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【Leica】A Piece of PREMIUM COLLECTION – エルマー L105mm F6.3 –

【Leica】A Piece of PREMIUM COLLECTION – エルマー L105mm F6.3 –

MapCameraで取り扱う中古品の中で、流通数や生産数が少ない希少品や限定モデルなどに与えられる名称、「PREMIUM COLLECTION」。

本シリーズでは、A Piece of PREMIUM COLLECTIONと称し、そんな製品たちを一つずつ紹介いたします。

第十五弾となる今回は、「Leica (ライカ) エルマー L105mm F6.3」をご紹介いたします。

通称「マウンテン・エルマー」。焦点距離105mmという中望遠域を、驚くほど小さなサイズに収めた、少し特別なエルマーの魅力の一端に迫ります。


まずはレンズのスペックを見ていく前に、その名称について触れてまいります。
本レンズのレンズ自体の呼び名は 『エルマー L105mm F6.3』。
そして、Berg / Mountain Elmar(山岳エルマー、マウンテン・エルマー)という通称で知られています(Berg:ドイツ語で山/山岳の意味)。
“山岳”という言葉は雰囲気の話ではなく、仕様に根拠があります。
このレンズは、登山や旅行用途を想定した軽量コンパクト設計で作られており、実際に重量は約240g。105mmクラスとして見ると、この軽さは今でも十分に異質です。

レンズの外観写真

焦点距離は105mm、開放F値はF6.3、光学系は「4群3枚」とされるエルマータイプ。
画角は約24°とされ、明確に望遠レンズとしての焦点距離です。
最短撮影距離は約2.6m。近接表現を狙う設計ではなく、被写体との距離をある程度取った状態で力を発揮するレンズです。
開放F値F6.3はやや暗いように思えますが、風景などを想定しているのでいずれにせよ絞り込んで使用することが多く、結果としてこの開放F値でもデメリットは感じません。
フィルター規格はA36口径。現代の一般的なねじ込み式フィルターとは違う規格で、当時のライカで多かったかぶせ式の規格として知られています。
派手なスペックはありませんが、構成がシンプルなぶん、設計の意図が読み取りやすい一本です。

レンズの外観写真

本レンズの製造期は1932年から1937年、生産数は3,975本という記録があり、現代では希少性の高い部類に入ります。
そして何より、ここで考えたくなるのがその「時間」の話です。
仮に1933年前後の個体だとすると、いまからおよそ90年以上前、もう少しで“100年”に届く時代のレンズということになります。
にもかかわらず、現存していて、しかも実際にカメラに装着して撮影に使える。これは当たり前のようで、実はかなり特別なことだと思います。
家の中を見渡して、「100年前の道具が、いまも現役で使えるもの」がどれだけあるでしょうか。
家具や時計のように“残る前提”のものならまだしも、精密な光学機器として、レンズがこの状態で受け継がれているのは、それだけで一つの価値です。
希少性という言葉は、数が少ないという意味だけではありません。
時間を越えて残り、次の持ち主の手に渡り、それでもなお撮影という役割を果たせる。そういう意味で、この山岳エルマーには、数字以上のロマンが宿っているように感じます。

レンズの外観写真

ここで絞りに注目してみると、あることに気が付きます。刻印されている数字が、見慣れたF値ではありません。
開放のF6.3から始まり、F9、F12.5、F18、F25、F36と続くこの並びは、オールドレンズ・ファンにはお馴染みかもしれません。
この絞りは「大陸絞り」と呼ばれます。
これは1950年代頃までライカなどのヨーロッパメーカーで主流だった絞りの表記法なのです。
一方で、現在のF2.8、F4、F5.6、F8、F11と続くF値の並びは「国際絞り」と呼ばれています。
1930年代に誕生したこのマウンテンエルマーも、当時のヨーロッパで主流だったこの表記を採用しています。
見慣れぬ数値にどれくらい絞ったか分かりにくいのでは? と思うかもしれませんが、「1段絞ると光の量が半分になる」という法則は現在の国際絞りと同じです。開放F値F6.3から1メモリ回して「F9」にすれば、ちょうど1段分絞り込まれたことになります。

