【Leica】熱海、M2と行く
昨年の6月に買ったLeica M2と、エルマー35mm F3.5。
このカメラたちと年を越すのは今年で二回目になります。
最近の口癖は何に対しても「早いなあ」と言ってしまうことです。
休日、デパートの一階ロビーを駆け抜ける小さな二つの声。
ついこの間まで小さかったテレビの向こうのあの人。
開放F値が2のレンズ。
そして、M2とエルマーと過ごした時間も然り。
早い、速い、はやい…というのは果たして周りが「ハヤイ」のか、それとも自分が遅いのか。
開放3.5を遅いとするか速いとするか、もとい、暗いとするか明るいとするかは人それぞれです。
ですが、当初遅いと思っていた私ですら「充分やん」と思い始めたのですから、きっと緩慢になりつつあるのは私の方。
忙しなく動く波間よりも、風に洗われる木々が辺りを埋めている方が落ち着いてしまう冬。
師走のタイムラインから一本逸れて、ゆっくりとした年末の時間を過ごすには、
海の音は遠く聞こえない、でも水平線は見える、そんな温泉宿に泊まる事だと、小さなころより憧れていました。
ひっそりとこっそりと、「M2と~」シリーズを始めたのは2020年の8月20日。
撮れ高に酔って勢いで書いた記事があったり、ちょっと前の写真を振り返ったり、夢見たり。
今回はどちらかと言えば前者に当たります。
会期が延長されたおかげでギリギリ間に合った、あるホテルで行われていた展示。
珍しくデータ化までお願いして現像が仕上がったのがクリスマスイブ。
一週間前の私からイブの私へ、自信ありげなパトローネを2本。
本当に良い贈り物でした、ご照覧ください。
いままで何度かフォトコンテストに応募しては、落ちたり、佳作だったり、落ちたりしています。
しかし何時まで経っても組写真というものに慣れず、今回だって連続したものは時系列順に並べただけです。
このレンズがよく写るというのは言わずもがな。
ただし、よく写るという表現も人それぞれで、ボケがこうで…合焦面の描写がああで…空気感がどう…と言葉を並べずとも、
私は撮った瞬間の記憶が蘇るのであればそれで良いんだと思っています。
写真は、記憶の引き出しを開けるための取っ手。
何度言ったか、一回目かは記憶していませんが、そういうことなのです、きっと。
お目当ての展示は前乗りしたにもかかわらず、入場数十分待ちと大人気でした。
この日の為に急遽買った「Kodak PORTRA 160」は大当たり。
写真を見て「最高」「すごい」「青はこんなに濃かったか」と驚いてみたり、
いやこの色は誇張では無く、この海、この部屋が、「青いね」と話したことをちゃんと思い出せたりしました。
朝焼け。
洋上に上がった一日の始まりが街を照らす頃、私たちは山かげに欠伸を浮かべる頃。
たぶん、暖まった海水が生んだ風が両耳を掠めては、ばばば、とノイズが聞こえます。
そんな音にかき消されてしまうような15分の1秒の産物がこの一枚で、カメラって、フィルムって、偉大だなと感じました。
・・・
残したい思い出は人それぞれ、残し方も人それぞれ。
でも、どんなモノとして残すのか、どんな体験によってそれを残すのか、そこをちょっと拘れば、それはさらに数段素敵な記憶になるはず。
この記事を読んでいただいた時間が、何かの一助になれば幸いです。
それではまた。