カメラを始めると誰もが感じるのではないでしょうか。
こんなにもお金がかかるのかと…
もちろんスポーツや楽器を始めたりする場合も同様ですが、しかしながらシンプルに安いに越したことはないというのが素直な気持ちです。
そんな中で2万円以内で購入が可能なお財布にとても優しいレンズがSONY Eマウントの中で3本出ているのです。
左から順に
・AstrHori(アストロリ) 50mm F2.0
・中一光学(ちゅういちこうがく) CREATOR 85mm F2
・銘匠光学 (めいしょうこうがく) TTArtisan 50mm F2
まずは現在の価格をチェックしていきましょう。
まず今回ご紹介するレンズの共通点として、マニュアルフォーカスの単焦点レンズで電子接点非搭載のレンズという所があります。
なのでフォーカスリングを操作した際に自動でピント拡大が行われたり、写真データにF値などのレンズ情報が残ったりしませんので、マウントアダプター不要のオールドレンズを装着しているようなイメージを持っておくといいかもしれません。
そして、絞りがF2という明るいレンズという共通点もありますので、夜間での撮影もISO感度を下げて撮影できるメリットがあります。
では今回は以下の順番で徹底比較していきます。
・発売時期
・外観、携帯性
・フォーカスリング
・絞りリング
・解像度
・周辺減光
・逆光耐性
・光芒、光条
・総評
まずは簡単にまとめたスペック表を作成いたしましたので参考にしてみてください。
今回は85mm F2のレンズを利用する兼ね合いでフロントヘビーになる可能性も考えグリップ感もよく、解像度比較のために高画素でありながら、出来る限り安価で抑えられるボディとしてSONY α7RⅡを使い作例を撮ってきました。
そして、電子接点がないためピント拡大をボタンカスタマイズで割り当てて利用する事をオススメします。
ちなみに筆者は動画撮影ボタンにピント拡大を割り当てました。
では早速徹底比較を始めていきましょう。
【発売時期】
まず発売時期についてですが一点お伝えしておきたいことがございます。
「AstrHori 50mm F2.0(2024年2月)」と「銘匠光学 TTArtisan 50mm F2(2022年7月)」に関してはミラーレス一眼用レンズとして発売したものなので発売時期に相違はないのですが、「中一光学 CREATOR 85mm F2(2017年9月)」に関しては元々デジタル一眼レフカメラ用に販売されたレンズとなっており正式には2014年に発表されたレンズをミラーレスのソニーEマウント用にマウント変更したモデルとなります。
なので、設計としては10年近く前の物であると考えて利用して頂くと良いかと思います。
ただ写りに関してはゆるふわ感をいい意味で味わえますので、後ほど深堀りしていきたいと思います。
【外観、携帯性】
大きさに関しては見ての通り三兄弟といったところです。
TTArtisan 50mm F2は本当にコンパクトなのでレンズキャップ代わりに装着しても良いのではないかと感じるほどです。
それと比べてAstrHori 50mm F2.0はとてもちょうどいい大きさでフォーカスリングや絞りリングがボディから少し距離があるため撮影時も操作する左手のスペースに余裕があり利用勝手の良さを感じました
CREATOR 85mm F2に関しては絞りリングの下はマウントアダプターのようなイメージなので長さが出ておりフロントヘビー感は否めません。
しかし、両手で構えた際にフォーカスリングがレンズの先の方にあるため、自然とレンズ前方側で支えるようになりバランスの良いフォームで構えることができ撮影中に重さで苦になることはありませんでした。
【フォーカスリング】
フォーカス時にかなり重要になってくるフォーカスリングの感覚としてはTTArtisan 50mm F2がかなり軽く、CREATOR 85mm F2とAstrHori 50mm F2.0は少し重みがあります。
TTArtisan 50mm F2は絞りリングとフォーカスリングの距離が近いため絞り操作時にフォーカスリングに触れてしまいピント位置がズレることが何度かありました。
今回同時に3本持ち歩き撮影していた兼ね合いで上手く順応できておりませんでしたが慣れてしまえば問題なく操作できるようになるかと思います。
