【HASSELBLAD】 907X & CFV 100C
歴史を持つカメラは数あれど、今なお形を留めたまま存続するものは数えるほど。
そのひとつ、HASSELBLAD Vシステムの継承機「907X & CFV 100C」は2024年生まれの新しいカメラであるとともに、ハッセルブラッドの歴史を現代に刻み続けるための奇跡の子。
HASSELBLAD Vシステム用デジタルバックの「CFVシリーズ」が、2013年に一度終わりを迎えてから約11年、そして907X 50Cによる鮮烈な復活劇を見届けてから約4年、Vシステムはまた一つ歴史を積み重ねます。
ボディの姿形はまるでフィルマガジンA-12のよう。片手に収まってしまうコンパクトな体躯からは考えられないほど大きなセンサーを搭載し、最新のXCDシステムレンズはもちろん、往年のハッセルブラッドVシステムカメラにもデジタルバックとして装着することが可能です。ここまでは前モデルの907X 50Cと同じ。
しかし使ってみると進化した箇所が次々と明らかに。見た目だけでは図ることができないHASSELBLAD 907X & CFV 100Cの力、ご覧ください。
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
今回使用したレンズは38mm F2.5 V。さらに503CXボディに装着してCF 80mm F2.8との相性もチェックしてきました。Vシステムを継ぐカメラとしてこの使い方をせずに語るわけにはまいりません。
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
XCD38mmの実力は登場時すでに確認して知っているつもりではありましたが、この破綻なく表現する力と絞り開放で発生する減光をエッセンスにして生み出す絵画的な写真。これは何度経験しても鳥肌が立つのを感じます。
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
またHASSELBLADと言えばXPanから受け継いだパノラマ比率「65:24」が選択できるのも魅力。
風景では情報を横へ横へと広げる感覚、近景では上下を取り除いて画を整える感覚。
今回チョイスしたXCD38mmはその両方に対して有効な画角でもあります。
HASSELBLAD CFV100C + 503CX + CF 80mm F2.8
HASSELBLAD CFV100C + 503CX + CF 80mm F2.8
ここでCF80mmにスイッチ。
換算焦点距離はおよそ65mmとなり、普段フルサイズ35mmを標準としている私にとってはやや切り取る形の中望遠レンズ。6×6の標準レンズとしてのクオリティを期待しての選択かつ、同時にXCD38mmとのメリハリを考慮した構成でもあります。
撮影結果はご覧の通り。最新レンズと比較するとやや描写に柔らかさを感じる部分こそあれど、6×6で鑑賞するより少し狭い画角であってもなお感じられるこの空気感および立体感。おそらく自分が目で見ている風景に比較的近い解像感なので、先ほどの38mmより強いリアリティを伝えることができました。
正直な予想としてCFV 100Cの1億画素センサーで受け止めるには、VシステムCFレンズと言えども粗探しをする写真になってしまわないかが心配でした。しかしこれは完全な杞憂。むしろ面表現のテクスチャ、水の質量感を語る上ではこちらの方が優れているのではと感じるほど。圧倒的な力を持つセンサーでありながらレンズをも選ばない優等生なのか、それとも時を経たとしてもやはりハッセルレンズだからこそなせる業か。いずれにしても最高の組み合わせであることは間違いありません。
HASSELBLAD CFV100C + 503CX + CF 80mm F2.8
前モデル同様、デジタルバックとして運用しても不便さを感じることはありませんでした。ライブビューをするためにはレンズとバックシャッターを解放する必要があるので、基本的にはフィルムバックが付いている場合と同じように撮影する形になりますが、とはいえ露出さえ測ることができればフレーミングもピント合わせもウエストレベルファインダーのおかげで直感的。また、半透明のファインダーマスクが付属しており、それを500シリーズのファインダー内に落とし込むことで撮影範囲が分かるようになっています。以前は黒色のマスクであったのに対して、半透明の材質になったため撮影範囲外の風景も確認することができるようになりました。覗き込んだ時の見え方はさながらレンジファインダーのようで「6×6をクロップして使っている」という少しもったいない気分が全く沸き起こりません。小さな変化ではありますが撮影者に対する非常に有効な配慮の一つです。
その他にもバックが外れてしまわないようにセーフティの機構が付いたり、ホットシューが使えるようになったりと前モデルで叶わなかった部分に関してもこのカメラは解消されています。動作の安定性や反応のレスポンスもまた1段階上がったように感じたので何もストレスを抱えることなく撮影に臨むことができました。
最新のカメラシステムの中だけであればいざ知らず、何十年も経過したボディやレンズと組み合わせてなおここまで快適に、そしてそれ以上に高い成果を生み出す事は並大抵の技術、信念では叶わぬこと。本来のフィルムカメラとしてのラインナップは終えてしまいましたが、今この時代だからこそできる楽しみを噛みしめる事となりました。
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HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
HASSELBLAD 907X&CFV100C + XCD 38mm F2.5 V
XCDレンズを付けても500シリーズデジタルバックとしても、1台で2度楽しめるカメラ907X & CFV 100C。
ハッセルブラッドユーザーの一人としてこのカメラが発売されたことを嬉しく思います。
100年の歴史の切先。
1億画素を自由な楽しみ方で。