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【Leica】5年越しの8枚玉

【Leica】5年越しの8枚玉

本日ご紹介するのは、通称8枚玉Leica ズミクロン M35mm F2 第一世代
1958年の発売以来、多くのLeicaファンを魅了している、伝説的レンズのひとつです。

運よく8枚玉を手にする機会を得た私ですが、実は以前にも8枚玉で撮影をしたことがあります。
その時の記事がこちら

【Leica】8枚玉をX-Pro2で楽しむ

前回の撮影では、発売したてのFUJIFILM X-Pro2に組み合わせ、撮影をしていました。
それからずっと、8枚玉は私にとって憧れのレンズのひとつでした。
月日は流れ、念願のライカデビューを果たしたものの8枚玉はいつの世も高値の花…もとい高嶺の花でした。
ずっと気になりつつも更に2年待ち、年号は平成から令和へ。三十路の角を曲がった先で、遂に念願の8枚玉を手に入れました!

 

前置きが長くなりましたが、筆者の写真の腕についてはさておき、フルサイズセンサーで撮影した8枚玉の描写をご覧ください。
使用カメラはLeica M-E(Typ220)です。

空とビルの境に滲み見られますが、両側のビルが目で見ている以上に艶やかです。
こういったオールドレンズの紹介では、質感描写が素晴らしいという言葉をよく使いますが、ビルの質感が良いと感じたのは初めてです。

うっすらとベールをかぶったような印象もオールドレンズらしさ。
とはいえ、これはレンズのコンディション次第でもあります。天上の照明を見ると滲みや周辺像の乱れがあります。

再びビルの写真です。
先程のビルと比べても圧倒的な艶です。もはや飴細工と言われた方がしっくりくるほどです。

ところで、8枚玉という名前に馴染みが無い方もいらっしゃると思いますので、簡単にご説明いたします。
まず、ズミクロンM35mmにはいくつかの世代/バリエーションがあります。
全て同じ名称で分かりづらいため、そのレンズ構成から『〇枚玉』という通称で呼ばれています。

第一世代:通称8枚玉
第二世代:通称6枚玉
第三世代:通称7枚玉(海外でKing of Bokehと呼ばれているのはこちら)
これ以降は非球面レンズが使用され、〇枚玉という呼び方をしなくなります。
様々な言い方があると思いますが、マップカメラでは以下のように分けています。
第四世代:ズミクロンM35mm F2 ASPH.(フードはめ込み式)
第五世代:ズミクロンM35mm F2 ASPH.(フードねじ込み式)

今回ご紹介している8枚玉は第一世代。初代ズミクロン35mmです。

第〇世代が一番良い!こう言い切れたらどれだけ良かったでしょうか。
答えはユーザーの数あると思います。
同じ名前ではありますが、それぞれに個性があり良さがあります。
かくいう私も8枚玉にも通じる個性・オールドレンズらしさが楽しめる6枚玉が現実的な第一希望でした。
最近では他のスタッフが撮影した記事を見て、オールドレンズと現代レンズの間の美味しさが楽しめる7枚玉とも揺れていました。
その記事はコチラ

【Leica】Leicaのある日常 #6

これだけ種類があると悩んでしまいますが、用途や撮りたいイメージが出来上がっていれば、それに合わせた選択肢ができるということ。
こういったバリエーションの豊富さもライカレンズの魅力ではないでしょうか。

確かF5.6か8まで絞り込んだ写真ですが、ここまで絞るとコントラストも高くなり現代レンズと遜色ないと思います。

なぜ、私は8枚玉に憧れ、そして手にするに至ったのか。
いくつかの理由がありますので、順を追って説明いたします。

1.描写
2.気品漂う佇まい
3.再現不可能な無限遠ロック
4.圧倒的な人気

1.描写
やはり外せないのは描写でしょう。
8枚玉の描写はオールドレンズの中ではかなりしっかりした印象です。
オールドレンズらしさを何と定義するかは微妙なところですが、
例えば階調の良さ(コントラストの低さ)、収差・グルグルボケ、逆光への弱さから発生するフレア・ゴースト、周辺減光、柔らかさ、などなど。
それらが複雑に絡み合い、現代のレンズにはない味のある描写が生まれます。
その加減次第でボケ玉、クセ玉、名玉など呼ばれるのですから不思議なものです。
この8枚玉に関しては階調の良さや開放時の周辺減光、ハイライトの滲みなどが程よく調和され、繊細な描写といった印象です。
また、絞っていくにつれ、より安定した描写になり、オールドレンズらしさは身を潜めます。
当時かなりの高性能レンズであったことは想像に難くありません。

