
【Nikon】ミラーレス一眼で現代に蘇る伝説のレンズ。Z6II×NIKKOR-P 85mm F2
Nikonのミラーレス一眼カメラ、Zシリーズ。
Zマウントには数多くの高性能レンズが存在し、ZレンズがあるからZマウントを選ぶ、という方も多いでしょう。
ですがZマウントにはもう一つの楽しみ方があることをご存じでしょうか。
それが、マウントアダプターの使用です。実はZマウントボディは、マウントアダプターを介したレンズの使用にも最適な設計なのです。
そこで今回は、古今東西様々なレンズをZマウントボディに装着し、ボディ、そしてレンズの魅力を再発見していこうと思います。
ボディについて
今回使用したボディは「Nikon Z6II」。
2020年に発売された、2400万画素クラスの裏面照射型センサーを搭載しているZマウントのスタンダードモデルです。
レンズ情報(焦点距離・F値)を予め設定しておくことで、Exif情報にレンズの情報を残すことができるほか、ボディ内手ブレ補正も登録した焦点距離に連動して動作するため、マウントアダプターを介したオールドレンズとの相性も良いボディです。
レンズについて
次に今回ご紹介するレンズは「Nikon NIKKOR-P 85mm F2」。
まずは簡単にレンズのスペックを見ていこうと思います。
・発売年:1948年
・レンズマウント:ニコンSマウント、ライカL39スクリューマウント、コンタックスCマウント
・最短撮影距離:80cm
・重量:約500g
フルクロームの重厚な見た目が特徴的です。このレンズが発売されたのは1948年で、今回装着したNikon Z6IIとは発売年にして実に72歳差ということになります。マウントは当時ニコンが採用していたSマウントのほか、バルナックライカなどでおなじみのL39マウント、そしてコンタックスCマウントに対応した個体も存在しています。いずれもレンジファインダーカメラのマウントです。
また、このレンズを語る上で欠かせないのが、写真家デビッド・ダグラス・ダンカンとのエピソード。
タイム・ライフ誌の専属カメラマンとして当時日本に滞在していたダンカン。ある日このレンズで撮影された自分のポートレート写真を見てその解像力の高さに驚き、すぐにニッコールレンズを購入し戦場へ撮影に向かったそうです。
この出会いをきっかけに、ニコンの名前、そして日本のカメラの品質の高さが世界に知れ渡ることとなります。
結果的にカメラの歴史を大きく動かすこととなった、まさに伝説と呼ぶに相応しいレンズ。
その実力はいかほどなのでしょうか。
作例
それではこの組み合わせで撮影した作例を紹介いたします。
NIKKOR-P 85mm F2の絞り値と描写
開放とF4まで絞った作例の2枚を同じ構図で撮影しました。
このレンズは開放から高い解像力を発揮することが特徴です。とはいえコントラストはやや低く出ており、色の滲みも出ています。
というのもこのレンズが発売された当時はほとんどがモノクロフィルムで、カラーバランスよりは解像度が重視されていました。とはいえカラーで撮影しても綺麗に写ります。
一方で2段ほど絞り込むとコントラストが向上します。ボケは固めですが、ピント面は現代のレンズと比較しても遜色のない写りです。
NIKKOR-P 85mm F2の解像力とボケ
解像力に関しては、先ほどもお伝えしたように全く問題のないレベルです。
しかし85mmのレンズを開放で撮影すると被写界深度はかなり薄いため、ピント合わせはどうしても難易度が高くなります。
今回はZ6IIのFn1ボタンに100%の拡大表示を設定しました。ボディを握ったときに、右手中指でピント面の拡大/解除が可能です。
またボディ内手ブレ補正のおかげで、拡大表示時にも安定して像を見ることができます。
ピント面が立つ描写をするので、主題を引き立たせた表現が可能です。
特に曇っていると、湿度のある写りをします。
まさに今、梅雨の時期に最適なレンズだと思います。
NIKKOR-P 85mm F2の逆光耐性
先ほど曇っている際の描写を評しましたが、晴れている際の描写もまた違った魅力を見せてくれます。
こちらは太陽に向けて撮影した作例。かなり強くフレアが出ています。
実はこのレンズは約10年にわたる販売期間の中、製造時期によってコーティングに違いがあるといわれています。
今回使用したのは最初期型。1948年に製造された個体で、逆光耐性はかなり弱めです。
黒鏡筒と呼ばれる新しめの個体だと、コーティング技術が向上したことで逆光時にもコントラストが比較的高く出ます。
元々使用されていたレンジファインダーカメラの場合、ライカやニコンのほとんどのカメラはシャッター幕が布製で、カメラを直接太陽に向けるのはシャッター幕が燃えてしまう可能性から、いわば禁忌とされていました。ミラーレス一眼でも長時間向け続けているとセンサーに影響を及ぼす可能性がありますが、レンジファインダーのそれと比べると格段にリスクが下がりました。このレンズの新たな可能性に挑戦することが簡単になります。
まとめ
85mmということで、標準画角の50mmと比較すると数歩寄ったような距離感となります。
構図のある一点、主題を強力に引き寄せる解像力と大きなボケから、今回のような撮影だけでなく85mmといえばポートレートにも向いたレンズです。50mm近辺のオールドレンズに触れた方の次の選択肢として、歴史に名を刻むこの銀色の重厚なレンズは皆様をまた新たな世界へ導いてくれるでしょう。
個性豊かなオールドレンズと、選択肢の豊富なZマウントボディたち。
是非あなただけの“ベストコンビ”を探してみてはいかがでしょうか。
次回もお楽しみに。
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ニコンSマウント/コンタックスCマウントはこちらのアダプターが使用できます。
ライカL39スクリュー用アダプターはこちらです。