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銀塩写真列伝 FUJIFILM ネオパン 100 ACROS 編

銀塩写真列伝 FUJIFILM ネオパン 100 ACROS 編

皆様、フィルムはお好きでしょうか。

筆者はフィルム写真を始めたとき、このフィルムはどんな写りをするのだろう。と雑誌やネット記事等いろんなものを読み漁りました。
好みのものを見つけては試写し、前回使ったものとここが違うと一喜一憂したりと大変楽しかった覚えがあります。
今回の「銀塩写真列伝」ではそんなフィルムに焦点を当て、各フィルムの特徴などを作例とともに紹介し、フィルム選びの助けとなることを目指しています。

世の中には期限の切れたフィルムを含めたくさんのフィルムがありますが、今回の連載ではマップカメラでお求めいただけるものに焦点を当てご紹介してゆきたいと思います。

例年はシルバーウィークでにぎわう頃ですが、今年は4連休となりました。
今年は一味違った過ごし方になるかと思いますが、フィルム入門の方も、すでにお使いの方も楽しんでいただければ幸いです。

 

・・・

 

 

さて、今回はモノクロネガフィルム、「FUJIFILM ネオパン 100 ACROS」をご紹介します。

昨年の秋、2019年11月の22日にFUJIFILM ネオパン 100 ACROS IIが発売されました。
デジタルカメラが主流であるこの時代にはなんとも嬉しいニュースだったことを覚えています。

あれから、はや10ヶ月ほどが経ちました。
今年は誕生日に現像用品一式を贈っていただくという稀有な体験をしました。せっかくなので自家現像にて楽しみたいと思います。
過去に一度だけ現像したことがありますが、あのコントラスト、シャープさ、表現力は忘れられるはずもありません。

今回使用した機材は「Argus CR-1」M42マウントの一眼レフフィルムカメラです。
おそらくどこかのメーカーのOEM製品ですが、この艶のあるブラック、飛び出たペンタ部が、いかにも「カメラ」という感じがしてとても好きです。
レンズは「PENTAX SMC Takumar 135mm F3.5」を使用しました。
家を出てから思いましたが、このレンズでフィルムの良さは発揮しきれるのでしょうか…?

さてそれでは写真を確認していきましょう。
生憎の曇天、からの夕焼け、からの夕立、という秋らしい天候に見舞われましたが何とか撮り切ることができました。

レンズの特性上、細部まで細密に描写しきった画は期待していませんでしたが、思っていたよりもしゃっきり写っています。
これもフィルムのおかげなのでしょうか、同じレンズをミラーレスカメラにつけて撮った写真よりも
シャープに映っているような気がします。もちろんフィルム自体の粒状感も少なく、現実世界から彩度を抜いたように感ぜられますね。
人間の目で見るよりも鮮明に写った写真は絵画のように見えてしまうことが私にはありますが、
今回の組み合わせで撮った写真はなんとも丁度いい世界の見せ方をしてくれます。

逆光で光を入れるとさすがに少し線が甘くなり、ふわりと緩くなった輪郭を見せてくれます。
ただ柔らかい描写の写真というだけでなく、ACROS IIの持つ諧調の豊富さが、線の溶け方さえも滑らかに見えるように助けてくれています。
デジタル高画素機を持っていますが、ソフトなオールドレンズのボケはじめの個所に画が浮くような違和感を覚える時があり、
フィルムではそれを感じる必要がないのも好きなところです。

非常に評判のいいACROS IIですが、色味についてはいかがでしょうか。
モノクロ写真における“色”の概念はなんとも難しく正直私もどう語ったものかという感じですが、現像を終えた後の率直な感想としては、すっきりとしていて尚且つ存在感のある色、だと感じました。
おそらく、ACROSらしさともいえるこのシャープネスと、今回の撮影機材とマッチした結果のコントラストが起因していると思います。
フィルム特有の粒状感が少ないことも“すっきり”とした印象に繋がっているのでしょう。

よく語られる表現として「モノクロから感じられる彩度のある色」というようなものがありますが、
むしろACROS IIからは、彩度の無い景色をそのままストンと鵜呑みにできる力を感じます。
彩度のある景色を見ながら撮影しているので、記憶の中には目に見えたままの世界がインプットされている筈なのですが、
モノクロに仕上がった景色を見てもその光景を想起しにくい印象を受けました。
それはまるで色の無い別の世界から取ってきたような写真のようです。

勿論感じ方は人それぞれ、現像の仕方は人それぞれ、写り方もカメラそれぞれなので受ける印象は全く異なるかもしれませんが。
写真を見て“撮影した時間を思い出す”のではなく、写真を見て“もう一つの世界から持ってきた感じがする”のでとてもわくわくします。
これを知ってしまったので、また現像が楽しみで仕方なくなってしまいそうです。

陽が間もなく沈みます。
過ごしやすい気候となってきましたが、空にはまだ積乱雲が発達しており「9月だなあ」と感じます。
巻積雲と秋風に手を振る季節はまだ少し先のようで、今はただ手をこまねいている時期、といったところでしょうか。
窓を開けて虫の声を聞きながらじゃばじゃばと現像タンクを揺するのんびりとした時間がゆっくりと流れました。
6月の末から日没はどんどん早くなっているというのに、そう感じるのは今になってようやくです。

陰も陽も分け隔てなく、調和させて写すことのできるいいフィルムでした。
今回少し心配していたレンズとの相性も問題なく、少し柔らかめの写りではありますが、フィルムがうまくカバーしてくれたおかげでまとまりのある一枚一枚になったと思います。
すっかり日も落ち、空の明るさを頼りに帰路につきます。
この後、大粒のにわか雨に降られてしまうのはまた別のお話…。

・・・

今回ご紹介したACROS II現像時の薬液などの処方をおまけとしてご紹介致します。
なんとも大雑把に現像しているので、毎回ちょっと違う結果になってしまいます。

◆薬液(液温26℃)
現像:富士フイルム ミクロファイン(原液)
停止:大洋製薬 クエン酸
定着:富士フイルム スーパーフジフィックス(1:2)
水切り材:富士フイルム ドライウェル

◆時間
前浴:1分 なんとなく、いきなり薬液を入れるのが怖くて1回目から癖で続けいています。
現像;8分 液温が高かったので気持ち早めに切り上げました。
停止:2分 1分でもいいと思います。お茶飲んでたら2分経っていました。
定着:5分 定着後10分ほど洗浄し、ドライウェルに浸けて終了です。

液温は調節せずに水道水の温度のままです…お腹が空いていたので…調節を省いてしまいました。
今回ばかりは像が出たので良しとしましょう。

 

[ Category:FUJIFILM | 掲載日時:20年09月19日 19時15分 ]

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