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【Leica】Q2とQ3の”違い”

フルサイズセンサーを積んだコンパクトデジタルカメラであるQシリーズは、2015年6月に初代Q(Typ116)が発売されると瞬く間に大ヒットモデルとなりました。
コンデジという利点を最大限に生かしたミニマルなデザインや、Qのセンサーの為だけに開発されたレンズ「ズミルックス28mm F1.7 ASPH.」の類まれなる描写が世界中で愛されています。

2019年3月には4730万画素のセンサーを搭載した後継機Q2がデビューし、EVFが従来の液晶から有機ELに変わって反応速度が向上。もともと高評価だったEVFが更に見やすくなりました。
2023年6月にはQ3が登場し、画素数はさらに増え6000万画素にアップグレード。
その上チルト液晶を採用したことによりハイ・ローアングル撮影が容易になるなど、着実に進化し続けています。

 

しかし筆者には気になる事がありました。
それは、世代が進むごとに写真の色味がどんどん変わっていく事です。
初代QとQ2、Q3はそれぞれ色味が大きく違っております。
良い悪いではなく好みの問題なのですが、今回の記事では実際にQ2とQ3でどれほど色味・画作りが違うのかを比較していきたいと思います。
併せて使用感も述べてまいりますので、どうぞお付き合いください。

 

【1. 操作性について】

①シャッターフィーリング


Q3ではシャッターボタンが変更され、レリーズボタンが装着できるよう穴が開けられました。
これによるフィーリングの変化があるものと思いましたが、実際はQ2と交互に持ち換えて撮影しても気になりません。
これは、「シャッターボタンの高さ自体や電源スイッチからの飛びだし具合」がQ2とほぼほぼ同じに作られている為、違和感が無いのだと思われます。
しかしながらシャッターレスポンスはQ2の方が良くQ3は一瞬ラグがあるような感じを受けました。
比べなければ気になりませんが、Q2は押し込むと同時にシャッターが切れる感じ、Q3は押し込んでから少し間が空いてシャッターが切れる感じでした。

②EVF
Q2のEVFは368万ドットですが、Q3のEVFは576万ドットまで解像力が上がっています。
しかしながら交互に撮り比べてもほぼほぼ違いが分かりません。今どっち構えてたっけ?と混乱することもしばしば。
カメラを振った時の残像感も同一と言ってよいレベルでした。
違いが大きいのはディスプレイとEVFをオートで切り替える速さ。
EVFを覗くと一瞬で切り替わるQ2に対し、Q3は一拍待たないと切り替わりません。ここは少し気になりました。
また、Q3はAF駆動時に画像が「ヴォンッ」と荒くなりますが、Q2はほぼ気になりません。

③AF
これは圧倒的にQ3の方が良くなっています
特に人工物が密集している場所でピントを合わせる際など、Q2はぱっと見合焦しているように見えても実は外れている・・・と言ったことがちらほらあるのですが、Q3は狙った場所へちゃんとピントが来ます。
また、暗所AFも圧倒的に進化しております。
後ほど高感度比較でも出てくるこのカットでは、ベッドの中に居る人形の顔にピントを合わせているのですが、Q2は何度やっても合焦しませんでした。
そのため仕方なくマニュアルフォーカスで追い込んでいます。
Q3は何度やっても必ず高速で合焦しました。

 

④操作について


ライカの操作系は成熟しており、どちらも操作しやすいと言えます。
しかし、ファインダーを覗きながらAFポイントを移動する際はQ2の方がやりやすいです。
何故ならばQ2の十字キーは盛り上がっており、「ファインダーを覗いたままでも十字キーを右手の親指で探り当てやすい上、今上下左右どこのキーの上に指があるのか分かりやすい」のですが、Q3はフラットに近い為「あれ?十字キーどこだ?」と探してしまいます。
探り当てた後も、「今触っているキーは上なのか?それとも右なのか?」と感覚的にわかりづらい所がありました。
また、電源を入れてから実際に起動するまでの時間もQ3の方が長くなっています。
(電源を切ってから一定時間経過後に電源を入れる時のみ。入切を繰り返す場合、その差は縮まります)

 

【2・・・色・写りの違い】

さて、ここからは写りや色の違いについて比較していきましょう。
全ての写真はJPEG撮って出し、未編集です。また、それぞれのカメラの露出設定は全て合わせています。
フィルムモードはどちらも標準に固定

iDRはどちらもオート。(オートにしておくと、カメラが「高/標準/低/オフ」の中から自動で選択し、ダイナミックレンジを補正してくれます。)
Q2もQ3もシーンごとにどの補正量を選ぶかの判断基準が同じようで、どのカットでも必ず両機種とも同じ補正量を選んでいたのが興味深いところです。

①色の違いについて


AWB /  f2.8 /  1/60  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にSTDを選択)

