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【Canon】人生をちょっと豊かにする、Canon EOSのこと。

某日。

軽快な作動音とは裏腹に、待てど暮らせど冷気を吐かないエアコンを恨めしげに見上げれば、視界の隅には先月のままのカレンダー。

「はやくめくりなよ」とはベランダに止まったオオミズアオ。

立つのも億劫な陽炎の午後…。

他人より少し遅れて生きていくのも、まあいいでしょう。

 

陽が当たらない北の部屋では、風鈴が所在なさげにお留守番。

窓を開ければ仕事を与えられますが、もう雇い主がいないのでお暇は続きます。

ここは終わった場所、すこし外に出てみましょう。

 

小高い丘の上に出てきました。真中の点は蜻蛉です。

複眼の上の方では赤の波長が認識できないため、夕焼けの色を知らない昆虫。

でも青空さえ見えれば、それでいいのかもしれません。

私たちは余計な色を見過ぎる。赤青緑、色とりどり、ゆえの濁り。

 

それでもエアコンを焚いて、夏の空に会いに行く。

季節風が育てた緑を満足げに見下ろす送電塔、夢中になって電線がたるんでいます。

 

遊び疲れた日暮れ前、入ったカフェは人もまばら。

品書きを開かない客を訝しむ店員が後ろを向くその隙を見計らい、コップの光が一番美しく伸びる角度を探す。

だってメニューの中に、「きれいなひかり」なんて書いていないでしょう。

それはEOSに。私にはアイスティーを。

 

軽食も済み、帰りの道すがら出会った人々。

3人いれば寂しくないですね。

 

これからもずっとこんな風に写真を撮って生きていく。

昔誰かが歩いた道の、そのほんのちょっと脇を辿りながら。

そうしてまた秋が来れば、違う光が世界を射す。

 

私が愛したカメラは、CanonのEOS。

ギリシャ神話に登場する、恋多き曙の女神と同じ名です。

その女神は愛する人と永遠に添い遂げる為、想い人の青年ティトノスを不死にしてもらいました。

しかし不老にする事を忘れていたため、彼はどんどん年をとり、醜くなっていきます。

惨めなその姿に耐えられなくなったEOSはティトノスに愛想を尽かし、最後はセミに変えてしまう・・・。

 

私の夏が、終わります。

 

いつかこの身体が老いてシャッターが押せなくなった時、私もEOSにセミにしてもらおう。

そうして夏の空に飛んでいく。

もう何物にも縛られなくなった、その羽で。

 

Take me,Take you EOS.

[ Category:Canon | 掲載日時:22年08月14日 14時30分 ]

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