【Leica】M3と歩む 5
これは筆者が様々な不具合を抱えたM3を購入し、のんびりと歩いていくお話です。
修理からM3が戻ってきました。そして、ズミクロンを買いました。
M3と一緒に買う最初の一本で最後までズミクロンとヘリアーと迷っていましたが、描写の面白さに惹かれてヘリアーを手に取りました。
「ちゃんと写したいならズミクロンで良い」と常々言っている筆者ですが、具体的にどの世代のズミクロンがオススメというのはあまりありません。
50mmで言えば、沈胴・固定・DRと様々なバリエーションがある1st、収差と端正さのバランスが良い2nd、コントラストの高い3rd、構成は3rdと同じながらコーティングが良くなったのか解像度が増した4th(現行)、圧倒的な描写力と硬さのアポズミクロン。
どれを選んでも間違いのない描写をしてくれます。
そんな中筆者が買ったのはLマウントの沈胴モデル、通称沈ズミです。
この世代の沈胴レンズは鏡筒にグラつきがあったり、デジタル機ではご自慢の沈胴をできないなど様々な制限がありますが、買うなら絶対に1stだと心に決めていました。
今回はそんな新しい相棒、Leica Summicron L50mm F2沈胴と歩んでみました。
Kodak T-MAX100,Leica M3,Leica Summicron L50mm F2
温泉が好きです。
蒸し暑い夏もようやく終わり、ようやく温泉を楽しめる季節がやってきました。
本格的に寒くなる前にと東北へ湯治に行ってきました。
T-MAXの微粒子が濛々と立ち上る湯気をうまく表現してくれています。
Kodak T-MAX100,Leica M3,Leica Summicron L50mm F2
筆者が買った沈ズミはシリアル92万番台のもので、トリウムという放射性物質を含んだレンズを用いたと言われる一本です。
通称トリウムズミクロンはその他のアトムレンズ(放射性物質を含むガラスが使われたレンズの総称)と同様に黄変することが多く、モノクロで使うと良いと言われています。
私の個体はまだそんなに黄変が進んでいませんが、せっかくならということで今回もKodak T-MAX100を使用。
他の沈ズミも何本か使ったことがありますが、その中でも最高の解像力です。中央部はバッキバキに解像し、周辺部は絞っても若干の収差が残ります。
“よくできたオールドレンズ”のお手本のような一本です。
Kodak T-MAX100,Leica M3,Leica Summicron L50mm F2
フードを外し逆光下での一枚。
フレアで全体的にやさしい印象に。
先ほどのバキバキとした写りとは別物の、ふんわりとした柔和な一枚になってくれました。
Kodak T-MAX100,Leica M3,Leica Summicron L50mm F2
アルバムを見返していると東北の写真が多く、数えてみたらこの1年で7回ほど行っていました。
東北に何があるのか、と聞かれると困ってしまうのですが、東北には東北の空気があります。
ビルが少なく空が広い、酸素濃度が高く空気が澄んでいる、土の匂いがする。
たったそれだけの為に東北へ行き、たった半日で帰ってくることもしばしば。
畑一面に蕎麦のような花が咲き乱れており、私が毎晩頭を任せている蕎麦殻枕はこういった風景からやってくるのかと思いました。
日光を受け輝く(恐らく)蕎麦の花、アンダーが粘ってくれたおかげで潰れずに残っている山景、トラックの轍状に草がはげた農道、これが私が愛する東北です。
Kodak T-MAX100,Leica M3,Leica Summicron L50mm F2
今回最も気に入っている一枚です。
木目の質感表現、陰影が美しいです。
また、欄干が四隅へいくほどボケていき球面収差が残っているのを確認できます。
収差の歴史は光学設計者の戦いの歴史、このレンズが開発された当時は持てる技術全てを投じてもこれが限度だったのではないでしょうか。
今回は戻ってきたM3に新しい相棒、Leica Summicron L50mm F2を歩んでみました。
修理から戻ってきたM3は大変調子が良く、毎晩空シャッターを切ったり休みの日はフィルムも入れずに持ち歩く程。
次は久しぶりにヘリアーを付けて出かけようと思います。