週刊カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】『キヤノン 蛍石とUDレンズ』
┃週刊カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】『キヤノン 蛍石とUDレンズ』
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~こちらの記事は2010年04月22日に掲載されたものに加筆、修正しております。~
キヤノンの交換レンズの中に「Lレンズ」と呼ばれるレンズがあります。
Lは “Luxury” (贅沢な) を意味し、キヤノンが誇る光学技術の粋を集めた高級レンズになります。
赤いラインが施された外観には高級感が漂い、今なお羨望と信頼を集める人気の高いレンズです。
今回は、「蛍石レンズ」「UD/スーパーUDレンズ」に焦点をあててご紹介します。
◆蛍石レンズ◆
ズームレンズや焦点距離が長いレンズほど色収差が起きやすいため、色収差が小さいレンズを使うことが有効とされてきました。
数々のレンズの中で、蛍石は軽量で屈折率が弱く、幅広い波長の波を透過し、色収差が非常に小さいという特異な性質をもっています。
また、通常の光学ガラスと組み合わせることで、色収差の少ない光学レンズを作ることができます。
カメラ用レンズとして使用できる大型で高純度の無色透明な天然蛍石は非常に希少で、
1800年代では顕微鏡レンズとしてしか使用されていませんでした。
そこで、キヤノンは人工蛍石の開発に挑戦。
1969年には、写真用レンズとして世界で初めて人工蛍石の実用化に成功します。
しかし、光学材料としての蛍石の結晶は、非常に傷つきやすく研磨に時間がかかる為、量産が非常に難しいレンズの一つでもありました。
蛍石レンズが組み込まれているLレンズは、ごく一部の望遠レンズだけになりますが、
その描写力は世界中のフォトグラファーから高い支持を集めています。
☆★天然蛍石の希少性★☆
今現在でも、天然無色透明の蛍石は、ごく稀に研究施設などでしか見ることができないそうです。
完全に無傷の天然蛍石は、博物館に収蔵されるほど希少な鉱物だそうです。
蛍石が使用されているレンズ(現行新品モデル)
EF70-200mm F2.8L IS II USM
EF70-200mm F4L IS USM
EF70-200mm F4L USM
EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM(2014年12月下旬発売予定)
EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×
EF200mm F2L IS USM
EF300mm F2.8L IS II USM
EF400mm F2.8L IS II USM
EF500mm F4L IS II USM
EF600mm F4L IS II USM
EF800mm F5.6L IS USM
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蛍石のすぐれた性能をより多くのレンズへ普及させるべく、同様の性能をもつ光学ガラスが開発されました。それがUDレンズです。
UDレンズとは、色のにじみの少ない低分散、異常分散レンズを指します。(ニコンではEDレンズと呼びます)
普通のガラスは光の波長(色)によって屈折率が異なるため、その全波長をできるだけ同じ屈折率に近づけているのがUDレンズです。
カメラ用のほか、舞台用スポットライトなどにも多く使われます。
スポットライトで例えた場合、丸い光の一番外側は虹のように何色かが帯になって見えます。
カメラのレンズでも同じ現象が起こり、赤にはピントが合っても紫にはピントが合わない状態になります。
UDレンズのような異常分散レンズは、それを最小限に食い止めることが出来るため鮮鋭な写真になります。
低分散の性能がもっとも優れているのが蛍石レンズですが、UDレンズでも2枚使用することで、蛍石レンズ1枚に匹敵する性能を備えています。
1993年には、UDレンズの光学性能を大幅に向上させたスーパーUDレンズも開発されました。
“Luxury”な高級レンズは多くのカメラマンの目になり、素晴らしい写真を今この瞬間も撮影しているに違いありません。
【UD/スーパーUDレンズを使用した単焦点レンズ】
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【UD/スーパーUDレンズを使用した望遠ズームレンズ】
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————- Canon EF70-200mm F2.8L IS II USM作例写真 ————-
《伝説の蛍石レンズ Canono FD300mm F2.8 S.S.C.フローライト》
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