【FUJIFILM】XF23mm F1.4 Rと共に過ごした夏
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皆様には苦手な焦点距離はありますか。
筆者は普段50mmと28mmを中心にスナップ撮影を楽しんでいるのですが、その間に位置する35mmに昔から苦手意識がありました。
準広角レンズに属する35mmは、各メーカーから多くのレンズがラインナップされており、スナップやポートレートなど幅広い撮影に使用され、その汎用性から50mmと並ぶ常用レンズとして親しまれてきました。
しかし50mmと28mmを使い分けている筆者にとっては、どっちつかずな印象のある焦点距離であり、次第に持ち出す回数が減り、手放してしまったこともありました。
とはいえ、35mmで撮影された素晴らしい写真を見るたび、心の奥では憧れが募るばかり。
今回はそんな気持ちに区切りをつけるため、前々から気になっていた『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』を購入し、今年の夏を共に過ごしてみました。
拙い作例とは思いますが、ご覧いただければ幸いです。
X-T3+XF23mm F1.4 R(F1.4, SS1/1600, ISO640 , PRO Neg.Hi)
まず最初に訪れたのは、毎年7/6〜7/8に開催される入谷の朝顔まつりです。その歴史は古く、江戸時代から続く下町の夏の風物詩として、全国的にも有名なお祭りです(大正2年に一度途絶えましたが、昭和23年に復活し、現在に至ります)。
コロナ禍は開催中止となっておりましたが、今年は4年ぶりの開催ということもあり、例年以上の賑わいを見せていました。
お祭りの期間内は朝顔の習性に合わせて、朝早くから通りに朝顔売りの露店が並び、11時ごろになると屋台を含めた歩行者天国が始まります。今回は朝の透き通った空気感を撮影するため、朝7時ごろに訪れました。
X-T3+XF23mm F1.4 R(F4, SS1/60, ISO800 , PRO Neg.Hi)
X-T3+XF23mm F1.4 R(F1.4, SS1/250, ISO640 , PRO Neg.Hi)
FUJIFILM Xマウントには、これまでに純正で3本、サードパーティを合わせるとさらに多くの23mm(換算35mm)のレンズがラインナップされています。
その中でも『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』は、2013年10月に発売されたXマウントでも初期のレンズに位置します。F1.4の大口径レンズとしては重さ300g、全長63mmと小型な作りで、Xマウント初期のボディとマッチするような金属製の外観が特徴です。
また、フォーカスリングをスライドすることによって瞬時にMFへ切り替えができる、マニュアルフォーカスクラッチもこのレンズの特徴です。距離指標と被写界深度指標が現れ、オールドレンズのような操作感を味わえます。
このレンズの見た目も購入の決め手の一つですが、筆者が特に気に入っている部分は、被写体を優しく描くような線の細い描写力です。上の写真でも、朝顔の花のもつ柔らかで儚い印象を、見た目以上に忠実に再現しています。
X-T3+XF23mm F1.4 R(F1.4, SS1/7500, ISO640 , PRO Neg.Hi)
X-T3+XF23mm F1.4 R(F1.4, SS1/2900, ISO640 , PRO Neg.Hi)
続いては、浅草寺のほおずき市です。毎年7/9〜7/10に開催され、入谷の朝顔まつりと合わせて7/6〜7/10は下町七夕まつりとして知られています。この二日間は功徳日と呼ばれる縁日の中でも、「四万六千日」という特別な縁日となっており、1度の参拝で4万6千日分のご利益があるとされています。
また境内には100店舗ほどにも連なるほおずきの露店が立ち並びますが、これは江戸時代に芝の愛宕神社にて、四万六千日に当時薬用として用いられたほおずきを販売する市が立ち、それが各地に波及していったことが由来だそうです。
X-T3+XF23mm F1.4 R(F1.4, SS1/3000, ISO640 , PRO Neg.Hi)
こちらは絞り開放で撮影した一枚。色づき初めのほおずきにピントを合わせました。大口径レンズらしい大きなボケが被写体を浮かび上がらせ、まるで標準レンズのような描写を可能とします。また、後ろのボケ味も自然で被写体の邪魔をしません。
X-T3+XF23mmF1.4 R(F4, SS1/280, ISO640 , PRO Neg.Hi)
ほおずきは鉢の販売以外にも、袋売りも行っていました。ほおずきの実が覗いていたので、近くに寄ってF4で撮影。
『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』のウィークポイントとして、最短撮影距離の長さ(最短28cm)が上げられますが、実際に使用してみるとそこまで寄れない、ということはありませんでした。むしろ寄り過ぎると被写界深度が浅くなってしまうため、ちょうど良い距離感で撮影ができます。
X-T3+XF23mm F1.4 R+Black Mist Protector(F1.4, SS1/12799, ISO640 , PRO Neg.Hi)
X-T3+XF23mm F1.4 R+Black Mist Protector(F1.4, SS1/26001, ISO640 , PRO Neg.Hi)
こちらは夏らしく、ひまわり畑を訪れた時の写真。ここからはブラックミストプロテクターを装着して撮影しています。
1枚目では光源が画面に入っていないため、『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』の持つ開放からコントラストのあるパキッとした描写ですが、2枚目では光源が入ることによりハイライトやシャドウが抑えられ、オールドレンズのような描写になっています。上記でもお伝えした、このレンズの優しげな描写と相まってより印象的な写真に仕上げることが出来ました。
わざわざフィルターを付け替えなくても、光線状態を変えることで2通りの描写を楽しめるのです。筆者はこの組み合わせが気に入り、以降は常用するようになりました。
