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【オールドレンズの沼地】Leica 山崎ズマールの実力

『Summar / ズマール』といえば、ライカ好きなら誰もが知っているであろう、戦前に登場したライカ初の大口径標準レンズです。マックス・ベレクが設計した本レンズは、のちにズミクロンの系譜へと繋がっていくのですが、総評として言われているのが「描写が甘い」ということ。

それは「甘美な描写」なのか、「写りが悪い」なのかは個人の好みで分かれるところではありますが、故にライカオールドレンズの中でも安価なレンズとして扱われています。

 

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写りはふわりとフレアが包み込むような優しい描写。その特性を上手に活かせば上記のような最高にオシャレな写真を撮ることができますが、正直メインで使うには癖が強い分、なかなか使い所が難しいレンズでもあります。(この写真は他のスタッフが撮影した物を拝借)

 

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さて、ではこのズマールというレンズ。登場した時からフワフワした描写だったのかというと、実際はどうだったのでしょう。
ズマールに使用されていた硝材は柔らかくて傷が付きやすく、発売から80年以上経っていることもあって、クモリや経年劣化という宿命からも逃れられません。

そこで今回の本題になるのですが、筆者所有のズマールです。
上記の写真を見ていただくとお分かりになりますが、本来レンズコーティングが施されていない戦前時代のレンズなのに、紫がかったコーティングが見られます。

実はこの個体は、後から再研磨とコーティングが施された、通称「山崎ズマール」と呼ばれるズマールです。

あくまで好きな人たちの間で言われている名称ではありますが、それは東京・新宿区にある山崎光学写真レンズ研究所で修理・リビルドされたことに由来します。

ズマールに採用されているダブルガウス型(プラナータイプ)のレンズ構成は空気面が多く、コーティングが施される以前は「コントラストが低く、抜けが悪い」と、テッサー型やゾナー型より人気の無いレンズでした。
しかし、戦後にレンズコーティングが一般的となり、レンズ構成の自由度も増し、フランジバックの長い一眼レフが登場した事で、変形ダブルガウス型が標準レンズのスタンダードになりました。

それらを踏まえて、この山崎ズマールを考えると、当時マックス・ベレクが考えた最高の光学性能をリフレッシュされたレンズとコーティングによって引き出せるではないか、とも考えられます。

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雪の日に庭で遊ぶ息子を開放F2で撮った一枚。実はこの時が私の持つ山崎ズマールの初撮影でした。カメラはCCDセンサーのM9です。

正直驚きました。ものすごく驚いたと言ってもいいくらいです。
知っているズマールの写りと全く違う、クリアな描写とシャープなピント面。本当にズマールなのか?と疑いたくなるほどの写りです。

 

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太陽を入れた構図でもこの通り。もうズマールを超えたレンズという印象です。しかしながら背景のジワリと滲む怪しいボケ味や、周辺減光は明らかにズマールなのが不思議です。

 

summar
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F4.5まで絞ってでの撮影。下の写真は中央部分の拡大画像になります。
うーん、凄い。ズマール凄すぎます…

 

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衝撃的な山崎ズマールの描写力。性能を損なわない誤差範囲の厚みを研磨し、コーティングされたリビルドレンズとは言え、当時の設計と硝材は変わらないのですから、元々の素性がとても良かったという事でしょう。しかし、ここまで性能が変わるとは驚きました。

レンズに手を加えるのは色々な考えがあるかと思いますが、個人的にはこれも本レンズのもう一つの顔だと思います。ご興味がある方は、すでにコーティングが施されている個体を探すか、もしくは修理を検討してみてはいかがでしょうか。
 
 

 

 

[ Category:Leica | 掲載日時:20年04月05日 11時00分 ]

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