あの夏の熱狂から早くも3年が経過し、舞台はParisへ。
この夏も多くのアスリートが熱狂と感動を私たちに届けてくれています。
そしてあの夏、世界の舞台となった「東京」は、国際都市「Tokyo」として世界で輝き続けています。
今回はそのTokyoの地をLeica (ライカ) ズマロン M35mm F3.5(通称:サンハンズマロン)とともに巡ってきましたので、その様子をお伝えしていきたいと思います。
では、最後までお付き合い下さい。
・・・
今回使用した機材
SONY (ソニー) α7S ボディ ILCE-7S
Leica (ライカ) ズマロン M35mm F3.5
SHOTEN(ショウテン) マウントアダプター ライカMレンズ/ソニーEボディ用 ヘリコイド付 LM-SE M (L)
・・・
今回はSONYのα7SにSHOTENのマウントアダプターを間に噛ませて撮影を行いました。
実は筆者、普段はFUJIFILMのXマウントを使っているのですが、浮気をいたしました…
少し言い訳をさせてもらうと、フルサイズセンサーの利点を最大限に活かした撮影をしたかったかったからです。
それはまず1つ目に、クロップせずにレンズの焦点距離をそのままの画角で使えるという点、そして2つ目にレンズそのものが持つ描写を素直に写し出せるという点です。
上記の2点について補足説明すると、XマウントはAPS-Cセンサーのため画角が約1.5倍にクロップされてしまいます。
そうすると、画質が一番良いとされるレンズの中心部のみを切り取ったような写りになり、オールドレンズならではの描写をスポイルしてしまうことが考えられるからです。(逆にレンズ中心部の良いところだけを使えるという意味で、敢えてAPS-Cセンサーを選ぶこともあります)
この2つのメリットを活かすため、フルサイズセンサーを搭載したα7Sを母艦機としました。
それに加えてα7Sは約1200万画素と画素数は控えめながら、全感度で広いダイナミックレンジを実現しているため、色の濃淡で表現するモノクロ写真を撮るにはピッタリなカメラになっています。
さっそくα7Sにズマロンを装着してみるとなんとも可愛らしい格好を披露してくれました。
これは散歩に軽々と持ち出せるコンビネーションではないでしょうか。
αシリーズ初代にだけ見られる漆黒の直線的なボディにシルバーの丸みを帯びた鏡胴が存在感を引き出しています。
では、この可愛らしいカメラを引き連れてTokyoの街を散策してみることとしましょう。
気温が35度を超える中、Tokyoの西北部に位置する目白台から神楽坂周辺を巡りました。
少し歩いただけでも汗が滴り落ちてくる日は、少しでも涼を求めて色のない世界にでも飛び込んでみたいものです。
そんな思いから今回は全てモノクロで…
と言いたいところですが、ズマロンがつくられた年代(1946年〜1960年)はモノクロ写真が一般的であり、そのモノクロ写真に合わせたレンズ設計がさせているため、レンズの描写を最大限引き出すためにはモノクロでの撮影が最適であろうと考えたからです。
また35mmという画角は当時としては広角レンズの部類であり、4群6枚とレンズ設計にも凝った跡が窺えます。
上の写真のようにパースペクティブも十分に発揮されており、立体感のある写りを楽しめます。
さて、この写真は一体どこの建物を切り取ったものか分かりますでしょうか。
東京オリンピックの競技場として使われた国立代々木競技場に似ていますが、こちらは教会の屋根を写した写真になります。
国立代々木競技場とこの教会はなんと同じ設計者、そして同じ年の竣工です。
世界的建築家の丹下健三が設計し、オリンピック開催年の1964年に竣工しています。
どちらの建物も柱を1本も使わない無柱空間を実現しており、一体感のある内部空間を創り出しています。
当時としてはこうした建築手法は例がなく、まさしくTokyoから世界へと発信したモダニズム建築の礎となった建物なのです。
絞れば周辺まで良好な画質を得ることができるため、こうしたパースを活かした建築写真にも力を発揮するレンズです。
さすがLeica特有の描写力を存分に発揮してくれています。
コントラスト、色乗り、解像力、どれをとっても一級品で、物の質感をリアルに写し出せるため、有機質である木材、そして無機質の金属が混ざりあった難しい被写体表現も難なくこなします。
また、ズマロンはLeicaのオールドレンズの中では比較的階調が豊かということもあり、扉の木目の出方や金属の取手の立体感にこのレンズの持つ表現力が凝縮されています。