X-T3+XF23mm F1.4 R+Black Mist Protector(F1.4, SS1/2400, ISO640 , PRO Neg.Hi)
X-T3+XF23mm F1.4 R+Black Mist Protector(F1.4, SS1/3000, ISO640 , PRO Neg.Hi)
こちらは鯛みくじなどで有名な川越氷川神社で撮影しました。こちらでは2014年より毎年7月上旬から9月上旬まで、縁むすび風鈴と題して境内が数多くの風鈴で彩られ、川越の夏の風物詩となっています。
こちらも絞り開放で撮影しましたが、風鈴や紅葉の葉の質感をしっかり捉えながら、後ろの木漏れ日が玉ボケとなり心地よい雰囲気を醸し出しています。
『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』は円形7枚絞り羽根を採用しており、F5.6程度まで絞っても滑らかなボケ味を得られます。つい開放で撮影しがちになってしまいますが、被写界深度を稼ぐためある程度絞っても、十分なボケ味が期待できます。
X-T3+XF23mm F1.4 R+ND8(F4, SS15.0, ISO160 ,Velvia)
最後にお届けするのは、新潟県小千谷市片貝町にて毎年9/9~9/10に開催される、片貝花火大会で撮影した打ち上げ花火の写真です。
新潟と言えば日本三大花火とも名高い「長岡花火」が有名ですが、こちらの片貝花火も越後三大花火として数えられ、7月海の柏崎、8月川の長岡、9月山の片貝と呼ばれています。
正式名称は「浅原神社秋季例大祭奉納大煙火(あさはらじんじゃしゅうきれいたいさいほうのうだいえんか)」と言い、一般的な花火大会や職人が腕を競う競技花火大会と違い、奉納花火という種類に属します。町の人々や地元の企業など、各々が子供の誕生祝、結婚祝、家内安全、健康祈願、社業発展、物故者追善供養など、様々な思いを込めた花火を奉納し打ち上げるというものです。その数は2日間で1万5千発にも上ります。
とはいえ、奉納される花火の7~8割が尺玉(10号玉)と呼ばれる大き目なサイズの花火となっています。例えば東京都内の花火大会では、土地柄や保安距離の確保のため打ち上げられる花火のサイズには限度があり、その最大サイズが尺五寸玉(15号玉)です。つまり、東京で上がる最大サイズの花火がこの片貝花火大会では半分以上を占めるという、大迫力の花火大会となっています。
ちなみに上の写真は三尺玉(30号玉)の打ち上げです。尺玉以上となると花火の破裂音もすさまじく、三尺玉クラスでは地響きのような豪音が腹の底に響き渡ります。
X-T3+XF23mm F1.4 R+ND8(F4, SS9.0, ISO160 ,Velvia)
X-T3+XF23mm F1.4 R+ND8(F4, SS8.0, ISO160 ,Velvia)
撮影ではFUJIFILMのフィルムシミュレーション「Velvia」を一貫して使用しました。花火の繊細かつ豊かな色彩を写真に収めるには、鮮やかな色彩表現を得意とするVelviaがうってつけです。
目の前で一瞬のうちに咲いてしまう花火の色彩をしっかりと記憶し、瞼の裏で思い返す色味に限りなく近い表現をしてくれています。
X-T3+XF23mm F1.4 R+ND8(F8, SS15.0, ISO160 ,Velvia)
今回撮れた中で一番のお気に入りです。派手さは無いですが、細かく散っていく火花の跡や和の色合いが日本の夏を感じさせてくれます。
花火撮影のレンズ選びはフレーミングのしやすいズームレンズが選択されることが多いです。打ち上げ会場内では広角~標準ズーム、打ち上げ会場から離れて撮影する場合は標準~望遠ズームといった具合に。
片貝花火の場合、打ち上げ場所がほぼ一定の位置にあるため、打ち上げ中にフレーミングを変える必要はほとんどありません。さらに打ち上がる花火のサイズが大きいため、会場近くでの撮影となると換算35mmの画角は取り回しやすく便利でした。
これ以上広角側に寄せるとパースによる歪みが出てしまうため、片貝花火を見たままの印象で記録したい筆者にとって『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』はまさにベストチョイスでした。
X-T3+XF23mm F1.4 R+ND8(F8, SS18.0, ISO160 ,Velvia)
片貝花火最後の締めくくりは、正四尺玉(40号玉)の打ち上げです。国内で正四尺玉を上げる花火大会は、この片貝花火と埼玉県鴻巣市の「こうのす花火大会」のみとなっています。
三尺玉では地響きのような豪音と表現しましたが、正四尺玉はまさに爆発と呼ぶに相応しい凄まじさでした。思わず自らの姿勢を保とうと体が力んでいたほどです。眼前いっぱいに咲き乱れる大輪にあっけにとられ、気が付けば周りの観客が拍手を送っていました。たった一発の花火でここまで感動したのは初めてのことでした。
その凄まじさは撮影した写真にも表れており、花火の中心部だけが白飛びしてしまうほど。
悔しいので、また来年もこのレンズと共に来ようと思ったのでした。
いかがでしたでしょうか。少し長めの紹介になってしまいましたが、このレンズの魅力が少しでも皆様にお伝えできたなら幸いです。
余談ですが、『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R』は後継として2022年2月に『FUJIFILM フジノン XF23mm F1.4 R LM WR』が発売されています。こちらのレンズも使用したことがありますが、AFの性能が向上し、近接撮影性能もアップ、防塵防滴と痒い所に手が届く仕様となっており、FUJIFILMの新たな時代を担うに相応しいレンズとなっています。ご自身の撮影スタイルに合った1本をお選びいただければと思います。
今回は自分の苦手とする焦点距離と向き合ってみましたが、どんなレンズどんな焦点距離でも得手不得手があり、そこにどう向き合っていくかも写真の楽しみ方なのだと気づくことが出来ました。
最後になりますが、皆様の今後の写真ライフが良きものとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。