こんにちは。
「夏日」という言葉を頻繁に耳にするようになり、夏の気配が刻々と近づきつつあるように感じます。
筆者もそんな初夏の雰囲気を先取りしに、Leica TL2を引きさげ南の島へと足を伸ばしました。
ところで余談になりますが、和食の世界では旬の食材をそれよりも前にいただくことを「走り」と表現します。
江戸っ子の間では「走り」の食材を食べることが粋であるとされ、特に好まれていました。
それは現在でいう、発売日や開店日に人々がこぞって列を成すような深層心理に通づるところがあるとつくづく感じます。
今も昔も人々の思考は変わりませんね。
余談はそれぐらいにしておき、それでは本題へと入りたいと思います。
今回使用したLeicaのTL2は、APS-Cサイズのセンサーを搭載したコンパクトでスタイリッシュなカメラです。
有効画素数は2432万画素、4K30pの動画撮影も可能であり、なんと今では珍しい32GBの内蔵メモリが備わっています。
この仕様は旅先では大変ありがたく、SDカードの容量が足りなくなってしまったといった不測の事態から私たちを開放してくれます。
このように機能面についても十分な性能を持ったカメラではありますが、このカメラの最大の魅力はデザインにあります。
なんと言っても、アルミ削り出しによる高品質かつ堅牢性の高いボディが特徴的で、それによりカメラとは思えないスタイリッシュさを演出しています。
色展開は、ブラック以外にもシルバーが用意されていますが、やはりブラックのボディ方が赤のLeicaロゴが一層目を惹きます。
では次に、背面も見ていきます。
Leicaのデザインの真骨頂ともいうべき一切の無駄を削ぎ落とした背面部は、今見ても新鮮です。
ほぼ全面に設けられた液晶は、初代TLが発売された2016年から採用されており、いかに前衛的な試みであったかが分かります。
さらにタッチパネル方式の液晶を採用したことにより、今までカメラに触れてこなっかった人でも直感的な操作が可能となっています。
また背面液晶下部にはLeica特有の書体を使い、Leicaの世界観をさりげなく散りばめています。
こうしたドイツらしい質実剛健なデザインと、アクセントとなる文字の入れ方には筆者自信とても好感が持てます。
※全背面がガラスのため画面の擦れや傷、指紋による汚れなどが気になる方は、Leica (ライカ) T(Typ701)用液晶モニター保護フィルムを貼ることをおすすめします。
さて、軍幹部はというと…
とてもシンプルな構成です。
レリーズボタンに電源レバー、そして2つのダイヤルとファンクションボタンが配されており、たったこれだけで歴史と格式のあるLeicaのカメラを操れてしまうことに驚きを隠さずにはいられません。
この辺りの作り込みからもスマートフォンユーザーを見据え、直感的なUIを強く意識していることが見てとれます。
※2021年にはスマートフォンにズミクロンのレンズと1型センサーを搭載した「Leitz Phone 1」を発売し、話題を集めました。
TL2がスマートフォンのUIに寄せていっている一方で、Leitz Phone 1ではブライトフレームの機構を取り入れるなど、Leicaらしさを体験できるようなUXに重きが置かれています。
このように近年のLeicaの動向に目を向けると、カメラとスマートフォンとの融合を図ろうと模索している様子が伺え、興味深いです。
F2.8 , SS1/2500 , ISO100 , -0.7
カメラボディの話はこれぐらいにしておき、レンズの話をしていきましょう。
今回使用したレンズは、ズミクロン TL23mm F2.0 ASPH.になります。
35mm判換算で35mm相当の画角のレンズです。
もし、旅先に単焦点レンズを1本だけしか持って行くことができないとすれば、筆者は迷わずこの画角を選択します。
その理由は簡単で、35mm付近が人間の目に一番近い画角とされているからです。
F2.8 , SS1/1600 , ISO200 , ±0
ズミクロン TL23mm F2.0 ASPH.はレンズの全長が37mmと短く、被写体とのワーキングディスタンが短くなるため、旅先でのテーブルフォトでは有効に働きます。
さらにこのレンズにはマクロモードが搭載されており、近接撮影時(0.35m~0.5m)には絞り優先でF2に設定されている場合でも、距離に応じてF2.8まで自動的に絞り込まれます。
近距離撮影時に生じる収差をレンズの絞りを可変させることで補正するという、なんとも質実なLeicaらしい仕組みが採用されています。
