【私のお気に入り】復刻版・Nikon ニコニコニュース!!
日頃よりご愛顧いただき誠にありがとうございます。
お客様に支えていただき、MapCameraは今年で25周年を迎えることができました。
一店員からの視点とはなりますが、四半世紀もの間ですと、我々もさることながら、カメラという業界そのものも大きく変化してきたと感じます。
創業当時、時代はフィルムカメラ全盛の時代でしたが、時の移ろいと共に、覇権となるようなカメラも日々変わっていき、デジタル一眼レフカメラへ、そして、今はミラーレスカメラが市場を賑わすこととなりました。
こと、私が愛してやまいNikonに目を向けてもその流れは同様で、
当初、レンジファインダーから始まったカメラ事業も、一眼レフの台頭、デジタル化、そして昨年にはミラーレスカメラ市場に大きく乗り出しました。
長きに渡る一眼レフ用レンズマウント・Fマウントと共に、新たな時代を牽引していく新規格・Zマウントを引っさげ、昨今のカメラ業界に一石を投じたのです。
新規格であるZマウントは、様々な最新技術の投入により、「Nikonらしい」ミラーレスカメラとしての確たるポジションを得ました。
そして、ミラーレスカメラといえばショートフランジバックにおけるレンズマウントの垣根を越えた使用が可能な点も魅力の一つであり、実際にアダプターを介せば、往年のNIKKORレンズを組み合わせ、ある意味「純正」な組み合わせを楽しむことだって可能です。
今回はそんな使用について、中古カメラ販売店としての強みを活かし、実写も交えつつレポートをお届けできればと思います。
題して、「復刻版・Nikon ニコニコニュース」です。
※本文にて使用されるレンズや接続方法は、メーカーが推奨しているものではありません。無理な接続や使用は、ボディやレンズの信頼性・精度を著しく下げるものとなりますのでご注意ください。
NIKKORといえば、もっぱら135フィルム使用の一眼レフ用レンズとしての知名度が非常に高い事で知られていますが、もともとは品質が約束された日本光学製高級写真用レンズラインに銘打たれたものでした。
中には工業用や引き伸ばし用などの多少ニッチな物も存在しますが、今回スポットライトを当てるのは、一眼レフの台頭以前から製造されていたレンジファインダー(距離計連動式)カメラ用「ニコンSマウントレンズ」です。
ニコンSマウントは、基本仕様はツァイス・イコン製レンジファインダーカメラの要素を踏襲しているものです。
一つのレンズマウントながら、使用レンズタイプが二種類あり、ボディ内蔵のヘリコイドを使用する「内爪タイプ」、レンズ本体に内蔵されたヘリコイドを使用しピントを合わせる「外爪タイプ」があります。今回はそれらのレンズから計6本紹介させていただきます。
★内爪レンズを実際に装着したところ。レンズ本体にヘリコイドが内蔵されていないため、ピント合わせのためにヘリコイドが内蔵されたアダプターを用意する必要があります。現状直接ZマウントからSマウントへ接続するヘリコイド内蔵アダプターは発売されていないため、ライカMマウントアダプターを経由し、距離計連動が可能なニコンS-ライカM用のカプラーを用意しました。
★アダプターを介し電子接点のないレンズを使用する場合、あらかじめメニュー項目の中から「レンズ情報手動設定」を行っておく必要があります。この項目を設定しないと、ボディ内手振れ補正が機能しません。また、Ai・非Ai問わず、絞りをレンズ側に伝達する機構が無いため、EXIFに絞り情報は記録されません。
● W NIKKOR 2.8cm F3.5
オルソメター型4群6枚
デジタルカメラで使用していることが影響しているのかもしれませんが、比較的強い周辺減光が発生していることがわかります。
しかしながら、三枚目の作例を参照いただければ分かるとおり、周辺まで歪曲収差が非常に少ないです。
また、開放F値が(時代的には明るい部類ですが)少し抑え目なのもあり、開放から極端な描写の破綻は無い印象です。
ちなみに余談ですが、20mm台に乗ってくるSマウント用広角レンズはほとんどこのレンズが最広角になると言っても過言ではありません。理由は、これより広角な2.5cmF4のレンズはレンズ内ヘリコイドを動かすためにボディ側にギア機構が必要で、さらに広角な2.1cmF4は、希少価値が高く、中々手に入りませんし、後玉が大きくせり出しているため、Zマウントに装着するのはかなりの危険を伴うためです。
(ISO800 F3.5 SS1/6400)
(ISO800 F4 SS1/2500)
(ISO200 F5.6 SS1/400)
● W NIKKOR 3.5cm F1.8
変形ガウス型5群7枚
2.8cmと同様に周辺光量の低下が見られますが、比較すると穏やかな傾向です。また、変形ガウスタイプということもありますが、歪曲収差も目立たないようです。開放の状態だとコマ収差が顕著に現れる印象で、特に二枚目の作例では、周辺部の点光源で羽根を広げたようなフレアを見ることが出来ます。日中の描写もかなりやわらかい描写です。
(ISO100 F1.8 SS:1/640)
