【Leica】気になるレンズ撮り比べ。 -ズミルックス M35mm F1.4 ASPH. 編-
レンジファインダーの悲願とも言える0.7mを越えて「寄れる」レンズが続々と生まれる今日この頃。ライカではアポズミクロン35mmや一部ズミルックスの最新世代などがその特異点にあたります。そんな中でもひときわ人気を誇るズミルックス35mm。世代を遡れば現行モデルは第5世代となりますが、1st、2ndを過ぎればもう第3世代から「ASPH.」つまり非球面レンズが採用されます。
今回は気になるズミルックス35mmASPH.を3世代遡って比較検証。
最初に非球面が採用された頃からすでに完成している写りと評判でしたが、さらにこの2世代で何が変わったのかご覧ください。
・3枚組の写真は全て、上から下へ順番に新しくなるようになっています。
・ズミルックスM35mmは最新モデルが5世代目、今回使用したレンズは古い順に「3rd」「4th」「5th」と記載します。
・使用したカメラはLeica M11です。設定はすべて同じかつレンズプロファイルオフ、絞り開放で行いました。
まずは遠景、それと最短付近の前ボケを検証。
遠景については殆ど比較のしようがありませんが、3rdと5thを比べるとどうやらシャープネスが上がっています。
また前ボケは比較的顕著で、世代を経るにつ入れて歪みが改善していることが見て取れます。
最新世代になったからといって完璧に取り除かれている訳ではありませんが、この味こそがライカの面白さ。
続いて最短。5thは0.45mまで寄れますが、3rd、4thの旧世代に合わせて0.7mで撮影しました。
空に向けて逆光、後ろボケも多い被写体を選択しましたがどの世代も上々の写り。
ただし最短撮影という事もあり、FLE採用の4thになって少し描写が改善しているように見えます。
大きく差が付くと思っていましたがこれは意外な結果です。
次は気になる逆光耐性。
こちらも上から順番に3rd、4th、5thです。これまでの写真より差が出ました。
3rd、4thは色こそ異なるものの盛大なフレアが画を飾っており、最新の5th世代ではフレアを出そうと頑張っても殆ど出せない印象。
撮影時は全て開放・フード無しで統一しているので、完全な逆光は仕方ないとしても、3rd、4thに関してフレアを出したくない場合は
フードを使用する事によって改善する場面があるかもしれません。
とはいえ今回の撮影ではこの写真のようなド逆光でしか大きな影響を感じることはなかったので、
万が一フードが無くてフレアが出てしまっても良い味付け程度。どうしても気になる場合は問答無用で最新5thの選択がおススメです。
ボケが気になる被写体、どの世代も心地よい個性で作品に仕上げてくれる印象。
この3枚では背景の下の方、ボケの中の緑で比較すると最新5thの色のノリがやや良いように感じられます。
比較はこれで最後。個人的にライカレンズの良さも悪さも一番出ると思っている5m付近です。
合焦面はどの世代も素晴らしい描写、なのでここで比べるべくは背景のボケ方。
微妙な差と思われるかもしれませんが、世代を経るにつれてボケの歪みが無くなっています。ブレ感が無くなると言っても良いでしょう。
それはつまり裏を返せば少し硬く見えるということ。ピントと背景の雰囲気に乖離が欲しければ4th、3rdと遡った方が感じやすく、
反対に画全体の雰囲気を整えて仕上げたい場合に白羽の矢が立つのは最新世代といったところでしょうか。
微妙な差、でも絶対に譲れない嗜好の世界。
いかがでしょうか。「ほとんど差が無い」「寄れるなら最新だけど…」と迷われる方の多いズミルックス35mmASPH.3本ですが、
今回の検証で目標が定まった、あるいは想定していた世代じゃなくてもいいかも、と思考していただける指針になれば幸いです。
どの世代も魅力的な描写である事は言うまでもありませんが、この優秀な3本のレンズ選びに関してあえて総評するのであれば、
まず逆光耐性が欲しい、または最短焦点距離が短い必要がある場合は絶対に最新、5th。
最短付近の描写を向上させつつ、でも0.7m止まりで良いのであれば4th。
逆光時のフレアに色が乗って欲しくない、でもオールドの癖はできるだけ堪能したい、であれば3rd。と言えます。
ただしこれらはあくまで写真の写りに関しての評価。
ここに見た目の好み、重さ、質感、年代、金額、これらを組み合わせて検討できるのがライカの面白いところ。
ぜひあなたにぴったりの1本を見つけてください。
ちなみにオールドレンズ好きの私、個人的には3rdが好み。
しっかり出て色が薄いフレアの魅力や、実はほんの少し0.7mを割って寄れることにも気がついたのでこのチョイス。
また余談ですがこうなってくると気になるのは「ズミルックス M35mm F1.4 ASPHERICAL」通称“フルスペル”の存在。
1988年からごく短い期間、またごく少数において職人の手磨き非球面レンズを2枚も採用して世に出た幻のレンズのことです。
こちらも今後試す機会があれば比較して記事にいたしますので楽しみにお待ちください。
最後に何枚か比較無しで写真を掲載します。
どの世代の写真か予想しながらご覧ください。
上から5th、3rd、4th、4th、5th、3rd、でした。