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【Leica】M8.2を携えて。

【Leica】M8.2を携えて。

2020年11月、現在発売されているライカMボディの最新機種は【Leica M10-R】です。センサーは驚愕の4000万画素オーバーというスペックを誇り、どのようなレンズを通ってきた光でさえ確実に、そして忠実に捉えることが出来るでしょう。

対して、今回ご紹介する【Leica M8.2】のセンサーはAPS-Hという大きさであり、画素数は1030万画素。4000万画素と比較すると、同じ面積に対する画素数はおよそ3分の1。同センサーを初めて搭載した【Leica M8】の発売(2006年)から10数年の時間をかけてカメラはそれだけ進化しているという事になります。

では、レンズの進化はどうでしょうか。
例えば、ライカレンズのラインナップの中でもバリエーション豊かな50mm。その歴史はライカ判の標準レンズとして産声を上げてから現代に至るまで早100年ほど。現在第4世代まで改良を重ねているズミクロンや、開放F値0.95を誇るノクティルックス、クセ玉として人気のあるズマリット50mm F1.5 など、ひとくちに「ライカMマウントの50mm」と言っても、数十年の時代を超えていくつもの選択肢が思い浮かびます。
今回はその中でも、圧倒的解像力で世界を震撼させた【アポズミクロン M50mm F2.0 ASPH.】そのレンズと、M8.2のAPS-Hセンサーで写真を撮ってみたいと感じたため、思い立ったが吉日。撮影に出かけましたのでご紹介いたします。

驚異的な解像力を誇るレンズと、ライカ史上初のデジタルMボディに搭載されたセンサー、この組み合わせはどんな写真を生み出してくれるのでしょうか。M8およびM8.2に搭載されているセンサーでは、日中赤外線の影響を受けて色被りが発生する可能性があるためUV/IRフィルターを装着しての撮影です。このフィルターの怪しくマゼンダに煌めく様がかっこよくて仕方がありません。35mm以上の広角レンズで影響は顕著になるのですが、かっこいいので50mmでも装着しておきましょう。

なお、50mmのレンズをAPS-Hセンサーボディに装着しているため焦点距離は約1.33倍され、換算およそ66mmです。普段65mmのレンズを好んで使っているためか、写る範囲に違和感はありませんでした。

前置きが少し長くなりました。
それでは、いざ。

10年以上前のセンサーであることが疑わしいほどの写真が撮影できました。
被写体の輪郭や細い線の描写こそ、流石にやや甘く感じる部分はあるものの、全体を眺めた時の1枚の写真としての出来は申し分ありません。

また、色に関しては意外や意外、想像を遥かに凌ぐ再現力です。色被りの発生や、現代のセンサーの様なくっきりとした色は出すことが出来ないのでは、と踏んでいましたが、完全に予想を超えてきました。おそらく、レンズが導いた完璧とも言える色合いの光と、UV/IRフィルターの効果が丁度よく作用した結果なのだと思います。その証拠に、他の35mmレンズ(UV/IRフィルターなし)で撮影した下の写真ではやや色の浅いような、このセンサー特有のカラーがよく出ていることが分かります。わびさびを感じるような慎ましやかな色の乗せ方はこのセンサーだからこそ成しえる技です。今になっても衰えないM8センサー人気の理由を痛感しました。

さて、そんな今回の組み合わせですが、夜間という光量が限られる環境でも破綻することは少ないようです。
中野駅を降りてすぐ、ブロードウェイ周辺の繁華街はお気に入りのスポット。

全体的に少しシアンに被っているようにも見えますが、この時はUV/IRフィルターは装着していなかったため、これはフィルターによる影響ではなくセンサーが描いた色です。輝く看板の描写はもはや言わずもがな。

M8.2はM8では付いていなかったISOオートモードや、シャッタースピード・ISO感度・ホワイトバランスが自動で決まるスナップショットモードが追加されている為、咄嗟の撮影でも被写体を逃すことはほとんどありませんでした。普段、完全マニュアルのカメラばかり使っていると、こういった「カメラにお任せできる機能」につい驚いてしまいます。さらにそれがライカM型ボディで可能であるため感動はひとしおです。

