
レンズを選ぶことは、その旅で何を見るか決めることだと思っています。
画角、サイズ、質感。どのレンズを持っていくかで、自然と目に留まるものや、足を止める距離が変わっていくからです。
今回持っていったのは、SIGMA Iシリーズの「Contemporary 90mm F2.8 DG DN」です。このシリーズはオールメタルボディを採用したフルサイズ対応の単焦点レンズですが、驚くほどコンパクトで旅行には最高の相棒です。個人的に、このレンズは実際に使ってみて本当に「名玉」だと思いました。ピント面はシャープなのに硬すぎず、背景も自然に整理してくれる。風景でもスナップでも、ちょっとした瞬間を安心して託せる一本です。しかも持ち歩きやすいので、旅先でも気負わずシャッターを切れます。
このレンズの描写を最大限に活かすため、組み合わせたのが「SONY α7C R」でした。約6100万画素の高解像度を備えながら、ボディは非常にコンパクト。重さは本体が約515g、レンズの295gを合わせても約810gにしかなりません。高画素機とは思えないほど軽快に持ち歩くことができ、満足感の高い組み合わせになりました。90mmという焦点距離は、広角や標準レンズに比べれば決して「万能」ではありません。しかし、その少し離れた距離感があるからこそ、自然と丁寧なフレーミングを意識するようになるのです。

今回はフェス遠征のため、名古屋へ向かいました。今回は久しぶりの一人旅ということもあり、御朱印巡りも兼ねて観光へ。まず訪れたのは、名古屋駅からほど近い場所にある「上知我麻神社」です。
ここは熱田神宮の摂社で、商売繁盛の神様として古くから信仰されている神社です。街のすぐそばに位置しているとは思えないほど、境内には静かで落ち着いた空気が流れていました。
90mmという画角で社殿を正面から捉えると、広角レンズで撮るときとはまた違う、凛とした佇まいに見えるような気がします。


境内を歩いていると、鶏に遭遇しました。この鶏は「神鶏(しんけい)」として大切にされているようで、見かけると幸運や縁起が良いと言われているそうです。
放し飼いにされていましたが、木々の間で休んでいたり、駐車場の花壇で足を伸ばしてくつろいでいたりと、色々な姿を見ることができました。かなり近づいても逃げることはなく、レンズの最短撮影距離である50cmまでしっかり寄ることができました。
90mmという焦点距離はこうした距離感の被写体にちょうど良く、近づきすぎることなく自然な大きさで捉えられます。また少し離れた位置からでも、背景を含めたいい感じの画を撮れるのが使いやすい点だと感じました。
気がついたら、かなりの時間鶏を撮り続けていましたが、特に羽の色が印象的でした。名古屋コーチンという種類らしいのですが、赤い鶏冠(とさか)や、光の当たり方で変わる羽の色が、高解像なα7C Rのおかげでディティールまでしっかり残って、綺麗な色のまま写し出してくれました。

梅の花も咲き始めていてもうすぐ冬が終わるのだなと実感します。SIGMAのレンズが出すコントラストの高い色味は個人的に結構好みで、F2.8の出す背景のボケも相まってSIGMAらしさが良く出ている気がします。

普段私が使うスナップレンズは、万能に使える35mmを選びがちです。多少広めではありますが、目で見たままに近い画角で、だいたい何でも撮れてしまう扱いやすさがあります。迷いなくシャッターを切れる安心感は、やはり35mmならではの良さです。
しかし、今回は90mm1本だけでの旅。例えば寺社仏閣のようなスケールのある建築物に対しても、35mmなら全体を収めたくなるところですが、90mmでは自然とどこかを「切り抜く」視点になります。
その分重なり合う瓦の規則正しさや、どっしりとした木造の柱、細やかな装飾といった「構造の美しさ」が強調され、建物の持つ壮大さがより濃く伝わってくるように感じました。また、90mm特有の圧縮効果によって奥行きがぎゅっと凝縮され、実際以上に密度の高い画に仕上がります。
広く写すだけでなくあえて切り取る。今回の旅で感じた90mmの魅力は、まさにそこにあったのだと思います。

もう少し寄って撮りたいと感じるときはAPS-Cクロップ機能を使います。元々高画素のボディと組み合わせているので、画素が多少減っても十分。人が多くても、狙ったうさぎだけをすっと切り取れるのがありがたいところです。
ここはうさぎ神社とも呼ばれる 三輪神社。縁結びの神様、大物主神(大国主神)をお祀りしています。
境内には本当にたくさんのうさぎの置物があって、大きいものから手のひらサイズまでさまざま。ひとつひとつ表情が違うので、つい足を止めて見入ってしまいます。推し活の場としても有名なので写真を撮る人、お守りを選ぶ人、なでうさぎにそっと触れる人と、とにかく人が多くて思った以上のにぎわいを見せていました。
それでもどこかやわらかい雰囲気があって、うさぎのおかげなのか不思議と落ち着きます。レンズ越しに眺めながら、どの子を主役にしようか少し迷う時間もまた楽しいひとときでした。

帰る時間が迫ってきたので、名古屋駅へと戻ります。現代的な建築物を撮っていても、改めて90mmという画角の良さを感じました。高層ビルを見上げたとき、90mmは余計な情報を整理して、建物の構造美だけを真っ直ぐに映し出してくれます。広角レンズなら「風景」として写る光景も、中望遠を使うことで、ガラス面の連なりや光の反射といったディティールを主役にして写し取ることができました。
今回の旅行を通じて感じたのは、90mmは意外なほど使いやすく、自分にしっくりくる写り方をするなということです。本当に惹かれた部分だけを凝縮して写せる。ズームレンズ好きとしては「引きができない」不便さを感じる瞬間もありましたが、その試行錯誤のプロセスが、旅という体験をより豊かなものにしてくれた気がします。
そしてその描写を確実に支えてくれたのがα7CRの存在です。コンパクトでありながら圧倒的な解像力を持つことで、レンズの性能を余すことなく引き出し、旅先で出会った光景をそのままの密度で残すことができました。
高性能な機材でありながら、決して主張しすぎることなくこちらの意図に確実に応えてくれる。今回の旅は、この組み合わせの完成度の高さを改めて実感する時間になりました。また次の旅でも、このSIGMAのレンズを連れ出したいと強く感じています。
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