CREATOR 85mm F2とAstrHori 50mm F2.0はシンプルに操作がしやすく、フォーカスリングの重みも丁度良くピントの追い込みも行いやすかった印象です。
【絞りリング】
AstrHori 50mm F2.0は特徴的な絞りリングで回転方向が他のレンズと逆の回転方向となっており、更にクリック感のない無段階式を採用しており動画撮影時に絞りリングの操作音を気にする必要がありません。
しかしノールックで絞り操作をしているとクリニック感がないことにより今の絞り状態が把握しにくいという難点もありますのでこれも好みが分かれるポイントになりそうです。
CREATOR 85mm F2に関しては一段ずつのクリック有の絞りリングとなっており、他のレンズとは違い絞りリングが手前側についています。
昨今のレンズのように1/3段ずつの絞り調整はできませんが、潔い分現在の絞り値の確認が感覚的に行いやすいメリットもあります。
TTArtisan 50mm F2はF2~5.6の間のみ1/2段ずつ絞り調整が可能なクリック有の絞りリングとなっておりますが、ダントツでリング幅が細いので操作性に関しては好みが分かれそうです。
ただ細かい絞り調整ができるおかげで微妙な被写界深度の調整ができるメリットもあります。
【解像力】
解像力に関してはそれぞれのレンズに特徴が見られましたので、解像力と特徴をお伝えいたします。
AstrHori(アストロリ) 50mm F2.0
最新の光学設計であるという点からも解像度は一番高く、F2からピントの山が掴みやすく今回の3点の中では断トツだと感じました。
当レンズの特徴としてレンズ名でF2と言いながらF1.7(レンズの絞り表記の右の点の部分)が最大絞りとなっており少し柔らかい印象の撮影も可能となっているのでオールドレンズのような写りも楽しめるようになっております。
銘匠光学 (めいしょうこうがく) TTArtisan 50mm F2
F2の絞り開放から描写力が高めですが1/2段絞るだけでも描写力は格段に上がる印象です。
小さなレンズでありながら必要十分な描写力を持っているのでお散歩レンズとしての相性も抜群です
中一光学(ちゅういちこうがく) CREATOR 85mm F2
F2では柔らかい印象となっておりF4まで絞るとかなり解像力が上がります。
ポートレート撮影をされてる方であればいい意味で写りすぎないレンズなのでレタッチの手間を省いてくれる省エネレンズとも言えるでしょう。
今回絞り開放時の解像力は甘いという結果となりましたが、このゆるふわ感が欲しい方にはうってつけのレンズとなります。
【周辺減光】
上の写真ではすべて絞り開放で撮影したものです。
周辺減光に関してはどのレンズもしっかり出ますが、どのレンズもF4くらいまで絞ると目立たなくなってきます。
しかしこの周辺減光のおかげで中心部に置いた被写体に注目を集めることができますので日の丸構図などで効果的に活用して頂くと良いと思います。
昨今はカメラ内で周辺減光補正や色収差補正をかけることが当たり前になっていますが、あえてレンズの本来の味を活かす方向性で考えると新たな写真の楽しみ方に繋がるのではないでしょうか。
あと周辺減光とは別の余談になるのですが、何故かTTArtisan 50mm F2のみ電子先幕シャッターで高速シャッターを撮影すると下半分側が暗くなるという事象が発生します。(α1やα7CⅡでも確認済み)
ただ電子先幕シャッターを「切」にして完全なメカシャッターで利用するか電子シャッターを利用すると解消されますのでご安心ください。
更に下の写真のように電子先幕シャッターを高速シャッターで利用すると起きる玉ボケの欠けも発生しませんので一石二鳥です。
【逆光耐性】
結論から申し上げると逆光耐性は『AstrHori 50mm F2.0が圧倒的に強く、銘匠光学 TTArtisan 50mm F2が弱い、中一光学 CREATOR 85mm F2がかなり弱い』という状況でした。
AstrHori 50mm F2.0は逆光でもコントラストが低くなることなくしっかり描写してくれているので現代レンズのコーティング技術がしっかりと施されている安心感の高いハイコストパフォーマンスレンズです。
銘匠光学 TTArtisan 50mm F2は強めの光が当たるとコントラストが低くなりオールドレンズのようなフワッとした写りをしますが、ピント面の芯はしっかり残しているのでまとまりの良い画を写し出してくれます。