ズマロンの弱点として挙げられるのは最短撮影距離が1mという点です。
1mともなると撮影できる被写体が限られてしまい、表現の幅もなくなってしまいます。
しかし、今回レンズとボディの間に噛ませたSHOTENのヘリコイド付きマウントアダプターLM-SE M (L)を使えば、5mmの繰り出し幅があるため、物理的に最短撮影距離を縮めて撮影することが可能になります。
このマウントアダプター1つで、もっと幅広い撮影表現ができるようになるため、撮影が楽しくなること間違いありません。
光の捉え方も優秀です。
前述の通り、ズマロンは階調表現が豊かなため、ハイライトとシャドーの微妙な境目もグラデーション豊かにそつなくこなしてくれます。
こうした描写表現ができる背景には、広いダイナミックレンジを持つα7Sの恩恵も受けていると思われます。
これだけ寄って撮影すると、やはりオールドレンズらしいボケ味をしています。
多少背景がグルグルボケでうるさくも感じますが、オールドレンズならではの醍醐味でもあるため、そこはご愛嬌です。
フレアやゴーストなどのいわゆる光害も発生しますが、これもまたコーティング技術が今より発達していなかったたオールドレンズの宿命でしょうか。
ですが、こうしたフレアやゴーストが写り込んだとしても嫌な感じを微塵も感じさせないところにこのレンズの不思議な力を感じます。
むしろ、現代のレンズにはあまり見られなくなったものの発生によって表現の幅が広がっているようにも感じてしまいます。
散策をしているとなんとも涼しげな場所を見つけました。
水辺を散策すると自然に気分がリフレッシュされ、英気を養うことができます。
せせらぎの音や水の流れなどの自然界に存在する「1/fのゆらぎ」がそうさせるのでしょう。
余談ですが、Tokyoは水の都とも称されています。
江戸時代から江戸城を中心としてまちの隅々までアクセスができる水路が敷かれていたり、世界でも類を見ない長さの上下水道が引かれたりと世界でもトップレベルの水利技術が発展していたそうです。
そうこうしている間に神楽坂までやってきました。
江戸時代に花街・門前町として栄えた神楽坂には古い地割が今もなお残っており、商店街から少し脇に入ると石畳の路地を散策することができます。
こうした路地裏には古くからの料亭などがひっそりとお店を構えています。
現代の街並みと古い街並みが共存した神楽坂は、多様性を受けいれる街としても新たな側面を見せています。
それが、フランス人の存在です。
1952年に東京日仏学院が創立されたことで、多くのフランス人教師が移住し、フランス文化がこの地に浸透しました。
そして今ではフレンチの街としても知られるようになり、街中には高級フレンチレストランから気軽なビストロまで多種多様なフランス料理店が軒を連ねています。
オリンピックイヤーの年だからこそ、Tokyoにいながら Parisの雰囲気を感じられる神楽坂を訪れてみるのはいかがでしょうか。
最後に、ズマロンはLeicaのレンズの中でも比較的安価に購入することができるため、Leicaを使ってみたいけど高価でなかなか手が出せないという方にとっては大変おすすめのレンズです。
F値が3.5と控えめながら、Leica特有のエモーショナルな画を味わうことができるため、Leicaの描写を手軽に手にしたい方はまずこのレンズを入り口にしてみてもいいのではないかと思います。(35mmの画角だと他にもエルマーという選択肢もありますが、単純に描写性能だけで比較するとズマロンに軍配が上がります)
また、外観についても金属の鏡胴でずっしりとしていている割にレンズ自体が小さいので、今回使用したα7Sとのバランスも非常にいいと感じました。
筆者の体感としては歩きながら撮影していても撮影疲れすることもなく、1日中肩から下げていても苦にはなりませんでした。
なんといっても暑さを忘れるほど撮影自体が楽しかったです。
マニュアルレンズのためピント位置は毎回手動で合わせなければいけませんが、開放がf3.5なのでシビアにピント面を合わせる必要がないのも初心者にはうれしいポイントではないでしょうか。
ぜひ一度、高級感のある外観と写りの良さを手に取って体感していただきたいと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
この記事が皆様の好奇心を刺激し、
それではまたお会いしましょう。