「SLシリーズは、写りが素晴らしいのは知ってるけれど、どうも重くて…」
お客様とお話ししていると、度々こんなお声をいただきます。
かく言う私も実は同じように考えていて、永年M型ライカを使いながらSLシリーズには手を出してきませんでした。
ところが先日、SL2に軽量のズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.を付けて撮影する機会があり、その取り回しの良さに感動。時間を忘れて撮影に没頭するという体験をしました。
一度撮影欲に火が付くと、もうじっとしていられません。
続いて、同じ標準50mmでSLシリーズのレンズラインナップの中ではかなりの重量級であるズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.を付け撮影に繰り出しました。ここでは体力の無さを痛感しながらも、自然なボケ感によって被写体が浮き上がる描写にすっかり魅了されてしまいました。
それぞれ詳細は、下記のThe Map Timesに。
『【Leica】軽さが撮影欲を生む! ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.という選択』
『【Leica】ライカ好きスタッフが語るライカの魅力 vol.12 ~SL2 + SUMMILUX SL50mm F1.4 ASPH.編~』
さて、ここまで来たらもう1本、アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.を試さないではいられません。
本来ならSL50mmの中でも最初に試すべき1本だとは思いますが、どうも天邪鬼な性格が出てしまいます…
ボディに装着した時の見た目のバランスは、3本の中でも1番しっくりしているような印象を受けます。
ですが、思ったよりズッシリ感のあるレンズです。
以前のブログでも載せましたが、3本並べるとこんな感じ。
左から「ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」約402g、「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」約740g、「ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.」約1065gとなります。およそ300gずつの差。
ちなみに、SL2ボディは約835g(バッテリー含まず)あります。
・・・
では、SL2にアポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.を装着し、撮影に。今回は、東京駅から有楽町駅を抜けて銀座方面に向かいました。
丸ビルを出た辺りで1枚。何気なく撮ったものですが、陽を透かした葉の1枚1枚が鮮明に。直射光が入りフレアが出ていますが、僅かなものでよく抑えられています。
距離は10m弱。絞り開放で撮影していますが、細かな文字まではっきり読み取れます。
東京国際フォーラム手前のガード下にて。
SL2で測光方式「多点」を選択していると、晴天時など実際の風景より明るめに写ることが多々あります。2/3段くらいアンダーにして撮影した方が、見た目の印象に近くなるような気がします。
フィルムモード「STD 標準」ですが、レンガの色味や影の濃さなどほどよい感じです。
同じ場所で「BW Nat モノクロ」に切り替えて。こちらも2/3段マイナス補正。
こういう少しゴミゴミしたところは、モノクロモードにすると雰囲気が出ます。
こちらはマイナス1段まで落としましたが、暗部も潰れることなく写し出されています。
鉄柱の汚れまで手に取るように再現されていて、学生時代暗室に籠って現像作業に没頭していた身としては、この質感描写はたまりません。
絞りF2.8と1段絞っただけですが、背景はそれほど大きくボケてはいません。それでいて合焦面が際立って見えます。
ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.がボケによって被写体を背景から浮き上がらせていたのに対し、こちらは解像力の高さで被写体を浮かび上がらせている気がします。
東京国際フォーラムを抜けるところで、上を見上げて。
午後4時近くの斜陽が、壁にくっきりと影を映していました。
今度は下を。ガラスの向こうには、地下に下りていく階段があります。
足を伸ばして、銀座方面に向かいます。
「銀座の柳」の影 露出補正なしでもこれだけの陰影が。陽の強さを感じさせます。
銀座は埋立地ゆえ水分量の多い地盤で、他の街路樹が育ちにくく柳に植え替えられた… なんて話は、子どもの頃よく銀座に連れてきてくれた父から聞いたものだったか。当時は日曜日の歩行者天国が嬉しくて、柳なんか全く目に入っていなかったけれど…
鮮やかな青が気に入って、何枚かシャッターを切りました。落ち着いたトーンで再現されています。
気がつくと並木通りまで来ていました。平日のこのくらいの時間は人通りの少ないところと認識していたのですが、然にあらず。外国の方が増え、結構賑やかな通りとなっていました。
余分な色を消したくて「BW Nat モノクロ」モードに。
年季の入ったシェード、それを微細に描写しています。
絞り開放F2ですが、背景のボケはこの程度。それでいてピント合焦面の立体感は半端ありません。
こちらも絞り開放で。口径食によるそろばん玉状のボケが出ました。
背景に引っ張られてかなりアンダーになりましたが、そのぶん電球内のフィラメントまで写りました。
壁や天井の汚れ?が階調豊かに再現されました。
アポズミクロンでモノクロモード、すっかり病みつきになりました。
ガラス越しでもこの描写。靴の表面についたチリまで写し出しています。
あまりに鮮鋭に写るので、あえてこんな写真を撮りたくなるのはやはり天邪鬼でしょうか…
大通りは人だらけだろうな、と路地を見つけては入っていくうちによい時間になってしまいました。
撮影はここで切上げ。家に帰り、PCで本日の撮影画像を見直し、改めてアポズミクロンの解像力の高さに感嘆した次第です。
今回、撮影の間は移動中もずっとカメラを首から提げた状態でした。ズミクロンの時に比べ首への負担は感じましたが、撮影が進むにつれそれも忘れてしまいました。
というのも、SL2のグリップがちょうよい握りやすさで、レンズを装着した時のボディバランスもよいので、数値ほどの重量を感じずに撮影に没頭することができました。
ここまで3種のSL50mmを試してきました。
ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.は、とにかく軽く取り回しの良いレンズ。ヌケの良い描写で、スナップ撮影に最適です。
ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.は、自然なボケ味が魅力。滑らかなボケによって被写体を浮き上がらせることができ、ポートレート撮影等に向いているかと。
そしてアポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.。圧倒的解像力で被写体を立体的に描写します。特にモノクロ撮影では、諧調の豊かさと相まってドラマチックな画を描き出してくれます。
場面によっての使い分けが楽しそうな3本、揃えてみたくなりました。