本連載は、勢い余ってM型ライカ(M-E Typ220)を買ってしまった著者が、自身の理想のレンズを探し求める旅に出掛けると共に、その過程を読者の皆様に楽しんで頂きつつお客様の今後のレンズ選びの一助になればと思い開始致しました。ブログのタイトルは”365日後”としておりますが、今後どうなるかは全くの未定。中古のレンズは一期一会、1年以上かかってしまう可能性もあれば時を待たずして完結してしまう可能性も否めません…。どうぞ完結までお付き合いいただけますと幸いです。
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前回までのあらすじ
「CCD機は、楽しめる個体があるうちに楽しんでおいた方が良いよ」同僚からのこの一言が決定打となり購入したLeica M-E(Typ220)、購入するや否やサムグリップやレリーズボタンでドレスアップを楽しむ著者。記念撮影を終え、いよいよレンズ探しの冒険が始まるのであった……。
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第1話 「エルマー 50mm F3.5 編」
「エルマーに始まり、エルマーに終わる」
ライカ好きの方々からよく出てくる言葉ですが、本連載の第0話を執筆中にこの言葉がふと頭に浮かび1本目のレンズに選びました。(早くも最終話の伏線を張ってしまうかのような言葉です……。)
エルマーの中でも、今回選んだのはスクリューマウントの50mm F3.5 (5cm F3.5)。落ち着いた佇まいはデジタルのボディとあわせても違和感がなく、所有欲を満たしてくれます。今回お借りした個体は1946年製のコーティングありのもの。経年に伴う薄曇りはありましたが、年代を考慮すると仕方ありません。製造本数も多い為、中古品の流通量も多く比較的安価で手に入るのも魅力のひとつです。(当店販売価格:¥41,800~65,800 ※本記事投稿日時点)
季節柄、桜を撮りに出かけました。コロナ禍もあり満開の桜の時期にカメラを持って出かけることが久々だった為、生憎の曇天でしたが満開の桜を撮りに出かけられるだけでも有難いです。全て絞り開放で撮影致しましたが、誇張しすぎない自然な立体感に加え、ボケも癖が少なく使い勝手の良いレンズだなと感じました。さすがに高画素機で使用すると解像力の不足も否めませんが、1800万画素のM-E(Typ220)で使う分には個人的に申し分なし。小さいのによく写ります。
桜の名所と言えば、都内では目黒川や上野公園などが真っ先に思い浮かびますが、個人的には普段の日常で見ている風景に咲く桜が好きです。こちらは蒲田駅周辺にて。桜を撮るとピンクの発色が気になるところですが、撮って出しでこの色味が出せることに驚きました。液晶モニターがお世辞にも見やすいとは言えないM-E(Typ220)、自宅に帰りパソコンに取り込んで確認した時に気付きます。
「さっき見ていた風景そのものだ…。」
この感覚は恐らくカメラのセンサーが出す色味に起因するものだと思いますが、センサーのパフォーマンスをしっかりと発揮させてくれたこのレンズに長年愛され続けている所以を感じます。
こちらも絞り開放で撮影したものです。晴天の時に試してみたかったですが、周辺減光は程良く著者好みでした。(開放時の周辺減光は無さ過ぎてもつまらないし、あり過ぎてもなんだか違う……。と思ってしまう天邪鬼です。)
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わずか一日限りの使用でしたが、実際に使ってみるととても使いやすく「この価格でこの描写なら十分では…?」と思ってしまいました。とても70年以上も前に造られたレンズとは思えないような解像感に、癖のない素直な描写。なるほど、”エルマーに終わる”と言われる意味が少し解った気がします。飽きがこない描写に比較的安価な価格帯、食べ物に例えるとポテトチップスのうすしお味がしっくりきます。クセのある味を求めて期間限定やご当地限定の味を買う事もあるのですが、食べ終わってから数日経つと「やっぱりうすしお味だよな…」となるのです。
さて、ここまでご覧になられた方々の中には「このまま一話完結か?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際、著者も購入まで考えたのですが、思いとどまる理由が一つだけありました。それはこのレンズが”沈胴式”である事。ご存知の方も多いかと思いますが、デジタルカメラで沈胴式のレンズを使用する際は、センサーやシャッター幕との干渉の恐れがある為、カメラに装着したまま沈胴させるのはご法度。それもセンサーの修理ができない本機となればなおのこと敏感になってしまいます。常に首から下げて使用するのであれば目を瞑れるのかもしれませんが、イージーラッパーに包んでカバンの中に入れて持ち出すこともある著者にとっては”沈胴式”である事が最大のミスマッチだったのです。(鏡筒にテープ等を巻いて不慮の事故を防ぐこともできるのですが…。)
今回のレンズ探しはあくまで”普段ボディにつけておく一本目に買うなら”という視点で選んでいる為に購入までには至りませんでしたが、素直な描写やコンパクトさにはやはり魅力があります。今後辿り着くであろう一本目が「ゴーヤ味」や「バナナ味」のような癖玉だった場合、うすしお味をすぐに買ってしまうかもしれません。
レンズ購入まであと349日。それでは、次回の投稿をお楽しみに。
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