ちなみに、オールドレンズならもっと個性的なレンズが欲しい!という方は、『ズミルックスM35mm F1.4 2nd』や『ズマリット 50mm F1.5』、『ズマール L50mm F2』、『ヘクトール L73mm F1.9』などがオススメです。
ボケや滲み具合など一見の価値ありです!

2.気品漂う佇まい
8枚玉を語る上で欠かせないのが端正なルックス。
これまでも造りの良さが多く取り上げられており、工業製品として洗練された美しさを持っていることが人気の理由の一つです。
最近機材を選ぶ際に重視しているのが、所持することで満たされるのか否か。
性能の良さはもちろん無視できない要素ですが、その良し悪しは価値観やシチュエーションでも大きく異なります。
実用品でありながら、持っている・触っているだけで幸せな気持ちになれるというのもオールドレンズが持つ魅力のひとつだと勝手に思っています。

ちなみにオールドレンズにはそれぞれ個性的なレンズフードやアクセサリーが用意されていることが多いです。
8枚玉のフードといえばIROOAですが、それ以外にも12585、12583などが使えます。
これらのフードや接写装置などのアクセサリーを使いもしないのに集めてしまうのがアクセサリー沼です。

3.再現不可能な無限遠ロック
見た目のところで触れても良かったのですが、あえてここだけにクローズアップしてみます。
この無限遠ロックは8枚玉の他に、ズミルックスM35mm F1.4 1st・2nd、ズマロンM35mm F2.8などに採用されています。
スクリューマウントの50mmに多く見られるようなピン形状とは異なり、
フォーカシングノブと一体化された凝った造りです。
このロック部分は現代では再現ができないといわれており、謎のロストテクノロジーが組み込まれています。
おそらくコストや耐久面などの理由かと思いますが、21世紀に再現できない技術というのは聞いただけでワクワクしてきます。

4.圧倒的な人気
繰り返しになりますが、数あるレンズの中でも8枚玉は伝説的な存在で、非常に人気のあるレンズです。
他にも伝説的なレンズといえばズミルックス M35mm F1.4 1stやノクティルックス M50mm F1.2といったレンズがありますが、それらのレンズほど珍しい訳ではありません。
比較的よく見かけるレンズでありながら、卓越した描写と美しいルックス、まさに才色兼備なレンズであるために、長い年月を経て伝説になったのだと思います。
※最近この手の第一世代のレンズは少しずつ数が減っている印象です。よく見かけると書きましたが5年後にこの記事を見返した時、今は珍しくなったぞ!と自分で突っ込む気がしています。

梅雨開けとは聞いていましたが、間違いありません。皆様、夏本番でございます。
雲のモコモコ感が素敵です。

いかがでしたでしょうか。
1950年代において、35mmという焦点距離で開放F2の明るさと、素晴らしい描写を誇る8枚玉は同世代のライバルを圧倒したことでしょう。
それは現代のように柔らかな描写が~、ハイライトの優しい滲みが~、といった評価ではなく、しっかりと解像し、収差の少ない描写をするという意味でです。
純粋な性能では現代の技術を用いて作られたレンズが上でしょう。
当時の技術者が今のレンズを見れば嫉妬するのではないでしょうか。
しかし不思議なことに、8枚玉を含め、往年の銘玉たちの描写は今でも多くの支持を集めています。
最新技術の高性能さが必ずしも自分にとって良い描写とは限らないのではないか。そんな事を考えていると底なしのレンズ沼にハマってしまうのです。

 

 

 

[ Category:Leica | 掲載日時:21年07月17日 18時02分 ]

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