【マップカメラ情報】【マップカメラ写真週間2012】ロックアイコンの素顔 写真集『SIXTIES』
「60年代」と聞いてみなさんは何を連想するでしょうか?
私は迷わず「ロック!」と即答します。
そんな私が紹介する写真集は、その名もずばり「SIXTIES」。
60年代の英米ロックミュージシャン達を撮影した写真が満載の写真集です。
この写真集に収められたミュージシャン達の写真はすべてある一人の写真家によって撮影されています。
その写真家はLinda McCartney。
Paul McCartneyの最初の妻だった女性です。
彼女は大学在学中に地域のカルチャースクールで写真のコースを2回(たったの!)受講しました。
その時にはカメラさえ持っていなかった彼女は、そこで写真への情熱を持つようになりますが、大学卒業後は地元のNew Yorkに戻り雑誌社で受付の仕事をしていました。
そこで転機が訪れます。
ある日、彼女の勤める雑誌社にThe Rolling Stonesから新作発表会への招待状が送られてきました。
彼女は、「うちの雑誌では取り上げないだろう」と招待状を勝手に持ち出し、カメラを手に発表会の場へ出向いてしまいます。
その時に撮影したThe Rolling Stonesの写真が世に出たことで、彼女の写真家としてのキャリアが始まりました。
幼い頃から音楽が大好きだった彼女は、ミュージシャン達を被写体に次々と撮影していきました。
普段、「仕事」としてフラッシュやライトで照らされた状況でポーズを決めて撮影されてきたミュージシャン達は、自然光だけを使いカジュアルな態度で接しながら小さなカメラで撮影をする彼女のスタイルに「偶像」ではない人間としての「自分自身」の姿を見せていき、その姿を捉えた彼女の写真は評価を高めていきました。
あるミュージシャンの「Lindaはカメラという楽器を持ったバンドメンバーだ」という言葉は、彼女に対しての何よりの賛辞であるとともに、彼女の写真の本質を捉えていると思います。
そんな彼女の「楽器」は、Nikon F。
当時の彼女を撮った写真には、よくNikon Fが一緒に写っていました。
Nikon Fはこちら。
その後、Fillmore EastやRolling Stone誌で専属カメラマンを務めた彼女は、69年にPaul McCartneyと結婚した後、妻や母として家庭を守りながら夫のバンドWingsのメンバーにもなったため、仕事として写真を撮ることはなくなります。
それでも、1998年に亡くなるまで、彼女の右手にはいつもカメラが握られていました。
The Doors、The Who、Jimi Hendrix、Bob Dylan、The Kinks、Cream、Otis Redding、The Yardbirds、Aretha Franklin、Buffalo Springfield、The Animals、The Beach Boys、The Rolling Stones・・・そしてThe Beatles。
いまや「伝説」となっているミュージシャン達の「偶像」としての姿ではなく、「人間」としての魅力が伝わってくる写真になっていて、それがこの写真集を単なる「ロックスターの写真集」ではない特別なものにしています。
60年代のロックが好きな方はもちろん、ポートレート撮影をする方にもおすすめの一冊です。