【etc.】Lens tasting 3 P.Angenieux 3inch F2.5
レンズの写真を撮影するため家の中で良いスポットを探していて、ついに見つけました。
エスプレッソカップのように小さくてかわいいレンズです、お楽しみください。
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さて、今回は前回までの「Leica lens tasting」とは異なり、番外編「“Old” lens tasting」です。
ご紹介するレンズは【P.Angenieux 3inch F2.5】、Cマウントのシネマフィルムカメラ用レンズ。
動画を撮るために作られたレンズで動画撮影をしてみたいと感じたことが今回のブログを掲載するに至ったきっかけ。
私が持っているレンズは「P.Angenieux」と「Bell & howell」の両方の刻印が入っており、前者はフランスのシネマカメラ用レンズメーカーで、後者はアメリカのシネマ撮影機材メーカーです。
実は、いつかのブログでご紹介して以来の再登場。(この回では焦点距離の表記が異なりますが同じレンズです)
スチル撮影の作例は是非こちらのブログでお楽しみください。
まだシネマ用フィルムカメラは入手できていないので、SONY α7RⅢに装着しての撮影です。
今回の動画も音が出ますので、可能であればイヤホンかヘッドホンを付けてお楽しみください。
スチル撮影で使用した時から感じていましたが、α7RⅢの「APS-Cモード」を使用すれば、思っているよりも大きくはケラれることなく、むしろ面白い雰囲気で撮影することができました。
動画の比率は16:9で撮影しているので、写真で撮るよりも上下が少し切れたようになり周辺減光が目立ちにくくなっているのも好印象。
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ところで、3inchが何mmであるかはご存知でしょうか。
インチ単位とミリ単位の換算サイズがうろ覚えだったため調べてみると…
3inch=76.2mm
であるようです。
予想に違わず微妙な数値。
APS-Cモードで使用する為、数値を1.5倍してフルサイズでの焦点距離に換算すると114.3mm。
つまりおおよそ110mmくらいの感覚で撮影ができるという事になります。
110mmと聞くとなんだかマクロレンズの様ですが、最短焦点距離は約1m。
マクロレンズのように寄ることはできません。
さて、それでは気になったカットをご紹介します。
少し絞って撮影した遠景のカットです。
四隅のビネットが濃くなり、ケラれている部分との境目が少しはっきりすることで、目視では間延びしてしまうような開けた景色も額縁の中に収めるように撮影することができました。
夏の陽炎がかかったのかと思うようなじわりと滲む写りは、ねむい、と言ってしまえばそれまでですが、ひとたび「現実離れした見え方が幻想的である!」なんて感じてしまうと、そこはもう沼の入口。
シャキッと写るわけではないむず痒さというか、良くも悪くも肉眼に近い見た目がなんとも癖になってしまいます。
もっとも、この個体はレンズ内にキズやクモリがあるため綺麗な個体であれば違ったのでしょうが、面白い写り、これはこれでよし。
神社の鳥居の、しめ縄のその下の、ひらひら。
あの白いひらひらは「紙垂(しで)」というそうです。
災いが入ってくることを防ぐ役割をしてくれているらしく、可愛いく揺れるのでつい動画の被写体に選びがち。
寺社仏閣に囲まれた学生時代を送ってきましたが、どこへ訪れても神聖な空気が漂っていることをいつも感じていました。
肉眼で見て感じるというよりは、肌で感じる雰囲気なので再現は極めて難しいですが、厳かな空気の重さは今回上手に捉えられたと思います。
撮影中は常に何かに見られている、いや、何かが見守ってくれている様な視線を感じながら。
冒頭の題名を写していた背景のカットです。
歪みや滲みが面白いオールドレンズは多いですが、各々の特徴はピントが大きく外れた時に顕著になる印象があります。
今回はあまり意図せず、「録れてる音はどれくらいだろうか」と試しにピントを合わせず撮影したものの、思っていた以上に不思議な画になったので使ってみることとしました。今後お気に入りの撮影方法になりそうです。
動く被写体を意図的にブレさせたり、流し撮りをしたりと、静止画でも「動き」を表現することはできます。
しかし、風にそよぐ草花の揺れとその速度感を、情緒を保ったまま写真で表現することは私には難しいものでした。
動画になって初めて伝えられた優しい“揺らぎ”が私に安心感をもたらします。
そして、風の音と、おそらく近くにあった自動販売機の機械の音。
特に珍しいというわけでもないそんな音が、心を落ち着かせてくれることもまた確かなことです。
こうして人は動画にハマってゆくのだな、と、実感させられました。
今回でLens tasting は3回目。
基本的にはLeica製のレンズをご紹介する予定ではありますが、今回のようにどうしても気になったLeica以外のレンズも挟みつつ連載をしたいと思っています。
かつて16mmシネマ用フィルムに光を届けていたこのレンズも、まさかその数十年後にフィルムではなくセンサーに、しかも再び動画を撮る事を目的として使われるとは思ってもみなかったかもしれません。
年月が経ち、どうしても発売当初本来の写りとまではいかないかもしれませんが、長い時間を超えて同じレンズが見た景色をこうして動画で見ることができているのは奇跡のようにすら感じます。
「ミラーレスカメラって偉大だな…動画ってすごいな…」
日々、噛みしめながら今日も撮影へ向かいます。
それでは、今回はこの辺で。