【Leica】ヘクトール73mmにフィルターを付けたい!
マップカメラが提供するカメラ情報共有サービス【EVERYBODY コンシェルジュ】では、皆様からの撮影機材に関する質問を大募集しております。
皆様からの質問に対して回答するのは我々スタッフではなく、対象の機材をお持ちのお客様!
つまり、実際にご使用いただいているお客様の「生の声」を聞くことができます。
欲しいけど使用感が気になるあの機材のこと、持っているけどこんな使い方は出来るのだろうかという疑問、などなど。
ぜひ、その機材のオーナー様に質問してみてください!
さて、今回のブログでは、最近ご投稿いただいた質問の中から、マップカメラスタッフでも知らなかった内容や面白いと思った「質問」、および「回答」について実際に検証して確かめてみます。
記念すべき第一回目はこちらのレンズ。
「Leica ヘクトール 73mm F1.9」の、フィルター装着問題についてです。
1930年ごろにポートレートを目的として作られたとされるハイスピードレンズであり、このレンズが写し出す独特な雰囲気の写真は、近年のソフトフォーカスブームと相まって、大変な人気があります。
製造総数の少なさもさることながら、鏡胴の部分ごとに仕上げが異なる種類が複数存在することもあり、理想の個体を見つけ出し手に入れることは困難を極めることでしょう。
さて、そんなヘクトール73mm。
自分が理想とする個体が手に入ったとすればもちろん、前玉を保護するためのフィルターはなんとしても装着したいところ。フィルター径39mmのレンズである為、特殊な径のフィルターを使用する必要はありません。
では実際に装着して検証してみます。
上の画像がフィルターを装着した際の画像です。
このように、フィルター自体は問題なく装着できました。
フィルターが装着できたとなれば、キャップやフードも併用したいところ。
ヘクトール73mmのカブセ型キャップは、レンズの先端部に直接装着することはできません。
キャップの装着には付属のレンズフードを逆付けし、その上から被せる必要があります。
逆付けすることによって、撮影しない状態においてはフードがレンズの形とぴったりと重なり、非常にコンパクトに収納することが可能です。
焦点距離が長いレンズほど、フードを含めた全長も長くなってしまう傾向がありますが、楕円形のようにも感じられるこのフィットした収納感は約90年前に施された機能美です。本当に美しいですね。
しかし、ここで少々厄介な問題が発生します。
フィルターを装着した状態でこれらを併用しようとすると…
なんと、フィルターの厚みが邪魔してしまい、キャップを併用することが出来ません…!
フィルターの厚み自体は僅かなものですが、ヘクトール73mm用のカブセキャップは更に薄いものです。
このように横から見てみるとわかりやすいのではないでしょうか。
フィルターの厚みによって本来キャップが固定されるはずの深さまで被せることができません。
当時のスタイリッシュなフードとフィルター、これらもレンズ同様見つけることすら難しい代物です。
貴重かつカッコいい、こういった付属品もぜひ併用したいものですが…
なんとか打開策を探してみます。
通常のフィルターを装着した時はカブセキャップを併用することは叶いませんでした。
では、こういったものではどうか、検証してみます。
「U.N eins SUPER PROTECT FILTER 39mm」です。
このフィルターは通常のフィルターのように重ね付けを想定した、先端のねじ切りを省き、全長を限界まで小さくしたフィルターです。装着時の厚みは僅か1.2mm!
まるでレンズに張り付いているかのようにも感じられるほどの薄さです。
このフィルターであればあるいは…?
と思いましたが…やはりカブセキャップを装着することはできませんでした…
逆付けしたフードの先端、ごくごく僅かにフィルターの方が飛び出してしまい、その厚みによってカブセキャップのホールド力が効かないようです。
目視ではほぼ問題なく装着できているキャップも、ごくごく僅かなフィルターの厚みによって緩くなってしまい、常時装着し続けるような使用は困難でした。
こうなれば最後の手段。
どうしてもフィルターとキャップの両方を併用したいという場合は奥の手があります。
その方法とは、通常の39mmフィルターと、現行の39mmキャップを使用する方法です。
通常のフィルターであれば内側に重ね付け用のネジが切ってありますので、そこを利用して装着可能な現行のキャップを付けてしまうということになります。
もちろんこのキャップであれば、フード無しの状態、フードを逆付けした状態、どちらでも装着できるので、少々見た目が不思議な感じにはなってしまいますが安心感はありますね。
さて、今回のお題であるヘクトール73mmでのフィルターとキャップの併用ですが、現状では純正カブセキャップとフィルターの併用方法を見つけることはできませんでした。
(同じ径のもっと深いカブセキャップがあればフィルターの厚みなど意に介さず装着できるのではないか…)
(もっともっと薄いフィルターを探せばカブセキャップもつかえるんじゃないだろうか)
(そもそも個体差の激しいパーツ。薄枠フィルターであれば装着できるカブセキャップもあるかもしれない…)
単純な構造であるが故に、空想の中での打開策は幾つも浮かんできますが、どれもまだ夢物語。
ちなみに、当時はヘクトール73mm用カブセフィルターというものが存在したようです。
安心を優先してフィルターと現行キャップを使用するか、それとも見た目のカッコよさを優先してフィルター無しで挑むか…どちらを採用するかは目的次第、でしょうか。
・・・
それにしても、当時のライカ、いえ、ライツの技術には驚かされました。
ご覧いただいた通り、カブセキャップの厚みは非常に薄く約5mmほど。内側にはホールド力を高めるための赤いフェルトが貼ってあり、逆付けフードに押し込むと「ギュ」という心地よい抵抗のあと、キャップが固定されます。
固定と言っても、もちろん指でつまんで引っ張れば簡単に外れる程度のものではありますが、収納時や持ち運びの時に勝手に外れてしまうような代物ではありません。今回は非常に状態が良い個体で検証することが出来ました。
フィルターとの併用は難しくとも、当時のアクセサリーを使用できるというロマンには、代えがたい魅力があります。
そもそもセットで手に入れることが簡単ではない組み合わせ、見かけましたら是非お手に取ってみてください。