皆様は、普段どれくらい動物園に足を運びますか。
大人になってみると、なかなか縁がないという方も多いかもしれません。
動物園は家族や親しい人と行く場所…そういった認識は、カメラと望遠レンズさえあれば覆すことが可能です。
敢えて申し上げるのであれば、カメラを持っているなら、望遠レンズを持っているなら、ぜひ動物園へ行きましょう。
・動物園で望遠レンズ?
動物園のように、家族連れや恋人たちでにぎわう施設に、カメラを持って一人で入園するというのも心理的に多少憚れるかもしれませんが、実際に園内を散策していると、カメラに望遠レンズを組み合わせて歩く方とすれ違うこともしばしば。
もちろん、家族団らんで楽しむ方々を邪魔してはいけませんので、後ろから、控えめに、そそくさと写真を撮ってまいります。
さて、今回持ち出したカメラはCanon 5DsR。
レンズはEF 400mm F4 DO IS II USM一本を携えて臨みます。
なぜこの組み合わせを使用するかというと、いくつか理由があります。
ひとつは、EF 400mm F4 DO IS II USMは非常に軽量で、持ち運びが容易であるという単純な理由。
また、大口径レンズでもあるので、動物園で撮影する以上絶対的に立ちはだかる「柵」を“溶かす”ことができるということ。
そして、5DsRの50MPローパスキャンセルセンサーは動物の毛並みなどで解像感を存分に堪能できるという点。
さらに、「思っていたより画角が広かった」際に、トリミングによる救済を目論むという邪な理由もあったりします。
さて、前置きはこれくらいにして、実写に移っていきましょう。
(ISO400 SS1/640 F5.6)
(ISO400 SS1/400 F4)
高コントラスト条件下の撮影。
発売時期を鑑みると、かなりダイナミックレンジが広いなと感心しました。
5,000万画素もの高画素でさらにローパスフィルターをキャンセルする技術を有するということで、撮影前の印象は「たぶん白飛び黒つぶれは救えないだろうな」なんて身構えてみましたが、撮影後に現像してみるとデータが想像以上に残存していました。
ISO400でも白飛びした象の背中のディテールを救えたので、ISO100などであればより豊富な情報量になるだろうと想像できます。
(ISO400 SS1/250 F4)
(ISO400 SS1/1250 F4)
少し肌寒い日だったこともあって、猿の家族が団子になっていました。
ライオンは日向でお昼寝のご様子。
一般客が多数集まる展示スペースを避け、あえて画角的におさまりのいい遠くから切り取ります。
こういう撮り方ができるのも望遠レンズのいい所です。
(ISO800 SS1/500 F4)
(ISO800 SS1/400 F4)
動きの激しいレッサーパンダを懸命に追います。
この時はCanonのIS(レンズ内手振れ補正)とAF性能に助けられました。
DOレンズは、その特徴的なレンズエレメントの構造により、ボケも独特になりやすい傾向があるということですが、状況によっては目立ちません。
(DOレンズ(Diffractive Optics:回折光学素子)は、光が物体の裏側に回り込む現象(回折現象)を利用し光路をコントロールすることで、本来小型レンズを設計する際にレンズ枚数を増やすと増大する色収差を除去し、かつ、採用するレンズ枚数を削減することが可能で、小型・軽量化に寄与することができます。しかしながら、同心円状に加工が施されたレンズによって、特徴的なフレアが出たり、ボケに影響が出ることがあります。)
(ISO800 SS1/6400 F4)
(ISO800 SS1/2000 F4)
(ISO800 SS1/800 F4)
(ISO800 SS1/2500 F4)
ピントがしっかり来た時には、良好な描写性能が発揮されていることがよくわかります。
(ISO400 SS1/400 F4)
(ISO400 SS1/2500 F4)
正面に捉えたシマウマ。なんだか画面のおさまりが悪い。
そんな時は…
思い切って縦構図で切り抜き。媒体にもよりますが、こんな奥の手が使えるのが高画素機の恩恵です。
もちろんフルの画素で切り取った描写のほうがより優れていますから、あくまでも奥の手にとどめたいところ。
(ISO400 SS1/1600 F4)
(ISO400 SS1/4000 F4)
園内は広く、世界各地の気候や風土に合わせた展示の様相となっています。
中でもサバンナエリアは特に私のお気に入りです。
愛らしい動物も多く居ますが、展示のタイミングによっては、肉食動物の野生に近い姿を観察することもできます。
大人になってのんびりと動物の生態に触れるのは、子供のころとはまた違った見識で臨むことができます。
(ISO400 SS1/1250 F4)
むむっ、ここで園内の池のほとりに野生のカワセミが出現。
400mmといえば、こと野鳥撮影では「広角」とも比喩される画角でシビアですが、堪らず追ってみることに。
(ISO1600 SS1/1600 F4)
ISO感度をできるだけ上げて、高速域でシャッターを切ります。
さすがに400mmだと少し遠いか、といった塩梅ですが、ここで再び「奥の手」を使います。
等倍キリキリまで切り出してみます。
さすがに感度がこの値でトリミングを行うと、少しノイズが混じります。
背景の抜けが悪いため少しザワついて見えますが、許容範囲でしょうか。
・高画素機の時代
いま、デジタルカメラの市場では、各メーカーから高画素機が投入されています。
一般の方々に普及したスマートフォンに内蔵されたカメラさえも、画素数だけで見れば、ひと昔前のカメラを優に超えているものもあります。
もちろん、高画素化が単純に「高画質化」に繋がるわけでもありませんが、いずれにせよ、市場においては「高画素」という言葉が重要になっていることは間違いありません。
しかし、高画素化はデメリットも存在します。
一般的には、高画素化に伴い、平均的な画素数のカメラと比較して画素あたりの面積が小さくなり、受光面積が劣り、ダイナミックレンジが狭くなったり(黒つぶれ、白飛びしやすくなる)、ノイズが発生しやすくなるといわれています。
また、単純な問題として、画素数が大きくなるということはすなわち撮影される画像データ1枚あたりに対する容量も多くなるため、管理に必然的に大容量の記録媒体や、閲覧するために高いスペックのPCが必要になるなどの壁もあります。
しかし敢えて一眼レフ、且つ高画素機を選ぶということは、道具としては間違いなくオーナーの所有欲に応えてくれると私は考えています。
EOS 5DsRの発売は2015年なので、ざっくり考えてすでに五年前のカメラになるわけですが、今回の使用を通して、改めて第一線で活躍できるカメラであると再認識いたしました。
是非、夏に控えたスポーツの祭典に向けても、手持ちのラインナップに加えてみるのはいかがでしょうか。
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