【Hasselblad】フィルム散歩
妻「まさか、また新しいカメラじゃないでしょうね…」
私「ち、違うよ。試写するために借りてきたものです… 本当に。」
妻「……」
私「…… 行ってきます…」
慌てて家を出た私のバッグには、今回のお供、ハッセルブラッド SWCが…
中判フィルムカメラの雄、ハッセルブラッド。 その長い歴史においても特異な位置にあるのが、このSWCシリーズです。
「Super Wide Camera」の名の通り、超広角撮影専用カメラ。 代表的な500シリーズと形は似ていますが、こちらはレンズがボディに固定されていて、レンズ交換はできません。
装着レンズは、カール・ツァイス ビオゴン 38mm F4.5。 35mm判換算で約20mm相当になります。
ビオゴンは、対称型のレンズ構成を持つ広角レンズ。 レンズ鏡胴内部を横から見た時、前側のレンズと後ろ側のレンズが対称型になるように構成されています。
広角レンズの設計において、画像の歪み「収差」を少なく抑えることが出来る特性を持っています。 が、レンズ後玉から像を結ぶフィルム面までの距離を長く取ることが出来ず、間にミラーが入る一眼レフタイプのカメラには向きません。
そのため、このSWCにもミラーが入っていず、レンズのすぐ後ろにフィルムバックが装着される構造になっています。
…つまり、ファインダースクリーンでピントの確認をすることが出来ず、目測での撮影を余儀なくされるのです。 とはいえ、そこは超広角、パンフォーカス撮影でほぼほぼカバーできます。
ただ、超広角ゆえ、風景などを撮影する際、少しでも水平が傾いてしまうとかなり目立つ結果となってしまいます。 外付けのファインダーに申し訳程度に水準器が付いていますが、手持ち撮影で水準器を確認しながら水平を取ろうとすると、確実に酔います…
当時、他に較べるもののないその写りの素晴らしさから、プロカメラマン御用達のお仕事カメラであったのですが、プロでも使いこなしが難しいカメラとして有名でした。
丈夫な三脚に据え、しっかり水平を確認してシャッターを切る、これがSWCの正しい使い方と言えるのですが… まぁ、そこはそれ、素人の私が撮るのですから、ここはあえて手持ちで挑戦。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM ACROS 100
まずは、マップカメラのある新宿で。 手持ち撮影ですが、都庁はまっすぐ建ってくれました。 気持ち上向きでの撮影でしたので、こんな感じに。
せっかくの銘機、ちょっと遠出してとも思ったのですが、今はなかなかそうも言っていられない状況。 地元でのお散歩撮影になりました。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM ACROS 100
駐車場? …のはずなのですが… やはり、超広角、実際よりかなり広く見えます。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM ACROS 100
ちょっと後ピンか… 超広角でも近い距離の目測はなかなか難しいものです。
言い訳になりますが、今回の機体、レンズの距離目盛がフィート表示のものでした。 あらかじめ計算したメモを単体露出計に貼って、確認しながらの撮影。 …まぁ、それもまた楽しいものです。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
今度はピントOK。 500シリーズ同様、撮影途中でもフィルムバックを交換できますので、2つのフィルムバックにそれぞれモノクロとカラーを詰めて撮影に臨みました。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM ACROS 100
目についた路地をパチリ。 細かい葉っぱや路地の先の先まで細密に表されています。
勿論、デジタルカメラの高解像には及ぶべくもありませんが、フィルムでしかもスキャンした画としては大したものです。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
手前の葉と奥の枝と、実際の距離はそれほどないのですが、そこは超広角の画。 手前の枝ぶりが浮き上がって見えます。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM ACROS 100
SWCのビオゴンは、こういう直線的な建造物を撮った時に、その魅力をより感じる気がします。
デジタルのようなガチガチの鋭さとは異なるのですが、他のレンズでは出せないシャープさを表現してくれます。
それにこの、雲の微妙なグラデーションといったら…
近場の散歩の終着地は、駅ビル屋上にある小さな遊園地。
親子連れが数組いました。 気をつけないといけません。
ファインダーの形状上、構える時はカメラを顔の位置まで持ってこないといけないのですが、如何せん特徴的なフォルム、傍から見ると怪しさ満点です。
「怪しい人ではありません! ただ風景撮ってるだけですよ!」感を全身から発して、いざ撮影。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
「幸せの観覧車」なるものがあります。 でも、今回の主役は、この空。 超広角だとやっぱり広い! …当たり前か…
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
「うろこ雲」? 「いわし雲」? …どっちでしょう??
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
大漁!!
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
東急線の始発駅になります。 鉄柵の間にレンズを挟み込み撮ったのですが、水平が傾いてしまいました…
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
広い空の微妙な色合いが、よく再現されています。 陽が落ちても、子どもは遊び足りないようです。
Hasselblad SWC (Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5) FUJIFILM PRO 160NS
最後にこんな写真も… セルフポートレート? 完全にノーファインダーです。
本当に短い撮影散歩でしたが、SWCの魅力にはまるには十分な時間でした。
さて、このカメラをどうやって自分の愛機とするか… 立ちはだかるは…… 妻です…