【Canon】1200mmの白い大砲を、手持ちで野鳥撮影に使った結果
各社高性能化にシノギを削るミラーレスレンズ。
その中でも、一際大きな存在感を放つRF1200mm F8L IS USMをご紹介いたします。
18群26枚のレンズを内包したその鏡筒は、重量3340gとなかなかの重さを誇ります。
しかしそれは単に数字だけを見た場合の話。
2011年に発売したEF400mm F2.8L IS II USMの重量が3,850gだったことを考えると、その3倍の焦点距離ながらこの重さというのは驚異的と言わざるを得ません。
初めてこのレンズを持った時に、思わず「軽い!」という言葉がこぼれたくらいです。
「これなら非力な自分でも持ち出して撮影できるのではないか」と考え、EOS R5 Mark IIにマウントして野鳥の撮影に出かけました。
向かった先は吉祥寺・井の頭公園です。
用意していた1脚にレンズを付けようとしたところ、痛恨のミスが発覚しました。
自由雲台を忘れ、脚部分だけを持って行ってしまったのです。
これでは特に役に立たない!
結局1脚は使わずに、手持ちで振り回すことにしました。
ISO:12800 / F8 / 1/400
早速頭上を飛び回るメジロを発見し、「いざ参らん」とレンズを構えると何も居ません。
それどころか自分がどこにレンズを向けているのかが全く分かりません。
流石1200mm、同じような物がたくさん存在する森の中では狙いをつけるのが難しい!ドットサイトを持ってくるべきでした・・・。
とにかく気合いで探し続け、フレームインした瞬間にシャッターを切った1枚が上の写真なのですが、ちゃんと写ったのは機材の性能と言わざるを得ません。
ISO:12800 / F8 / 1/400
その素晴らしい性能を痛感したのがこちらのカット。
ものの見事に枝被りをしており、鳥も葉も同じ色味なのに被写体認識は一瞬でメジロをロックしたのです!
ISO12800で撮影した上、WEB上では縮小がかかっているので少しぼやけて見えるかもしれませんが、拡大していただくと毛がしっかりと解像していることがお分かりいただけるかと思います。
たくさん連写した中の1コマですが、全てのコマでピントが来ていたのでまぐれではありません。
重い機材を手持ちで撮影しているせいで、盛大にファインダー像が暴れているのにも関わらず小鳥を認識し続ける・・・。
これはまさに全知全能と言えるほど強烈なAF性能です。
ISO:12800 / F8 / 1/200
それにしてもこのレンズ、とてつもない「画力(えぢから)」です。
手を伸ばせば木の幹やメジロに触れられそうなほどの質感描写に、硬さやにおいまで判るほどの臨場感。
特に瞳の部分は特筆もので、鳥独特のグミのような目の感じを完璧に再現しました。
木の幹の細かな模様に目を向ければ、「線が細いとはこういう事か」と解らされるような美しさ。
複雑な「面の集まり」をあますことなく描き切ります。
ボケが始まる「ボケの起点」もざわつかず、滑らかに、かつ量感を伴ってボケていき、更に前ボケ・後ボケ共に美しい・・・。
惜しむらくは空と枝の境界線に軸上色収差が見られることですが、肉眼ではほぼ真っ暗な木陰から空を狙っているのでこれ位で済んでいることが驚きです。
蛍石レンズが2枚使用されているおかげでしょう。
ISO:12800 / F8 / 1/250
最短撮影距離(4.3m)ギリギリにいたハトを写したカットですが、あまりにもリアリスティックに写りすぎて鳥肌が立ちました。
水浴びをして貼り付いた首の毛一本一本を分解しきる解像力、湾曲して体を丸く包む風切り羽根の恐ろしい立体感…。
「ボケているのにボケの中で立体感がある」というハチャメチャな高画質の前に、ただただひれ伏すばかりです。
基本は遠距離の被写体を狙う為のレンズなのに、最短撮影距離でもこの写り。
得手不得手なく撮影者の意思に素直に添える、最高の相棒です。
~ちょっとbreak~
付属しているレンズソフトケース (LS1200)には、幅広の肩掛けストラップがついています。
しかしリュックタイプではなくショルダータイプなので、「一つの肩で提げる」ことになります。
長時間の運搬はやはり負担がかかったので、衝撃対策をしっかりした上でキャリーカートを用意するのもありかもしれません。
ISO:12800 / F8 / 1/200
それから手持ちで振り回すこと数十分。流石に腕に痺れを感じたので引き上げようと歩いていると、なんとカワセミがいるではありませんか!
こうなると疲れたなんて言っていられません。
意気揚々とバードウォッチング用に開けられた窓にレンズを差し向けますが、レンズ径が大きすぎて窓に入らなかったため仕方なく一歩引いて撮影しました。
こういったフレーミングだと、EOS R5 Mark IIは水面に映った方を被写体と認識するようです。
作画意図をしっかりと汲み取ってくれて嬉しい限り。
ISO:12800 / F8 / 1/200
思い切り画面の端にフレーミングしても、当然の様に瞳を追い続けます。
ISO:12800 / F8 / 1/200
カメラを構えていると、カワセミが突然動き始めました。
そのスピードにビクッと驚いてしまい「うわ、ブレた」と思ったのですがそれほどでもありません。(シャッタースピードの関係で被写体ブレは凄いですが・・・)
背伸びをして下からバリアングルディスプレイを見ながら連写している状態で、体がビクッとなってもこの程度のブレ量で済む。
手振れ補正の協調制御が無いレンズにも関わらず、満足のいく性能だと感じました。
ISO:12800 / F8 / 1/200
お昼ご飯をゲットしたようです。
捕まえたザリガニ(?)の爪の先までくっきりと写っています。
ISO:12800 / F8 / 1/500
ザリガニ(?)を食べ終わって満足げなカワセミ君。
ローキ―にしてみましたが、発色の良さも手伝ってコントラストがしっかりと残った仕上がりに。
暗緑色の背景からしっかりと浮かび上がる青色がきれいです。
これを見ていたら私もお腹が空いてきたので、この日は引き上げることにしました。
・・・
1200mmのレンズを構えるという強烈な体験は、大満足のうちに幕を閉じました。
最後に良かった点をまとめると
①重いとはいえ筋トレをしていない私でも十分に持ち運べる重量
②レスポンスが良い超高速AF。サーチ駆動する時の往復速度も、焦点距離を考えるととてつもなく速い
③ボケの中にも立体感がある凄まじい描写性能。信じられないほどのシャープネス
④前ボケ・後ろボケ共にクリーミー
となります。
必要な人には替えの利かない本レンズ。その立ち位置や値段に違わない、至高の一本であることは間違いありません。
人生で一度は構えてみたい、最高のレンズでした。