昨年の暮れに「Leica M11-P」が発売されて早4ヶ月ほど。“Pを冠するライカ”らしいトラディショナルな躯体然り、約6000万画素の超高画素センサー然り、これ以上ないほど完璧に近づいたMは人々の夢であり目標であることは言うまでもありません。
さて、そんな時分にご紹介する「Leica M10-P」。後継機が発売されたのでちょうど一世代前のカメラと言っても間違いないでしょう。約2400万画素のセンサー搭載、M10からマイナーチェンジされたモデルで、特筆すべきは今日まで採用され続けている静音シャッターとタッチパネル。現行カメラでは当たり前の機能ですが、どちらの機能もMで搭載したのはこのM10-Pが初でした。発売は2018年夏、もうすぐ6年が経過することになります。
3月の関東はまさに三寒四温。
カメラの紹介とともに、追い越しつつある冬に後ろ髪を引かれシーズン最後の温泉旅行へ。
使用したレンズは「エルマー35mmF3.5」と「ズミクロン50mmF2固定鏡胴」の2本です。
収集癖のある自分が珍しくこれ以上欲しがらないのは、この2本がそれぞれ個性を持ちつつあまりにも優秀だから。
無論、時間の問題だとは思いますが。
草津温泉はまだまだ雪化粧。
冷たい空気と麗らかな日差しが同居するこの時期が一番心地良かったり。
M10-Pを買ったのは昨年の中旬。M11が現行機として展開され、もしかしたらM11-Pが出るかもしれないと想像できるくらいの頃だと記憶しています。このタイミングでわざわざ旧機種を買ったのは、待ちきれなかったのも正直なところ。しかしそれだけで片付く話ではないので、少しだけ私が思うM10-Pの良さを語らせてください。
ひとつ目。まず前提として最新のM11のセンサーはオートホワイトバランスのJPEG撮って出しでさえも非常に洗練されており、M型史上初の6000万画素で高精細に写す事ができます。オールドレンズでも最新のレンズでも何でもござれ。しかしその分これまでのM10センサーが持っている表現とはどうしても趣が異なりました。
M10(M10-Pも同じセンサー)のセンサーはやや青か緑に偏った色を出しがち、かつ明るい部分の階調表現が今ほど良くはありません。しかしその持ち味を活かして独特な風合いで写す事ができるとも言えます。
今回被写体に選ばれがちな雪気色もどこか少し青みがかって見えます。これは実際に編集ソフトでホワイトバランスを調整すると明確に感じる部分で、ブルーは大幅にイエロー側に、グリーンはマゼンタ側に補正されます。正しい色で写しているとは言えませんが、勝手にこの色で撮影してくれるのですから、私のように好みにハマればありがたい事実。LEICA FOTOSアプリを通してスマートフォンにダウンロードすればカメラロールですぐに分かるほど。
色の良し悪しを結局好みの問題と言ってしまえばそれまでですが、写真においては要素の大部分を占めるもの。私にとってはこちらの方が性に合っていました。
ふたつ目。旅行の共、日々の共、私にとってカメラはそうあって欲しいもので、それは一見便利であればあるほど重宝するかと思いきや、むしろできないことが多い、つまり機能がシンプルであればあるほど有難いのです。いざ被写体を目の当たりにして、様々な色を作れたり動画も写真も撮れれば、自分の思うがままに撮影ができる事は間違いありません。しかしその分僅かな逡巡が生まれることは避けられない上、厄介なのは「あの時こう撮っておくこともできたな」と思い返してしまう自分がいるのです。いくつかのカメラを何年もかけて使ってきましたが、これらのしがらみが一番少ないのがこのM10-Pでした。
ちなみに最近になって分かったことですが、比較すると僅かにM10の方が起動が早いです。
写真のプレビューはM11の方が早いのですが、アッと思った時にできるだけ早く撮りたいことが多いので結果オーライ。
思ったように撮れないことももちろんあります。これ動画で撮りたかったな、とそう思う事も。しかしその瞬間の迷いが無いからこそこうして思い出を振り返れている可能性も大いにあるのです。迷って逃して何も残らない、では悲しいですから。
ちなみにM11以降のモデルでも動画こそ撮れませんが、画素数を変更する機能や、撮影時にクロッピングする機能も追加されています。ほぼ単焦点レンズだけで構成されてると言ってもいいMシステムでこれらの機能は超大活躍間違いなし。用途によって検討材料にしてみて下さい。
みっつ目、の前に。
草津は初めてではありませんが、草津熱帯園は初めての経験。かわいい、かっこいい、動物たちもここぞとばかりに出張ってくれているので被写体には事欠きません。また予想外だったのが建物の風合い。これは写真好きにはありがたい。何時間でも居れそうな空間ではあったものの、そうはいかなかったのは厚着では暑かったから。素人考えでもワニに雪は可哀想なので、そこは仕方なく。
熱帯ドームは外から見るよりひと回りもふた回りも大きく感じられ、特に外が雪とは思えないほどの暖かさも相まって異世界感抜群。
入口から10分くらい動けなかったのは言うまでもありません。ここらへんのカメラロールは動物の写真半分、そうでない写真半分。
気を取り直して、M10-Pを推したい理由のみっつ目、それは外観やその仕様です。
例えば伝統的な底蓋が残っていたり、M11では軽量化されたブラックのボディがまだ重いままだったりすること。
考え方によっては古めかしく、特に撮影に影響は無い部分の話ではあるうえ現代技術によって最適化されていると言えるのは当然M11以降のボディなのは明白。
ある意味ロマンとも言える“ちょっと無駄な機構”これがライカを持っている、という気持ちにさせてくれるのが少し嬉しいのかもしれません。
2400万画素が物足りない、という意見もありますがスマートフォンやPCの画面で見る分には気になりません。
印刷するとしてもかなりの大きさまで粗が目立つとは感じませんでした。
JPEGから色を編集してみたり、
モノクロにしてみたり。
加工耐性が低いとは言い難い程度。
ただ序盤でも話した通りオーバーが飛びやすいのは少し気にした方が良いかもしれません。
・・・
さて、理屈っぽいお話はここまで。
結局のところ、M10-Pを使うに至ったのはこうして挙げたようなたくさんの理由の上に「かっこいいなー」の旗が突き刺さったからに過ぎません。カメラに限った話ではないのですが、自分が持つもの使うものに関しては、自分が持って、自分が使って、自分がテンションが上がるに越したことはなく、ちょっとやそっとの障壁ではその楽しさを止められないくらいに好きであることが一番大事なのです。
最後にすべてひっくり返すようなことを書きましたが、ぜひライカ選びではこの気持ちを忘れずに。たくさんの情報を得た上で、ご自分の「コレに憧れた」「これが欲しい」に忠実であってください。もちろんこのブログを読んで少し「Leica M10-P」や「Leica M11」の株が上がったのであればいちユーザーとしても嬉しくはありますが。
ああ、なんだかサブ機にM11 monochromが欲しくなってきたなあ…
これだからライカは楽しいのです。