【Leica】マップカメラが選ぶライカレンズ10 ~Leica Elmar M90mm F4 沈胴~
2023年2月20日、Leica Boutique MapCamera Shinjuku は10周年を迎えます。
マップカメラのブログサイトであるTHE MAP TIMESでは、よりライカの世界を楽しんでいただけますよう、専門店スタッフによる関連記事や動画コンテンツを順次掲載してまいります。ぜひお楽しみください。
さて、マップカメラが選ぶライカレンズ10ということでスタッフ一押しのレンズをご紹介させていただきます。
今回ご紹介するのは「Leica Elmar M90mm F4 沈胴」です。
Leitz黄金期に販売され未だにその虜になるファンが後を絶たない本レンズ。
一体何がそこまで人々を惹きつけるのでしょうか。
その魅力をひとつずつご案内させていただきます。
きっと読み終わることには次のレンズの選択肢に沈胴エルマーが入っているはず。
まずはレンズのプロフィールをご紹介いたしましょう。
1954年発売。固定鏡筒と沈胴鏡筒が発売され、人気を二分しながら、どちらも名作として語り継がれ現在に至ります。
1954年、何の年かピンときた方はよく訓練されたライカギークです。
そう、現在に脈々と受け継がれるM型の初号機、M3の発売年です。
M3の発表と同時にM3用として用意されレンズフードとともに速写ケースに入るコンパクトかつ精巧な造りのレンズとして人気を集めました。
写りはもちろん、”モノ”としての価値も内包した黄金期を象徴する一本なのです。
M3に装着。
“当時物”や”当時合わせ”にこだわるのはオタクの性でしょうか。
沈胴部にM3同様のグッタペルカが用いられているのが非常に好印象。
ヘリコイドは固定鏡筒のズミクロンM50 1stや、貴婦人と言われるズミルックスM50初期型の先駆けとなっていることが見て取れます。
ヘリコイドの山部分にギザのついた、貴婦人でいうところの逆ローレットは好き嫌いがわかれがちなポイントです。
沈胴レンズですので持ち運び時はコンパクトにすることも可能です。
まるでズミクロンM50mmのようなサイズ感。
そして全体を通して見た時に気付くシルバーの美しさ。
M型では一口にシルバーと言っても世代ごとにそのニュアンスが違います。
やはりライカはボディとレンズを同じ時代に合わせるのが正義だなぁ、とひとりごち。
沈胴機構は非常に優秀です。
エルマーL50mm F3.5で鏡筒を伸ばし切らずに撮影しミスショットを連発した方、ご安心ください。
しっかりとユーザーの意見を吸い上げ改善してきています。
本レンズでは鏡筒を伸ばし、右に回しロックした状態でないとヘリコイドが回らないというギミックが仕込まれています。
前作で起きた失敗をしっかりと改良してくる。先述のグッタペルカもこの沈胴機構も、ライカが愛される理由であります。
余談ではありますが、沈胴レンズはフィルム時代のボディを前提に作られています。
デジタルボディでは内部機構に接触し傷や破損の原因になるだけでなく、センサー上に鉄粉やチリが落ちる原因となります。
絶対に沈胴させずにご使用ください。
M3に合わせ最短撮影距離は1m。
ヘリコイドを最短まで回すと鈍いポリッシュの鏡筒がせり出してきます。
一本のレンズに何種類の表面加工を施すのだろう、どこまで手を入れれば気が済むのだろう。
ライカの果てしない美意識、そして情熱が少しでも伝われば幸いです。
一通り外側のお話をさせていただきました。
肝心の写りですが、これもまた滅法良いのです。
若干の逆光でフードをつけずに開放で撮影。ボディは全てM11です。
90mm F4、最短は1mですのであまり大きなボケは狙えません。
しかしながら、実用性を第一に作成された質実剛健な写りと、輪郭が強めの小ぶりなボケは必要十分。
この雰囲気でさらなるボケを狙いたければズミクロンM90 1stも良いでしょう。
同じく開放で撮影。
逆光でのふんわりとした雰囲気から一変。ガラスの透明感や硬質さを捉えつつも、しっとりとした雰囲気を持っています。
シャープでありながらその時代の空気を纏っているように感じます。
合焦部は開放・周辺でもしっかりシャープでありながら、なだらかな後ボケでは光が滲み広がるような上品なボケ味。
90mmという画角はポートレートや花・虫などのクローズアップに用いられますがスナップでも活躍してくれます。
50mmよりももう一歩二歩踏み込んだ画角はより被写体をはっきりとさせ、主題を明確にしてくれるでしょう。
元よりシャープな本レンズですが、少し絞ると更にシャープな世界を見せてくれます。
順光では彩度が高く、しゃっきりとした描写を。
逆光ではフレアでふんわりとした描写を楽しめます。
10周年を迎えるLeica Boutique MapCamera Shinjuku。魅力的なコンテンツの発信に努めてまいりますので、今後もよろしくお願いいたします。