中一光学 CREATOR 85mm F2に関しては写真をご覧頂くと明らかですが、フレアゴーストがかなり出ており、虹色のリングゴーストも姿を見せます。
しかしこういった写り方をする現代レンズは無いと言ってもいい状況なのでこういったダイナミックな表現をされたい方には持ってこいのレンズです。
今回はJPEG撮って出しでお届けしておりますが、現像でコントラストを足して整えてあげると画もまとまってくれますので特殊効果として是非ご活用ください。
【光芒・光条】
まず基本設定として「F11、SS1/1000、ISO100」にして、光芒の出方と逆光耐性も一緒に確認できるようにしました。
写真を見ると光芒の出方にも個性がある事が分かります。
絞り羽根が偶数枚なので同じ本数の光芒が現れる仕組みとなっております。(奇数枚の場合は倍の本数になる。)
AstrHori 50mm F2.0はきれいなバランスの良い光芒で、逆光耐性も素晴らしいため風景や夜景などでも実力を発揮してくれそうです。
中一光学 CREATOR 85mm F2と銘匠光学 TTArtisan 50mm F2に関しては出方に癖があり妙に長い光芒が現れます。
絞り羽根の作りの違いで起きている事象ですが、個人の好みに合わせてレンズ選びの一つの要素としてお考え下さい。
【総評】
ー驚異的なコストパフォーマンスの高さを見せつけたAstrHori 50mm F2.0ー
「携帯性」「操作性」「解像力」「逆光耐性」この全てがハイクオリティでありながら低価格を実現した当レンズは自信をもってオススメしたいと思える実力派レンズです。
筆者個人の主観ですが一番撮影欲を掻き立てられまして、作例が一番多かったという事実もあります。
絞りリングのクリックが無いため動画撮影時にはクリック音が入らない、滑らかな絞り操作が可能というところでかなり有効に働いてくれます。
ただ写真利用の場合はクリック感で絞り値の判断ができないため絞り値を目視確認する必要がありますのでひと手間増えてしまいます。
しかしそういったひと手間もマニュアルフォーカスレンズの醍醐味ですのでいい意味で楽しめるレンズだと感じました。
ー柔らかいボケ感とオールドレンズさを残した中一光学 CREATOR 85mm F2ー
歪みの少ない焦点距離でもある中望遠レンズでポートレートやスナップを撮ってみると、開放絞りF2による柔らかいボケや大きな玉ボケなどの普段見えている景色とは違う感覚を2万円以下で体験できる素晴らしいレンズです。
逆光耐性は正直弱いという事実がありますが逆にそれを活かした撮影をすると面白い効果を得られますので奥の手として持っておくのも良案かと思います。
ユーザービリティとしても絞りリング、フォーカスリングが大きく、そして間隔もしっかり空いているので操作性の良さも当レンズの良さだと使用していて感じました。
ー圧倒的なコンパクトさと描写力を兼ね備えた銘匠光学 TTArtisan 50mm F2ー
ボディキャップの代わりにつけておいても問題がないと感じるほどの長さ約3.5cm、重さ約200gという軽量コンパクトを実現しておきながら、描写力はしっかりとあるという安心感の高いレンズです。
レンズをつけている事を忘れてしまうほどなのでの携帯性なので、いつでもカバンに忍ばせておけるお散歩レンズとしても最適です。
小さいが故に絞りリングがかなり細くはなっておりますが、シンプルに慣れてしまえばこっちのものですので問題は特にないかと思います。
あとは高速シャッター時に露光ムラが大きく出ますので電子先幕シャッターを「切」にする事だけお忘れないようご注意下さい。
ここまでたくさんの作例と共にご紹介してきましたがいかがでしょうか。
オートフォーカスに慣れている方も速写に拘らずじっくりと撮影するといういつもと違う刺激を得ることができますので新しい視点の作品を生み出す事にも繋がるのではないでしょうか。
それぞれのレンズに個性がありますので現在レンズでは味わえない描写も是非体感してみて下さい。
更に今回ご紹介したレンズに関しては様々なマウントで提供されておりますので今回の記事で気になった方は是非チェックしてみて頂ければと思います。
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