【Carl Zeiss】”ZEISS” vol.1
『鳶(トビ)』を意味する『Milvus』
『木葉梟(コノハズク)』を意味する『Otus』
各社がオートフォーカスの速さと正確さを競う時代に生まれた重量・採算度外視のマニュアルフォーカスレンズたち。
鳥類の眼の如く鋭い描写性能を目指し生まれたレンズ群を自称ツァイス信者がご紹介。
全15本を3回に分けてレビューいたしますのでお気軽にご覧ください。
ボディは『Canon EOS-1D X MarkII』
写真は勿論全てJPEG撮って出しとなっています。
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Milvus 15/2.8
15mmというと建築写真や風景写真で使われるイメージが強く筆者にとって無縁の存在。
上に下にいろいろな方向にレンズを向けますが納得のいく構図を作ることができず四苦八苦、
ふてくされながら腰を下ろしてファインダーを覗くとまるで昆虫の目線。
掲載した3枚は全て座り込んで撮影したものですが、初めての15mmにしてはそれなりではないでしょうか。
それもこれも優秀なレンズのおかげです。
マニュアルフォーカスレンズならではのピントリングのトルク感は置きピン撮影に最適。
ぴたりと合ったときの爽快感、これも写真撮影の醍醐味の1つでしょう。
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Milvus 25/1.4
24mmでも28mmでもない25mm
ヤシカコンタックスにもあるこの画角は、写したいものをそのまま写すことのできる素直な画角。
エルハルト・グラッツェル博士が開発したディスタゴン、バックフォーカスを大きく取ることができるため一眼レフ用広角レンズに採用されています。
Milvus・Otusシリーズにおいても多くのレンズがディスタゴンのレンズ設計を採用しています。
空の色再現は露出をアンダーにすることで調節しました。
夏場は雲の形や空の色が変わりやすく、特に夕暮れ時は刻一刻と変わる空模様を楽しむことができます。
最短撮影距離24cmを活かした植物撮影では解像力にびっくり、ボケも文句ありません。
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Milvus 35/1.4
瑞々しい描写が特徴的な35mm
狙った通りにピントが合焦したときの気持ちよさは何とも言えません。
1枚目左側の滲むような前ボケは水墨画のようで風情があり、2枚目の立体感や3枚目の解像力も文句なし。
トータルバランスに優れツァイスの特徴がよく出ているレンズだと感じました、まさに万能。
今回ご紹介している5本のうち最初に使用したのがこのレンズですが、
この1本がMilvus・Otusシリーズへの期待を高めてくれたことは間違いありません。
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Milvus 50/2
個人的な話になってしまいますが「Planar」と名のつくレンズは無条件で信用してしまうところがあります。
ドイツ語で平坦を意味する「Plan」を語源とするプラナーはダブルガウス(前後対称)のレンズ設計を採用したことで、歪曲収差や像面湾曲を抑え込むことに成功。コンタックスやハッセルブラッド、ローライといった名立たるメーカーに供給されました。
パウル・ルドルフが1897年に開発に成功したものの、コマ収差や空気に触れる面が多いことが課題となり日の目を浴びず。その後、T*コーティングや新たな硝材の導入によって実用化に至った経緯もあります。
このレンズはマクロプラナーの50mmということで最短24cmまで寄ることのできる優れもの。
50mmという画角が最も自然に感じる筆者にとっては、マクロレンズとしてだけでなく日常を見たまま捉えることのできる貴重な存在です。
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Otus 100/1.4
vol.1唯一のOtusシリーズは100mm、『Apo Sonnnar』です。
色収差を補正する「アポクロマート」、ルートヴィッヒ・ベルテレが生み出した「ゾナー」
(ベルテレはビオゴンの生みの親でもあります。)
ツァイス信者にとって夢のようなレンズは、Milvusシリーズと比較しても別格。
個人的には撮影データではなくファインダー、それも光学ファインダーでその映像の美しさを体感していただきたいレンズです。
雨上がりに撮影を行いましたが湿度を感じさせるようなしっとりとした描写、
これぞツァイスと言わんばかりの写りを楽しむことができます。
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Milvus・Otusシリーズ全15本をご紹介していくわけですが撮影は今まさに進行中。
照り付ける日差し、突然の大雨、肩にのしかかる愛機と銘玉の重さ、
様々なものと格闘しながら最後まで駆け抜けますので、応援よろしくお願いいたします。
vol.2をお楽しみに。