2021年も気がつけばあと少し。
今年中に何かやり残したことはないか、少しそわそわしてしまう時期です。
私がやり残していたこと、それはズミルックスの現行品「ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.」で写真を撮ることでした。
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数あるLeicaレンズの中で、ズミルックスは高貴で気品ある佇まいを持ちながら、
それでいて写りは繊細で優しいレンズという印象があります。
中でも、現行の「ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.」は、ブラックのレンズはアルマイト、シルバーは真鍮でできていて、
歴代のズミルックスの中でも一層高貴な雰囲気があるように思います。
いつかは、と思いながらも畏れ多くてなかなか使えなかったレンズ。
今年やりたいと思ったことは今年中に…そう思い、ついに憧れのレンズで写真を撮ってみようと決心しました。
ズミルックスに合わせるカメラはM(Typ262)。
M型のデジタルカメラの中で、厚みとシャッター音が特に好きなボディです。
M(Typ262)はライブビュー撮影に対応していないため、ファインダーを覗かないとピント調整ができないところも好きです。
写真を撮ることの楽しさを再確認させてくれる気がするからです。
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写真を撮る場所に選んだのは、学生の頃よく降りた街にしました。
あの頃と同じように気ままに散策しながら写真を撮りました。
壁のお皿が綺麗でカメラを構えました。
陶磁器の硬い質感と光沢が余すことなく描写されています。
主役のお皿以外、例えば前の電灯などは控えめに描写され、どうして写真を撮ったのかわかりやすい一枚になりました。
空芯菜炒めと「ラープ」というひき肉のサラダです。
「ラープ」はラオス語で「幸せ」という意味で、おめでたい時にも食べられる伝統的な料理です。
どちらもナンプラーがきいた、少し辛い味付けです。
ひき肉はスーパーに売っているような既にひき肉にされたものではなく、自分で細かく小さくお肉を切ることが美味しさのポイントだと教わったことがあります。
初めて食べた時から、ラオス料理を食べる時は「とりあえずラープ」が定番です。
空心菜炒めのてらてらした油っぽさや細かいスパイスの粒が、目の前にあるかのように描写されています。
Leicaらしいしっとりとした描写が、料理と相性ピッタリだと感じました。
お腹を満たして歩き出すと、道の端に三輪車がポツンと置かれていました。
きっと今はもう誰も乗っていない三輪車です。
錆びたペダルやハンドル、色あせたサドルのざらざらした手触りや、
寒い冬の空気で冷やされた金属のひんやりとした輝きを繊細に写してくれます。
ピントの合っている部分の立体感のある描写と、ボケている部分の柔らかい描写の写し分けが流石ズミルックスだと思います。
前を歩く友人を撮りました。写真を撮る度に立ち止まる私に構うことなくどんどん歩いていってしまいます。
背景のボケがやわらかく広がり二人を包んでいます。
少し暗めに撮影しても、潰れることなくリュックや看板まで確認できます。
写真に満足していると友人の背中がかなり遠くなっていました。慌てて追いかけます。
偶然に見つけたおしゃれなカフェで一休みです。
Leicaのレンズとガラスの写真は相性が良いと思います。
ガラスの光と反射の煌めきや透明感を、こちらの予想をはるかに超えて表現してくれるからです。
トゥンカロンではなく、文字にピントを合わせました。
一枚のガラスの表面と裏側で起こる反射も的確に表現してくれました。
クリームが多くてすごい甘そう、と思いこれまで食べてなかったトゥンカロンですが、食べてみると思っていたより甘さ控えめで美味しく、驚きました。
思えば、Leicaも最初は「高価なレンズ」とだけ思っていて遠巻きにしていました。
しかし実際に使ってみると確かに高価ですが、思わず「うわ、すごい」と声が出てしまう一枚を見せてくれます。
ぶらぶら歩きながら気になったお店をみて買い物を楽しんでいたらすっかり日が暮れていました。
まだ夜になりきる前の紫色の空を撮りました。
冬の夕方は特に一瞬たりとも同じ色の空がないようです。
この写真もグラデーションが美しいです。
また、近くに感じられる雲、遠くに感じられる雲と空の奥行きが感じられます。
家に帰るころにはすっかり辺りは真っ暗でした。
軒先が電飾に彩られたお店がありました。小さなイルミネーションです。
手前の豆電球にピントを合わせると後ろが玉ボケになり、キラキラした光を表現できました。
Leicaは人を撮るのに良いカメラだと教えてもらったことがあります。
70cmの距離感がちょうど良い近さになってくれるからです。
また、ボディもレンズもコンパクトで、相手を圧倒させることなく自然な表情を切り取れるからです。
何気なくカメラを向けて撮った一枚ですが、全体を包み込むようなやわらかさが友人の雰囲気とマッチして
Leicaはそこまで分かってくれるのかと思いました。
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2021年ももうすぐ終わり。
今年最後に憧れの存在の「ズミルックス M50mm F1.4 ASPH.」を実際に使ってみて、
単なる憧れから、「私はこのレンズがとても好きだ」という確信に変わりました。
Leicaのズミルックスは、1stから現在の4thまで少しずつ形を変えながら、
しかし「ズミルックスの高貴でいながら繊細な優しさ」は変わらずに継承されています。
私にとっての2021年は仕事を始めた最初の年です。
環境が大きく変わり戸惑うこともありました。
けれどもこの街の雰囲気が好きなこと、友人と久しぶりに会ってもすぐにあの頃のように話せること、ラープを美味しいと思うことは変わらずに私の中にあります。
反対に、カメラを持って出かけるようになって道端にあるちょっとしたもの、空などこれまで目にも留めなかった面白いもの、きれいなものに気がつくようになりました。
変わらずにいることと、変わっていくこと。
そのどちらも大切にしていきたい。
Leicaのように。