(ISO3200 F1/8 SS:1/25)
(ISO100 F2 SS:1/320)
● NIKKOR S 5cm F1.4(復刻)
ダブルガウス型4群7枚
2000年に復刻したS3ミレニアムモデルに付属していた復刻モデルです。描写性能はかなり良好で、開放だと少しやわらかく、絞り込むとカリカリに写すことができる「ニコン的」な二面性を楽しむことが出来ます。発色やボケ味も良好で、開放ではポートレートに、絞り込めば遠景に使用できるような、まさに求められている標準レンズとしての性能が、しっかりと組み込まれているようです。
(ISO160 F5.6 SS:1/20)
(ISO160 F11 SS:1/50)
(ISO100 F1.4 SS:1/1600)
(ISO100 F8 SS:1/640)
● NIKKOR P 8.5cm F2
ゾナー型3群5枚
LIFE誌の三木淳氏とダンカン氏の伝説で有名なレンズです。
テレゾナータイプのレンズ構成で、開放の描写は若干の甘さを残しますが、無段階的な美しいボケを楽しむことが出来、ポートレートには最適です。
ところで、多くのニコンSマウントレンズには、鏡筒の大部分に真鍮を採用したシルバーの「前期型」と、真鍮が軽金属に置き換わったブラックの「後期型」が存在します。無論、レンズ構成などは変動がないため、基本設計は同じなのですが、中には若干描写性能が向上しているものもあります。この8.5cm F2もその内の一つで、前期型は開放からもっとやわらかい描写傾向なのですが、後期型はある程度芯のある描写をします。これらは恐らくコーティングの違いなのではないか、と推察されます。
(ISO800 F2 SS:1/25)
(ISO1600 F2 SS:1/6400)
(ISO1600 F2 SS:1/800)
● NIKKOR P 10.5cm F2.5
ゾナー型3群5枚
8.5cm F2と同じく、典型的なテレゾナータイプのレンズ構成です。描写も8.5cm F2と同様に、やわらかく美しいボケ味ですが、開放からの描写はこちらの方がシャープな印象です。絞り込むとコントラストも向上し、より濃厚な描写になります。Sマウント用望遠レンズの定番と言っても過言ではありません。また、このレンズは市場での個体数が多く、描写性能の割には比較的低価格で手に入れることが可能です。
(ISO200 F2.5 SS:1/1250)
(ISO200 F8 SS:1/250)
(ISO800 F2.5 SS:1/800)
● NIKKOR Q 13.5cm F3.5
ゾナー型3群4枚
開放だとコントラストが若干低く、気持ちやわらかい描写をします。長焦点レンズにしてはコンパクトで軽量なことが魅力的です。しかし、レンジファインダーカメラで使いやすいかというとそういうわけではなく、Nikon SPや、外付けのファインダーを用いて撮影しなくてはなりませんでした。このレンズも市場では比較的安価に入手することが出来、Zなどの機種と組み合わせればお手軽に使用することが出来ます。そしてこの焦点距離ですと、やはりボディ内手振れ補正の恩恵を大きく感じる事ができます。
(ISO100 F3.5 SS:1/1000)
(ISO800 F3.5 SS:1/80)
(ISO100 F3.5 SS:1/320)
アダプターを介して、無限の可能性
長年Nikonを使用してきた私ですが、Nikonのボディといえば、同じくNikon製のレンズを使うものだという固定観念がありました。理由は単純に、Nikon Fマウントのフランジバックが長く(一眼レフなので当然なのですが)、アダプターを介して装着可能なレンズといえば、一部の中判カメラ用レンズくらいなもので、その上、古くからNIKKORは良く写るものが多かったですし、そして何より、Nikonが長い間守り抜いてきた「不変のFマウント」があったからです。
それがいまやミラーレスの時代ですので、様々なメーカーのレンズをアダプターを介してとっかえひっかえできるわけです。とてもいい時代になりました。
とはいえ、私の手元に転がっていたのは古いものも含めてNikon製しかありませんでしたので、結局このような「純正」での組み合わせを楽しむ形に落ち着いてしまいました。
もちろん、今回取り上げたレンズ以外にも様々なレンズが発売されています。同じレンジファインダーのライカMマウントレンズなどと比較すると出回る数が少ないので、中々自分の欲しいレンズとめぐり合うのは難しいかとは思いますが、是非探してみてください。
(余談ですが、カメラとレンズは筆者の私物なのでした)
さて、ご覧になっていただき、いかがでしたでしょうか。
MapCamera25周年の節目、約6年ぶりに復活させていただいた本コンテンツですが、この記事をきっかけに、クラシックレンズや、ミラーレスカメラについてご興味を持っていただければ幸いです。
★過去掲載分のNikon ニコニコニュース!!はこちらからご覧ください。→コチラ
↓今回ご紹介したレンズはコチラ↓
|
詳しくはこちらをご覧ください。→コチラ
|
|