早速興味深い結果です。あまりの違いに設定を合わせるのをわすれてしまったかと確認したほどです。
Q3は派手目の色になった様です。もはや朱色と赤の違いがあります。
また、全体を通し一定以上暗い部分はQ2の方がストンと落ちています。鳥居の立て看板の奥や上の木の枝が分かりやすいでしょう。

AWB /  f5.6 /  1/500  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

こちらでもQ2は朱色っぽく、Q3は赤っぽく写りました。
しかしそれだけではありません。
東京タワーの赤それぞれの描き分けの美しさでは、Q2の方が秀でているように見えます。
これは先ほどの、「一定以上暗い所は黒がストンと落ちる」ために面の境界が分かりやすくなり、その結果コントラストが上がって立体感が生まれたから」といえるでしょう。
さらにQ2の空は水色、Q3の空は青と、空の色相にも大きな違いがあります。
旧来のライカ節に近いのはQ2ですが、見たままの空に近いのはQ3の方です。


AWB /  f2.8 /  1/250  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

日の当たらない暗所でも傾向自体は変わりません。
Q2はサツマイモ色、Q3はピンクに近い紫です。
コンクリートの色はQ3の方が赤っぽく、植物の色はQ3の方が派手な黄緑になりました。
道路に書かれた文字の水色にも違いがあり、Q2はより水色、Q3はより青色です。

 

AWB /  f2 /  1/2000  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的に切を選択)

肌色にも大きな影響を及ぼす、黄色の比較です。
Q2の黄色は黄緑が入った感じ。これは色の良さで知られるライカM10シリーズにも通じる発色です。
Q3の黄色は赤みを増し、少し暗めに出ています。
Q3は船体に反射した空の青が目を引きます。よくよく見ると奥のヤシの木にも違いが。
肉眼で見たものに近いのはQ3の方です。

 

AWB /  f2.8 /  1/2000  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にSTDを選択)

大きな違いが見受けられます。Q2はとにかく渋い!
Q3は色ノリがとても良く、スクリューの冷たく固い質感が良く出ている上に存在感のある画となっています。
(ゴーストの出方に関しては、筆者の構えた位置がずれたためと思われます)


AWB /  f5.6 /  1/250  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

青の比較をするとこのような感じに。
橋脚のコントラスト差もさることながら、Q3側は水面の青が高彩度で美しい発色となりました。
水面に反射した船体の描き方についても差が出ており、Q2がザ・反射と言った感じなのに対し、Q3は油絵のようなグラデーションが特徴的です。
よく見るとQ2の船体の白は暖色よりに、Q3は寒色よりになっているという違いも。


AWB /  f8 /  1/250  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にSTDを選択)

空や海の色相、地面の黄色っぽさ、コントラストの3つに大きな違いが見て取れます。
比較を進めていくほどに感じたのですが、Q2は写真全体を通して同じように描く「ライカの一体感」を重視、Q3はそれぞれの色やコントラストを独立して制御し「色や質感の違いを描き切ろう」としているイメージを受けます。

 

②コントラストの違いについて


AWB /  f5.6 /  1/500  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

色の違いで見てきた結果と被り気味ですが、コントラストを意識したカットで比較してみます。
これまで通りQ2の方が固めの画作りで、黒がガツンと締まっています。
Q3はビルに空の水色が乗っていますが、これは空気遠近を上手く再現していると言え、やはりそれぞれの物体や事象の描き分けを頑張ろうとしているように感じられます。
その「描き分けようとする力」がよく解るカットをご用意しました。

Q2:AWB /  f4.5 /  1/500  / ISO:200 / iDR:オート(両機種とも自動的に切を選択)

 

Q3:AWB /  f4.5 /  1/500  / ISO:200 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

撮影時間が夕方の為、植物の全体にオレンジの光がのっています。
しかしQ2はそれを補正し「昼光色下の状態の植物の色」を演算しようとしたのか、「左は緑色、右はオレンジ色」というように過剰補正してしまっています。夕方らしさが少なく感じてしまうのはこのためかと。
Q3はそれぞれの植物の色の違いを表現しながらも、「左側の植物はもともと緑色だが、オレンジの光が乗ってこうなった」と分かるようになっています。

 

③ノイズの違いについて

両機種ともに高感度でもノイズレスでクリーンな画を提供してくれますが、比較してみます。
(Q3はノイズリダクションの強さを選べるので、「通常」にしています。Q2はオンオフのみしか選べないのでオンにしました。)
まずはISO3200のカットから。

Q2:AWB /  f2.8 /  1/125  / ISO:3200 / iDR:オート(自動的に切を選択)

ピクセル等倍まで拡大してみましょう。

綺麗です。次はQ3を見てみます。

Q3:AWB /  f2.8 /  1/125  / ISO:3200 / iDR:オート(自動的に切を選択)

