先日「動く点P」ということばをSNSで見かけました。この点Pとは数学の図形問題やグラフに現れては動き続ける点のこと。
【点AとBと動く点Pに囲まれた面積が最大になるときの点Pの座標を求めよ】こんな風に私を苦しめ続けた存在です。
あれから10年ほど経ち、何の因果か再び点Pもとい「Leica M10-P」と対面する事になりました。エムテンピーと読むので、まあその、駄洒落です。
このカメラを手にすること自体は嬉しいのですが、いざブログ記事にしようと「うーん、M10-P、10-P、テン、ピー」とタイトルを考えている時に運悪く「動く点P」が目に入った、いや目に入ってしまった次第です。それからというものいいタイトルも思いつかず、私も私で動くこと、つまり旅行することが大好きなので仕方なくこの命運にに従うことに致します。
数学は苦手でしたが生物、地理、現代文はそこそこ。
それではQ1、はじめ。
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そもそもM10-Pが欲しいと思ったのは最近の話ではなく、まだ新品で販売されていた頃からの夢でした。ただその頃はこれからのライカがどのようなカメラを出すのか分からず、今買って後悔しないかなどと考えあぐねているうちにあっという間に終売。M10モノクローム、M10-R、そしてM11、M11モノクロームと、ライカM型は着々と進化を続けています。
そんな最中にこのカメラを買ったのは、ちょっと高画素に疲れたから。
ミラーレスの高画素機とパキパキによく写るレンズを持っていますが、その対極とまではいかないものの今や高画素とは言われなくなった2400万画素とオールドレンズで「モニタで拡大しない写真」を楽しみたいという気持ちが少なからずありました。あとは見た目がカッコいいから、実は半分くらいこれが理由かもしれません。カメラはモチベーションが大事なので、全く問題なし。
レンズはエルマー35mmF3.5、それとズミクロンM50mmF2固定鏡胴前期1stを使います。
梅雨真っただ中だというのに晴天に恵まれた東京は大変な人出。
見渡す限りに人だらけ、なかでも外国人観光客の方々が多くを占めていました。
少々蒸し暑いことを除けば撮影には嬉しい陽気。強い光が入ることでエルマーの特徴ある写りも映えるというもの。
昨今のフィルム高騰に嘆きつつ、デジタルライカなら気軽なシャッターを切り続けられることに複雑な気分を覚えながら。
開放3.5のレンズとしてボケ量が多いわけではないエルマーですが、流石に2枚目最短付近にピントを持ってくると面白い背景を見せてくれます。レンジファインダーかつ広角標準という要素に甘えて日の丸構図になりがちなのが少し恥ずかしいですが、90年近い歴史を持つレンズでこれだけバリエーション豊かな表現ができることを知っていただければ幸いです。
普段はフィルムカメラで絞り込み、パンフォーカスのスナップ利用が多かったレンズですがこうして開放で撮ることによって新鮮さを感じる写真が撮れることに喜びを覚えました。これはまさにデジタルカメラ高速シャッターの恩恵です。枚数気にせず撮れることももちろんですが、やはり買ってよかったと思えるものです。
この写真からレンズはズミクロン50mmに切り替え。
個人的には海、里山、田園風景には35が好みですが、やはり街中のスナップなら50です。
ちょっと狭いかな、と思えば縦構図にするとなんとなくしっくりきたり、目一杯下がるために今来た道を戻るのも悪くはありません。
何を隠そうこのズミクロンもさっき買ったばかり。
ピントもバッチリ、シリアルから考えるに58年製の60歳オーバーですがまだまだ現役、本当に綺麗に写ります。
普段ライカに触れる機会が多い分「ライカらしさ」がどういうものなのか、ようやく分かったつもり半分、分からない楽しさ半分。
ただこうして自分のカメラで自分の視線で撮った写真にそれが宿ると不思議な異物感が癖になります。分かったつもりなんて言いましたが本当のところまだまだ勉強中。あえて言葉で説明するならば開放に残る周辺の滲みや僅かな減光が、中心を覗いているような表現を構築しているとでも言うべきなのだと思います。
普段開放F2なんて明るいレンズ使ってこなかったので暗所での撮影も思いのほか捗り嬉しい限り。
M10-Pの高感度耐性もなかなかのもので、3200くらいまでであれば気付くとも気になりはせず、といった感じ。もちろんオートISOの上限を設けておけばそれを超える心配はございませんし、たとえより暗い条件下で低速シャッターになったとしても手ブレもかなり粘ります。
手振れ補正のないカメラの為これは撮り方によりますが、1/30か頑張れば1/15までは大丈夫なはず。頑張れば、ですが。
今回撮影したのは東京都台東区浅草。
そこから徒歩でぶらぶらと歩きながら墨田区へと動きました。
それでは、解答やめ。
これからもM10-Pは列島上を動き続けます。
今新品で手に入るのはM11とM11モノクローム。
M10とM10-Pは同じ画素数のセンサーなので写りの味わいはどちらでも。