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【マップカメラ情報】【マップカメラ写真週間2012】おすすめの写真集 ロベール・ドアノー展 図録


発行年:2012年
発行所:クレヴィス

東京都写真美術館で、つい先日(2012年5月13日)まで「生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー」展が行われていました。本書はその展覧会の図録です。

ロベール・ドアノーといえば、その展覧会のポスターにもなっていたパリの恋人たちのキスの場面を捉えた写真。その他、パリやその郊外あたりの風景を数多くを市井の人々とともに撮影したことでも知られています。


パリ環状線の内側は19世紀のオスマンのパリ大改造計画のころから、(いくつかの再開発をされた一部、人々の服装やそこを走っている車等を除けば)今も昔も風景にさほど大きな違いはありません。再開発めまぐるしい東京に比べると、街全体が博物館であるかのようです。

そのそんなパリを撮影した写真家といえば、19世紀末のウジェーヌ・アジェもよく知られています。
しかし、そのアジェの写真とドアノーの写真では、同じパリの風景を被写体として写していても、印象が全く異なります。アジェの写真は、時間が凍り付いているかのように静寂なものが多い印象。それに対してドアノーの写真には、動きがあり活気に満ちているものが多い印象です。

撮影者や時代が異なるので、当然といえば当然なのですが、使用していた機材の違いが、その表現の差異の要因としてかなり大きいのではないかと思います。

ウジェーヌ・アジェは18×24センチのガラス乾板を使う木製の暗箱カメラでパリの建物や市井の人々の撮影をしていました。機材一式も大変に大がかりなもので、その場に据え付けじっくりと撮影するタイプの機材です。

現行の機材で近いものは
←こんな感じ。


どっしりを据え付けられたカメラによって定着される画像は大判の解像度の高さもあいまって、音をも感じさせない極精細な表現となります。それに対して、ドアノーの写真はローライフレックスなどによる手持ち撮影。大判機材に比較すると、その機動性は全く異なります。今その場に、居合わせた瞬間を即時に撮影することができます。

もしアジェの時代に、ドアノーのようにパリの市井の人々のユーモラスなしぐさを写真に写し込もうとしたとしても、当時の機材のスペックからしたらかなり難しかったことでしょう。

ちなみにドアノーの写真に見られるユーモアセンスは、梅佳代の「うめめ」や「男子」にもみられ、機材の電子化により、それはさらに加速したようにも見えます。

カメラの機動性が増すと、写真の中での「動」の表現度が増すのと同時に「ユーモア表現」の可能性も増すのかもしれません。

しかし、この図録で初めて知りましたが、
1934年にも「ピンポンダッシュ」はあったんですね。。。

そんなドアノーの暖かいまなざしをより深く感じられるエッセイ集もおすすめです。
不完全なレンズで 回想と肖像/ロベール・ドアノー=著 堀江敏幸=訳

[ Category:etc. | 掲載日時:12年06月04日 10時59分 ]

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