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【FUJIFILM×マップカメラ】X-Pro2担当者インタビュー : Part 2


Xシリーズのカメラは多くの方が「撮って出しの色がいい」と言われています。フィルムシミュレーションのクラシッククロームなんかも独特の発色で愛用者が多いという話を耳にしまが、その色の作り方など話せる範囲でお話していただいてもよろしいでしょうか?

上野氏:クラシッククロームは1970年代のグラフジャーナリズムの色調、当時のフィルムの色調を研究して再現したものです。フィルムで撮っていた頃は今のようにカメラ内でWB調整は出来ないので、例えばデイライトフィルムを色温度いくつだとどのくらい被るんだとか、ミックス光源で使った時のミックス光の割合によってフィルター補正はどうなんだとか、フィルムメーカーというのはそれを全部研究する訳なんですよ。こうなったらこうなる、という。そういう今までのノウハウが富士フイルムには全部ある訳です。

デジタルを使っている写真家さんが言うには、何でもかんでもデイライトに写真の色を直すのが正しいAWB(オートホワイトバランス)かというと、それは違うと言うんです。我々のAWBというのは「この光ならこういう風に色が被るよね」といったフィルム時代の経験を反映させています。おそらく色調・色の設計は各メーカーさんポリシーを持たれてやっていると思いますが、そこにWBを加えて最終的な画の色を作るノウハウというのはフィルムメーカーならではの技術だと思います。それがXシリーズには活かされているという事なんです。

そこが富士フイルムがいう『写真画質』というのに繋がってくるという事なんですね。

上野氏:もう一つ話を付け加えると、AWBで出している色温度をマニュアルで設定しようとしても出来ないんです。

え?それはどういうことなんですか??

上野氏:露出で言うと絞りやシャッタースピードはオートのものをマニュアルで再現する事は可能ですよね、同じ数値に合わせればいい。ですが当社のAWBの場合はマニュアルでは同じように再現できないんです。AWBに特有のWBの落とし方があるんですよ。 AWBでこの写真が撮れましたっていっても、それはオートだから出せるパラメーターで、マニュアルで出来るものとは別なんです。なのでオートでしか出せないWBというのがあるんですね。

つまり、WBの数値を変えて色を合わせようとしても、AWBの色とは同じにはならないと?

上野氏:その通りです。RAW現像ソフトでフィルムシミュレーションがあるものもありますが、それで再現しているのは主に色と階調です。そこにWBという要素が加わって最終的な色再現が決まります。なので、AWBを使用した場合は撮影時のAWBでないと表現できない色になることがあるんです。 ですので、どうやってもカメラ内RAW現像と一緒にならない場合があるというのは、「カメラ内でしか出来ないAWBがある」という理由がある訳なんです。

X-T1や今回のX-Pro2 に『ホワイトバランスブラケティング』という機能があるのですが、よくマニュアルでWBを変えればいいと言われるんですよ。でもそこはXシリーズの場合、AWBの色はマニュアルじゃ出ないことがある。なのでAWBで撮りたいけど微調整したいという時のためにAWBをバラして選ぶ事のできる『ホワイトバランスブラケティング』が用意されているんですよ。

ですので、Xの色の秘密はWBにあったりします。

これは知りませんでした!「フィルムメーカーだから色がキレイ」という風におぼろげに思っていましたが、実はAWBに色の秘密が隠されていたんですね。

ファインダーは「アドバンスド ハイブリッド マルチ ビューファインダー」と非常に仰々しい命名となりました。ギミックとしてはX100T搭載のファインダーを継承しているように思われますが、さらなる進化点を教えてください。

上野氏:長い名称ではありますが、これは言葉の積み上げなんです。最初のX100の時は「ハイブリッドビューファインダー」で、X-Pro1の時は「ハイブリッド マルチ ビューファインダー」でした。このマルチというのは倍率切り替えの事を差しています。次に「アドバンスド」。これはERF(エレクトリック・レンジ・ファインダー)と呼んでいますが、それを搭載したのがX100Tですね。でもX100Tは倍率切り替えは付いていないので「マルチ」ではないんです。そうなると「アドバンスド ハイブリッド ビューファインダー」になる訳です。今回のX-Pro2は全部入りなんですよ。アドバンスドシステムも入っていて、EVFとのハイブリッドもあって、倍率切り替えもあるので「アドバンスドハイブリッドマルチビューファインダー」なんです。

なるほど!言葉それぞれに機能の意味があるんですね。

上野氏:そうなんです。各単語に役割があるので、それを追っかけて考えると分かる訳です。 でも、たまに私たちも「マルチアドバンスド~だったっけ?」と順番を間違ってしまう事もあります。(笑)

確かに、頭で理解していてもなかなか言うのが難しい名称ですよね。

上野氏:日本語で言うと「変倍式エレクトリックレンジファインダー搭載型ハイブリッドビューファインダー」という事になると思うのですが、X100Tからその概念は引き継いでいますが流用ではないんですよ。X100系とX-Pro系では大きが違うという事もありますが、そもそもEVFの位置が全然違うのでファインダーの光学設計そのものが違うんですよ。なので単にX100系のものをそのまま大きくして積んでるという事ではないんですね。

ERFでは右下にNDフィルターの小窓が出てくるのですが、この上がり方もX100TとX-Pro2では全部違うんです。X100TはNDフィルターがスイングして出てきたと思うのですが、X-Pro2では、より位置決め精度を高めるために下から真っ直ぐ出るようになっています。

またEVF時の遮光シャッターの位置も違うんです。X100系はファインダーの前にシャッター出てきますので外から見ているとすぐ分かります。ですがX-Pro2ではファインダーのすごく奥の方でシャッターが閉じますので、X-Pro1とも違うんですよ。X-Pro2のファインダーに関しては流用パーツ0で完全新規設計になっています。

すごいですね、なかなかデジタルカメラのファインダーでここまで語れるカメラはないですよね。

上野氏:手のかかり方で言ったらここまでやっているデジタルカメラは、このクラスではあまりないと思いますよ。 X-Pro1は4年というライフがありましたよね、やっぱりロングライフで考えないと色々な所に手間隙かけて作れないですよ。もうX-Proシリーズはそういうカメラだと思っているので手間と時間がかかっている訳です。

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[ Category:FUJIFILM | 掲載日時:16年03月03日 11時01分 ]

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