
【Carl Zeiss】Planarに魅せられて~Touit 32mm F1.8~
「標準レンズ」、カメラを始めた方は必ずと言っていいほど耳にする単語です。いわゆる換算50mm相当のレンズを指し、人間の目で見た遠近感とほぼ同じ撮影結果になることから、写真撮影の練習に使われることが多い焦点距離です。
一概に標準と言っても、景色の見え方は人それぞれ、千差万別です。自分のフィーリングに合ったレンズを選ぶことは難しく、その過程で様々なレンズの名を耳にすることでしょう。
その中でも「プラナー」という言葉を聞いたことがある方は多いはず。その歴史は古く、1896年にドイツの物理学者・レンズ技師であるパウル・ルドルフが理想のレンズを夢見て設計した、対照型4群6枚のダブルガウスを採用したレンズのことを指します。特に有名なのはCONTAXから出ていたPlanar 50mm F1.4でしょう。標準レンズの帝王と呼ばれたその描写は、現在でも高い人気を誇っています。
なぜこんな話をしたのかというと、現在でもこのプラナーの写りを求めて止まない方が多く、各社からミラーレス機に対応したレンズが作られているからです。
今回は、筆者の愛してやまないFUJIFILMのカメラに合う、現代に蘇ったプラナーのお話をしたいと思います。
FUJIFILM Xマウントには様々なメーカーから対応のレンズが出ています。その中でもXマウントが創設された初期からあるのが、Carl Zeissから発売されている「Touit」シリーズです。読み方は「トゥイート」、ラテン語でオウムを指す言葉です。
今回使用した「Touit 32mm F1.8」は冒頭でお伝えしたプラナータイプのレンズであり、FUJIFILM機で使用できるプラナーとしてはオートフォーカスの使える唯一のレンズとなっています。
筆者はCONTAX AriaでPlanar 50mm F1.4 MMをよく使用するのですが、まるで青いビー玉越しに見ているような独特の空気感のある描写が気に入っており、デジタルでもあの描写を再現できないかと、現像で模索したこともありました。
「Touit 32mm F1.8」の存在は以前から知ってはいましたが、手元にXF35mm F1.4 Rを所持していたこともあり、自分の中ではあまり気に留めないレンズでありました。
Planar 50mm F1.4 MM
Touit 32mm F1.8
今回使用してみた素直な感想としては、Planar 50mm F1.4 MMに感じていた独特の空気感、それに限りなく近いものを感じました。
試しに過去の作例と比較してみましょう。上がPlanar 50mm、下がTouit 32mmで撮影したものです。色味や構図は違いますが、ピント面の線の細さと解像感、とろけていくようなボケを持ち合わせているプラナーの特性が、両者とも感じることができます。
Planar 50mm F1.4 MM
Touit 32mm F1.8
こちらも比較してみましょう。玉ボケの形はややTouit 32mmの方がきれいでしょうか。対してPlanar 50mmの方は画面端に向かってレモンボケの傾向があり、画面中央に引き込まれるようなオールドレンズチックな写りです。
撮影時は雨上がりの朝。「朝焼け」や「雨過天晴(うかてんせい)」とも表現されます。プラナーの湿度感ある表現と相まって、その場の匂いまで感じ取れそうな写りになりました。
Carl Zeissレンズはシャドウの粘り強さが気に入っています。特に現像はしておらずほとんど撮って出しなのですが、暗部に残るディテールを潰すことなく描き切ってくれます。FUJIFILMのセンサーとの相性も良く、ファインダーに自分の想像以上の画が映し出され、思わず声が出ることも。
お昼に立ち寄ったお店でテーブルフォトも試してみました。小型軽量な本レンズは、人の目がある中でも仰々しくならず、場の雰囲気を壊しません。最短撮影距離も30cmと標準レンズとして寄れる部類に入ります。席から立たずに目の前の料理を撮影できました。
横並びのお地蔵さん達が印象的で、16:9で撮影。最近のFUJIFILM機ではアスペクト比を変更するためのダイヤルが設けられたりと、様々なフォーマットでの撮影に注目が集まっています。ぜひお手持ちのカメラでもお試しください。
いかがでしたか。
最後の作例は季節を少しさかのぼって、5月頭のチューリップを撮った際のものです。寒色系の表現のほかにも、こういった暖色系の表現もこなしてしまう、懐の広さを感じます。
総評として、プラナーの写りを求める方の要求にしっかりと応えつつ、ミラーレス機の軽さや利便性を損なわない機能性をもつ、現代版プラナーとして申し分ないものでした。表現の幅を広げるという意味で、XF35mm F1.4 Rなどの同じ画角のレンズをすでにお持ちの方にもおすすめしたいです。
自分に合った標準レンズ探しは長い道のりですが、その手助けに少しでもなれば幸いです。
▼ 今回の使用機材 ▼
「新品はインターネットからのお買い物で安心安全の2年保証付き!」
▼ 中古はこちらから ▼