また、山岳エルマーは、その名の通り屋外での使用を強く意識したレンズです。
山岳や遠景といった強い外光条件下では、余計な太陽光をいかに抑えるかが描写の安定性に直結します。
マウンテン・エルマーの専用フードとして知られているのが 「FIZEN」です。
フェルト裏地付きのベークライト製で、このベークライトは1907年に開発された世界初の合成樹脂(フェノール樹脂)としても知られています。
金属とは異なる質感と軽さを持ち、屋外携行を前提とした当時の思想が素材選びからも読み取れます。
こうした専用フードが現存し、さらにキャップまで揃った状態で残っていることは、単なる付属品以上の意味を持ちます。
この状態で残っている点も、本レンズを語るうえで重要な要素です。

レンズの外観写真

もちろん、このレンズには現代目線での制約もあります。
開放F6.3は明るいレンズではありませんし、最短2.6mという距離も、日常的な近接撮影に向くスペックではありません。
ただ、その代わりに得ているものがはっきりしています。
それが、105mmという焦点距離を「ポケットに入るほど」と形容されるサイズ感へ落とし込んだ携行性であり、約240gという重量です。
つまりこのレンズは、万能を狙うのではなく「持ち出せる望遠」という一点に寄せて設計されています。山岳エルマーという呼び名は、その設計の結論を、名前として残したものなのでしょう。

レンズの外観写真

山岳エルマーは、光学仕様こそ共通していますが、外装仕上げにいくつかのバリエーションが存在します。確認されているものとしては、オールブラック仕様のほか、ブラック塗装の鏡胴にニッケル部品を組み合わせた仕様、そしてクローム部品を組み合わせた仕様などが挙げられます。
初期のライカレンズに多く見られるニッケル仕上げは、やや柔らかな光沢を持ち、黒塗装との対比が落ち着いた印象を与えます。一方でクローム仕上げは、より硬質で明るい輝きを持ち、同じレンズであっても雰囲気が大きく変わります。
これらの違いは単なる装飾的な差異ではなく、製造年代やロットの変遷を示す一つの手がかりにもなります。1930年代という過渡期にあったライカの製造体制の中で、仕上げの移行が行われていたことを考えると、外装の違いは時代の痕跡そのものと言えるでしょう。

レンズの外観写真

焦点距離105mmという数値は、レンジファインダー式カメラにとって決して扱いやすい領域とは言えません。
ファインダー倍率やブライトフレームの制約を考えると、当時のボディで105mmを正確に運用するには、ある程度の習熟が求められたはずです。
しかし、視点を現代に移すと状況は変わります。
デジタルM型ライカに搭載されたライブビュー機能や拡大表示、さらにはフォーカスピーキングといった補助機能により、焦点距離105mmでもピント合わせは格段に容易になりました。かつては“やや扱いづらい望遠”だった領域が、現在ではより現実的な選択肢になっています。
小型軽量という設計思想はそのままに、操作面だけが現代技術によって補完される。
そう考えると、この山岳エルマーは、単なる歴史的遺産ではなく、いまの機材環境の中で再び実用的な役割を持ち得るレンズとも言えるのではないでしょうか。
小型の望遠レンズが、現代のデジタルM型ライカと組み合わさることで、再び息を吹き返す。
この一本には、そんな可能性も感じられます。

レンズの外観写真

「Leica エルマー L105mm F6.3 山岳」は、焦点距離105mmを約240gという重量に収めた、1930年代の設計思想を明確に示すレンズです。
万能性ではなく携行性に重きを置いた設計。その思想は、仕様や外装、付属アクセサリーの存在からも読み取ることができます。
製造から約90年以上を経った今もなお、光学機器として機能し、状態を確認できる。
その事実こそが、本レンズをPREMIUM COLLECTIONとして記録する意義なのかもしれません。


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[ Category:Leica | 掲載日時:26年03月13日 20時00分 ]

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