カメラ好きの間で語られるヤシコン(CONTAX)プラナーの評判の良さ。3~40年前の当時は最高性能と評された“標準レンズの帝王”ですが、近年はミラーレス機とアダプターの組み合わせで使用出来る事から、今もなお人気の高いレンズです。 そんなメジャー級のオールドレンズ『CONTAX Planar 50mm F1.4』。数年前に私も友人から借りて使用したことがあったのですが、その時は「普通に良く写る」くらいの感想しか持たず、「帝王とか言ってるけど、似たような構成のレンズは世界中にゴマンとある」など、少し斜め上から見ていました。まぁ、今思うと若さというやつです。少し知識を身につけると、全部分かった気になっていたという。
そんな私が半年ほど前、衝動的に『CONTAX Planar 50mm F1.4』を買ってしましました。 なぜかというと、ずっと理想の50mmレンズを探す旅をしていまして、「ヤシコンPlanarを一度ちゃんと使ってみよう」と思ったのが発端です。 そんな時に安価な初期のAE玉に出会ってしまい、気付いたらポチッとしていました。中古は全て一点もの。これも出会いでしょう。
『CONTAX Planar 50mm F1.4』にはAEとMMという2種類のレンズが存在します。ざっくり言うと、AEは1975年〜作られたレンズで、絞りが“手裏剣ボケ”と呼ばれる特殊な形をしています。次に登場したMMは1985年〜。絞りの形状がより真円に近く、PモードやAvモードに対応しているレンズです。まぁ、アダプターで使う場合でしたら絞り形状の違いが大きなポイントと言えます。
このレンズの開放で撮った一枚。写真を見た瞬間に「当たり玉だ!」と喜びました。柔らかな描写の中にある、確かなピントの芯。シリアルが581万番台から始まった『CONTAX Planar 50mm F1.4』は初期のレンズに凄い当たり玉があるという都市伝説があります。恐らくは当時の品質に多少のムラがあったためだと思いますが、オールドレンズファンの中には自分好みの描写を見つけるために何本も同じレンズ購入するツワモノも居ます。かく言う私も、その都市伝説を信じて初期玉を探していたのですが、この582万番台は私好みの描写でした。
子供の成長記録写真がメインになった私にとって、F1.4開放から使えるオールドレンズは非常にありがたいです。オールドレンズは開放のクセが強い個体も多いですから。かと言ってクセなく良く写る最新AFレンズはあまり好みではない性分。ワガママな大人に育ってしまいました。
マニュアルレンズの良いところはピントが合ってなくてもシャッターが切れること。変な事を言ってますが、シャッターのタイミングをカメラに依存したくないのです。自分がシャッターを切りたい時に切れる。ピンボケでもいい写真は沢山あると思っています。
3~40年前のレンズですが少し絞ればしっかりした色乗りとコントラストを見せてくれます。そういう所は流石ツァイス、そして旧富岡光学の技術の高さと言えるでしょう。しかし、子供達が寝間着姿で変な格好なのが少し気になります…。
『CONTAX Planar 50mm F1.4』AE初期玉のウィークポイントは逆光にすこぶる弱いこと。もう息子が神々しいくらいの光に包まれています。AE初期玉はレンズ内の反射防止塗装が無いのに加え、T*コーティングと言っても当時のマルチコートですから逆光耐性の限界は低いです。とはいえ、このフレア・ゴーストも本レンズの魅了の一つ。オールドレンズの面白さです。
この時はちょうどいいフレアの効果を見つけるために絞りとカメラの角度を微妙に変えながら撮影をしました。いい感じのフワッと加減です。
「これはこのレンズじゃないと撮れない」と感じた一枚。ふわりと被るフレアと程よい解像感。そしてキラキラした光のボケ味。やっとこのレンズの旨味を出せた写真が撮れたと思いました。今まで数えきれないくらい息子の写真を撮ってきましたが、これはお気に入りの一枚です。
約半年間使用してきて銘玉と言われる理由が分かった気がします。順光では色乗りの良さと高コントラストで立体感のある表現を得意としつつ、開放付近でたまに見せる奇跡的な光の拾い方。おそらく逆光に弱いが故に起きたフレアによるものですが、時折想像以上の写真を生み出してくれます。オールドレンズとしては使いやすく、現代のレンズと比べるとクセがある絶妙なポジションなのも◎。優秀だけど面白みのあるレンズです。まだまだ興味のある50mmはたくさんありますが、しばらくはこの『CONTAX Planar 50mm F1.4』で落ち着きそうです