。それまでの柔らかい光とは一転、溢れ出すダイナミックな光の描写に心を奪われ、気づけば歩くたびに変わる光をただ追いかけていました。



帰路に就く道すがらふと見上げると、先ほどまでの温かな自然光の世界とは一変、ガラス張りの高層ビル群が都市の青い光を美しく反射させています。ビル群の青い光を吸い込んだズマールの描写は、どこか切なくシネマティック。光の質感だけでなく「色」の表情をも豊かに変えて見せるこのレンズの懐の深さに、最後まで魅了されっぱなしでした。
「光を写したい」
そのシンプルな想いを胸に出かけた一日は、カメラを始めた頃のような、純粋なときめきに満ちた時間になりました。ただ「綺麗に記録する」だけではなく、温室を満たしていた光の温もり、小さなトンネルを見つけたときの高揚感、斜光の中で出会った大フレア、そして帰路で見上げたビルの青い光まで——。その場に流れていた空気感や胸の高鳴りごと残してくれるα7C IIとズマール L50mm F2は、写真の楽しさをもう一歩深いところへ連れて行ってくれる素晴らしいパートナーです。
本記事が、皆様のレンズ選びや新しい撮影体験のきっかけになれば幸いです。