F5.6 , SS1/500 , ISO200 , ±0
F2.0 , SS1/320 , ISO200 , ±0
重量も154gと軽量で、355gのTL2と合わせても509gのため、軽快に撮影が行えます。
また前述したようにレンズの全長も短いため、バックの中に潜ませておいたとしても引っかかりがなく、サッと取り出すことができます。
日常では見逃してしまいがちな風景も気軽にカメラに収めることができ、旅のお供としては最適解ではないでしょうか。
F8.0 , SS1/250 , ISO100 , -0.7
写りはというと、コントラストが豊かで非常にキレのある描写をしています。
この写真はF8.0まで絞っていますが、豊かなコントラストの要因もあり、立体感のある表現ができていると思います。
F2.0 , SS1/3200 , ISO100 , ±0
F2.0の開放では、ピント部分のコントラストと解像感は優秀で、背景も滑らかにボケていきます。
F値を欲張らないズミクロンらしい、写りに余裕のある描写傾向が表れていると思います。
加えてこのレンズはAFレンズのため、薄いピント面が故に失敗したということも少なく、意図した通りの撮影を簡単に、そしてスムーズにこなすことが可能です。
「写り」「大きさ」「操作性」のトータルバランスに優れたズミクロンは、是非とも最初の単焦点レンズとして持っておきたいレンズです。
F2.8 , SS1/2000 , ISO100 , -0.7
さて、ここまではLeica TL2とズミクロン TL23mm F2.0 ASPH.について話を進めてきましたが、今回はせっかく初夏の南の島を巡ってきたので、写真を交えながらその話についても少しばかりしていこうと思います。
今まで「南の島」と言葉を濁してきましたが、この写真からお察しの通り、行き先は「沖縄」です。
多くの方の共通認識として「南の島」=「沖縄」が思い浮かぶのではないかと思い、今まであえて地名を伏せてきました。
「南の島」という抽象表現を用いたにもかかわらず、大抵の方が「沖縄」として認知できるのは、いかに日本人にとっての沖縄が南の島として定着しているのかが分かり、筆者としてはとても興味深いところです。
F2.8 , SS1/1250 , ISO100 , ±0
訪れた4月は、ちょうど沖縄では「うりずん」と呼ばれる時期です。
この時期は草花がいっせいに咲き始め、大地を潤していく時期であり、沖縄では初夏のような気候に恵まれます。
気温は大体20℃前後で、早いところでは海開きするなど、旅をするにはおすすめの時期です。
筆者が訪れた時も晴天に恵まれ、動くと少し汗ばむような気候でしたが、ムシムシとした体感はなく、大変過ごしやすかったです。
F2.0 , SS1/3200 , ISO100 , ±0
最後は、うるま市にある海中道路からの日の出の写真で締めくくりたいと思います。
日本の西端に位置する沖縄は、本土よりも日の出の時刻が遅いため、早起きせずともこの景色を堪能することができます。
沖縄は今年で本土復帰から50年という節目を迎えました。
この50年の間に様々なことが起こり、また変わりました。
この世界には変わらないものなど何一つありません。
だからこそ今という一瞬を大切に、そして感謝して生きることが如何に尊いことかをこの旅路を通して感じました。
どんな過去があろうとも陽は昇ります。
この希望に照らされた朝日のように。
追記:
車を走らせていると「ライカム」という交差点の標識を見つけ、車を降りてみました。
これはもしやLeicaの聖地かと思い、気になったので調べてみると、かつて沖縄が琉球列島米国軍政府の統治下であった際に「琉球米軍司令部」が置かれていた場所という歴史的な地名でした。
※RyComとはRyukyu Command headquartersの略称。
F8.0 , SS1/640 , ISO200 , ±0
Leicaの目指すところは、本質的な写真を撮ることであり、見たままを写すことに他なりません。
事実を直視するドキュメンタリーフォトの分野で磨かれてきたLeicaのモノクロ表現は群を抜いています。
F5.6 , SS1/1000 , ISO200 , ±0
現在では、沖縄県下最大級のショッピングセンターが建つなど沖縄県民の憩いの場となっています。
また、ライカム周辺ではマンションの建設ラッシュが続いており、かつての重々しい様相から徐々に平和な街並みへと遷移していく過程を覗き見ることができました。
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