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【Canon】2024年。それでもまだ、一眼レフを愛してる。

【Canon】2024年。それでもまだ、一眼レフを愛してる。

長すぎる翼のせいで、地面から飛び立つことができない鳥がいるのをご存知でしょうか。
アマツバメと呼ばれるそれは、崖に生えた木に逆さまにぶら下がり、まるで落ちるようにして飛び立ちます。
最高時速300kmと、新幹線にも匹敵する速度で飛べる翼の代わりに課せられた不自由を、彼らはどう思っているのでしょう。
もし言葉が話せたなら、「重力を振り切るために重力に頼るのさ」と、自嘲気味につぶやくかもしれません。

 

19世紀も終盤に差し掛かった頃、同じように大きな翼で空を目指した者がいました。
航空工学で名を馳せた発明家の、オットー・リリエンタールです。
空を飛ぶことに魅せられた彼は、独学で「鳥の羽による飛行」を研究し続け、自作のオーニソプタ―(鳥形飛行機)やグライダーで飛行実験をしていました。
当時航空黎明期だった世界は彼のおかげで大きく前進しますが、「鳥の飛行」に固執した研究はやがて壁に当たり、そこから先へと進めなくなってしまいます。

鳥に憧れ鳥からヒントを得た彼が置き忘れてしまった大切な事。
それは、人は鳥とは違うということでした。

 

彼は飛行中の事故により命を落としますが、その遺志を継いだ者たちがいます。
かの有名な、ライト兄弟です。
ウィルバーとオービルの二人は、リリエンタールの残したデータを徹底的に分析し、人力や風の力ではなく動力(エンジン)で飛ぶ飛行機を製作。
様々な苦難を乗り越えた末、その試作機で強風の中260mの距離を飛ぶことに成功しました。
時間にして僅か59秒のささやかな飛行でしたが、人類にとって非常に大きなターニングポイントとなったことは間違いありません。

それから100年以上の時が経った今。
空には大きなエンジンを積んだ旅客機が飛び交い、たくさんの人々を運んでいます。

 

今まで積み上げられてきたものを踏襲して、時には破壊して世界は拓かれていく。
カメラだって、そうして進化してきました。
全ての始まりはカメラ・オブスクラ(暗室に穴を空けただけの物)だったのに、それがやがて小型化して持ち運べるようになり、レンズ交換ができるようになり、オートフォーカスが可能になり、ミラーレスが登場し、気がつけばメカシャッターまで無くなろうとしている。
どんどん便利になり、どんどん高画質になり、もうこの世には撮れないものなど無いような気さえします。

 

そんな2024年。私はと言えば、今でもEOSとαの一眼レフを愛用しています。
一度ミラーレスにマウント変更をしたものの、その全てを手放しまた戻ってきました。
こんな人は相当珍しいと思いますが、理由は簡単。
忘れられなかったんです。レフ機を使う楽しさが。

 

ブラインドで操作出来たら格好いいだろうと思って、買ったその日に一生懸命覚えたボタン配置。
初めて買ったLレンズが嬉しくて、ずっと見ていた春。
いつか手にしたいと願っていた1DX MarkⅡと共に、日本を横断した冬。
そして、手放してしまったあの秋の事ー
思い出は尽きません。

 

機械とコンピューターを半分ずつ内包したカメラだった、デジタル一眼レフ。
それは長い歴史で見れば一つの過渡期として、ミラーレスへバトンを渡した存在でした。
リリエンタールが作り上げたグライダーが、やがて動力付きの飛行機に変わっていったように。

 

もう時代は変わってしまったけれど、「レフ機を愛する人は残り続ける」と私は思っています。
それは根拠のない希望的な観測。あるいはそうであってほしいという我儘なだけかもしれません。

でも、飛行機が当たり前のようにエンジンを積むようになっても、「自分の力で空を飛びたい」と願う人は消えませんでした。
大きく長いハンググライダーの翼は、アマツバメのように飛び立つことが大変で、そこに命の危険があるにもかかわらず…。
それでも彼らは風を読み、太陽の光を体に受け、両足で地面を蹴る。
向かい風が全身を打ち、重力を振り切れば、そのご褒美に、鳥になる事ができるから。

 

似ていたんです。一眼レフで写真を撮る事も。
大柄なボディに配置された沢山のボタンに手をかけ、機種ごとに癖や特徴のあるAFシステムを使いこなし、しっかりと脇を締め、ミラーショックを、シャッターショックを感じながら、光学ファインダーが導いた火傷しそうなほど眩しい光にかぶりつく。
露出を、構図を、光線を追い、一枚ごとに嬉しさを、時には悲しさも噛みしめる。
ファインダーの中、ぼやけていた憧れの輪郭にピントを合わせるたび、ああ、生きてるって、感じる。

それはひどく抽象的で上手く説明できないのですが、オービル・ライトの言葉を借りるなら、きっとこういう事なのでしょう。

ーウィルと私は夢中になれるものがあったので、朝が待ち遠しくて仕方がなかった。それが幸せというものさー

 

季節を少し巻き戻し、2023年の11月21日、行き慣れた航空記念公園にて。
秋の日差しは少し低い角度で、かつて滑走路だった場所を照らしていました。
その端にぽつんと置かれた飛行機のモニュメントに意識を向ければ、騒がしかった自然の声が少しずつ遠ざかってゆきます。
右手が自然とカメラを掴む。
長い年月を経てキズだらけになった金属の鳥が、一番綺麗に飛べる角度を探す。
ファインダーの中、まるで骨組みのような頼りないかたちをしたそれは、何故だかとても格好良く見えました。
まだ空が遠かったころの人々の願いを、その羽に乗せているような気がして。

 

私にとって光学ファインダーを覗くということは、「自分が惹かれた美しいもの」に額縁をあてがうこと。
画や写真を収めた本物と違って壁には飾れないけれど、その代わりに二度と描けない“今”を映し続けてくれる額縁です。
その中に飾られるのは、いつだって本物の光。
何よりも眩しくて、どんな物より輝いていて、時に思い通りにいかなくて、でも決して輝きを失わない私の光。

これからも写真を撮り続けよう。
数字や記号がいっぱいの無骨な額縁を覗きながら、笑顔と、憧れと、そして数えきれないくらいの季節を思い出にして、ずっと。

2024年。それでもまだ、一眼レフを愛してる。

 

 

 

Canonの一眼レフは、常に時代の最先端であり続けました。今ならまだ新品で購入できます。


 


 


 


 


熟成されたNikonのレフ機。撮影者を挑発するその官能性を、あなたも。


 


 


 


一眼レフの未来を創る。あとは頼んだよ、PENTAX。


 


 


 


 


[ Category:Canon MINOLTA | 掲載日時:24年01月08日 18時00分 ]

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