ちなみに、現在販売されているライカMデジタルボディでも、もちろん絞り優先での撮影は可能ですが、M8.2に搭載されているスナップショットモードは他の機種に搭載されることはありませんでした。使ってみるとなかなか便利だったのですが…少し残念です。

・・・

ここまではカラー写真をご紹介してきましたが、M8.2のセンサーはモノクロ写真も得意としています。赤外線やUV/IRフィルターによる色被りの影響が分かりづらくなるだけでなく、階調も豊かに表現できるセンサーであるからこそおススメできるのです。

被写体であるブランコを引き立たせるために開放で撮りたい場面ですが、ここは敢えてぐっと絞り込んで撮影してみました。背景がほぼ被写界深度に入っている為、ボケによる立体感はほとんど感じられませんが、その階調の豊かさ故に、明にも暗にも潰れてしまうことなく、かつ明度差のみで鮮明に被写体を浮かび上がらせています。秋の柔らかな日差しを浴びた金具は遠目に見ても金属感がしっかりと伝わってきていますね。

もう一枚ご覧ください。

こちらは開放で撮影しました。
レンジファインダーでピントを合わせようとすると、どうしても二重像を確認できる中心部に、最も見せたい被写体を配置したままシャッターを切ってしまいます。しかしそのおかげもあり、影と光の部分の明暗をはっきりと感じさせる1枚に仕上げることが出来ました。太陽光が当たっている個所も影になっている個所も、1枚の画として違和感を感じさせない濃さで描くことが出来ています。(写真を確認していて気づきましたが、よく見ると少し手袋が捲れているのが素敵です)

「暗いところもよく見たら描写されている」わけではなく、暗い部分を含めた全体像をパッと見ただけで、どこも沈んでしまっていないことが視認できます。なんて優秀なのでしょう…。もちろん生のDNGデータではカラーで残っていますので、忠実な色再現も密かに楽しんでいます。実際に撮影し現像した人間の特権だと思って。

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今回のお気に入りの1枚です。
もう日も沈んで30分も経とうかという頃、大きな航空機の音を聞いて急いで見上げて撮った写真。スナップショットモード、絞り開放、無限遠。(これぞスナップだ!)と、心の中で呟きながら、電線の隙間を縫うようなフレーミングだけに神経を注いで撮影した瞬間のことをよく覚えています。
暗い中ブレることもなくきちんとシャッタースピードとISO感度を調整してくれた上に、ホワイトバランスも気持ち悪さを感じない、目で見たままの暮れの空を演出します。ますますこのスナップショットモードが愛おしく感じてしまいます。

いかがでしたでしょうか。発売から10年以上の時を経てもなお人気が衰えない【Leica M8.2】。M8とM8.2の二種でのみ採用されたセンサーや、M8の最高速シャッタースピード1/8000、そしてM8.2にのみ許されたスナップショットモードなど、何れのボディにも魅力が沢山あります。
今回はその魅力を最大限発揮するため【アポズミクロン M50mm F2.0 ASPH.】を装着してのご紹介でした。レンズが引き立たせるセンサーの良さ、センサーが受け止めるレンズが導いた光。一般的に語られるような特色とは両者ともに違っていたかもしれませんが、一見相反するような得意表現がぶつかり合い、絶妙な化学反応を起こしてくれたように思います。

・・・

現代のデジタルカメラ業界で進む高画素化、またそれに伴う高画質化は、生物が持つ優秀すぎる二つのレンズ(目)と、視神経という天才センサーによる見え方に追いつくための必然的な“進化”だと言えます。きっといつかはこの両目をも確実に超える技術が世に溢れるのではないでしょうか。

いえ、実は、もう既に幾つかの機種に関してはとうに視覚を超越しているかもしれません。
そうなった時、人々は眼で見るよりもなんだか柔らかい、温かみすら感じる描写のカメラに惚れ直すのです。きっと。

・・・


ダイヤルはスナップショットモード。
少し絞って、ピントリングは無限遠へ。
あとは、信頼できる相棒に全てを任せて撮る1枚。

なに、間違う事はありません。
その1枚こそが正答なのです。

[ Category:Leica | 掲載日時:20年11月27日 12時20分 ]
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