ピクセル等倍まで拡大してみましょう。

色ノイズの量は増えていますが、Q2より明らかにディテールが残っています。
6000万画素でこの高感度性能とは、恐れ入りました。
次はISO6400で比較してみましょう。

Q2:AWB /  f2.8 /  1/125  / ISO:6400 / iDR:オート(自動的に切を選択)

ピクセル等倍まで拡大してみます。


この光量の少なさでよく耐えています。
次はQ3です。

Q3:AWB /  f2.8 /  1/125  / ISO:6400 / iDR:オート(自動的に切を選択)

ピクセル等倍まで拡大してみます。


Q2は木箱の「3232」という数字が読みづらかったのですが、こちらは普通に読めます。

比較的高い感度の比較のみですが、発色も悪くならずディテールも豊富な所を見るとQ3の方が高感度でも綺麗と言えます。
しかし拡大すると色ノイズはQ2より増えていることが解ります。
もともとライカの高感度ノイズは、輝度ノイズばかりで色ノイズが少ない事が特徴でした。新型センサーではそこが変わったと思います。
高画素機はそれゆえ色ノイズが目立たなくなるので、よいチューニングと言えるでしょう。

 

④暗部持ち上げ耐性(ダイナミックレンジ)

この画像をフォトショップで編集し、明るさを150%に上げる事を2セット繰り返してみます。
そもそもこんなに暗く撮った写真を持ち上げる事は無いですが、せっかくなのでシビアな条件で比較してみます。

まずはQ2から。
ディテールは頑張って残していますが、発色が厳しい状況に。
更に椅子のカバーにモアレのような縞がのってしまいました。
次はQ3です。

今回の比較記事で一番感動した結果です。ここまで情報が残るだなんて!
掘り起こせたのは赤色だけかと思いきや、船長のキャプテン服の紺色も消えずに残っています。
ドアノブの金属感もちゃんとあり、もう言うことなしの結果です。

 

⑤解像力について

1300万画素の差が、実際どれくらいの違いなのかを遠景で比較してみます。

Q2:AWB /  f8 /  1/250  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的に切を選択)

この画像の左端をピクセル等倍まで拡大してみます。まずはQ2から。

2024年現在でも4700万画素はかなりの高画素なので、もちろん高精細です。
ではQ3です。

たしかにより細かいところまで見えますが、思ったより大きな違いではありませんでした。
どちらかというと次で比較する自然物の方が分かりやすいと思います。
まずはQ2。

次はQ3です。

是非拡大して見てください。
Q2ではぼやけていた葉先が、しっかりとディテールを持って描かれています。
左下の木の根元に生い茂っている草も、よりシャープに曖昧さなく描写しました。
自然物を撮る機会が多い場合、この差は決して小さくありません。
また、これまでの比較でもそうですがQ3では空のバンディングノイズが大きく減っています
これは素晴らしいことです。

 

⑥AEの違いについて


Q2:AWB /  f3.5 /  1/160  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)
Q3:AWB /  f4.5 /  1/200  / ISO:100 / iDR:オート(両機種とも自動的にHを選択)

絞りとシャッタースピード、更にAFポイントもオートにし、何も考えずサッと撮った時の露出の出目を見て見ます。
どちらもスナップ向きの良いシャッタースピード制御ですが、より見た目に近く良好な制御なのはQ3の方と言えるでしょう。
対してQ2はオーバー気味ですが、「これぞズミルックスの滲み」と言えるようなハイライトが出ていると考えると悪くありません。
因みにこの写真は色味の比較ではありませんが、それでもやはりQ3の方が彩度が高いことが分かります。

 

 

⑦Leica Lookについて

2024年1月21日現在、Leicaのカメラの中でQ3だけが対応しているLeica Look。
シャッターを押すだけで多くの人が「ライカらしい」と感じるであろう色味を再現してくれます。
「これがあるからQ3を選ぶ」方も多く、ある意味Q2との最も大きな違いになっていると思います。
早速見てまいりましょう。
露出は全て合わせているので、違うのはLeica Lookを使ってるか否かのみ。
多くの方がグラッと来てしまうのではないでしょうか。

これぞライカと唸る色味です。
フィルムで撮影したような写真がいとも簡単に手に入ってしまいました。
どんどん見ていきます。

何度も言いますが、Leica lookは本当にシャッターを押しただけでこれらの色味になります。
面倒な後編集は要りません。記事前半の色味の比較が空しくなるほどエモくなっています。

これまでの比較をシンプルに纏めますと、
Q2は色味が渋く、Q3より各レスポンスが良い。
Q3は色味が派手で、高感度に強く、Leica Lookが使える。
といったところでしょうか。

Q.貴方の好みはどちらのQですか?
答えはあなたの心の中に…。

 



 

 


 


 


 


[ Category:Leica | 掲載日時:24年01月30日 18時00分 ]

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