【Leica】Mを愉しむ ~M10シリーズを愉しむ~#1 SUMMILUX M90mm F1.5 ASPH.
きたる2月20日、MapCamera本館1階のLeica Boutique MapCamera Shinjuku が9周年を迎えます。
これもひとえに皆様の厚いご愛顧があったればこそ、心より御礼申し上げます。
9周年を迎えるにあたって、今回ライカブティックでは「愉しむ」をコンセプトに様々なイベントをご用意いたしました。
毎年ご好評いただいているスタッフによる連載ブログですが、今回は『Mを愉しむ』というテーマのもと、「M11でレンズを愉しむ」と「M10シリーズを愉しむ」という2本立てで進行させていただきます。
2022年1月21日 Leica M11の登場で改めて脚光を浴びたライカ M型デジタルカメラ。
2006年12月のM8登場以来、およそ15年強の間に様々なM型デジタルの名機が世に姿を現しました。
その中でも2017年1月 M10の出現は、多くのライカファンに衝撃を与えました。
それまでフィルムM型機より厚みのあるボディサイズが特徴であったM型デジタル機。ライカユーザーが当然だと思っていた観念を、M10は見事に打ち破りました。
フィルムM型機とほとんど変わらないボディサイズを実現。そう、数多のライカユーザーを魅了してきたあの感触が、再び我々の手に戻ってきたのです。
翌2018年8月発売のM10-Pでは静音化にまで成功。より私たちの五感を刺激するカメラとして、ライカファン垂涎の1台になりました。
その後も背面液晶を排したM10-D(2018年10月)、モノクロ撮影専用機としては3代目になるM10 モノクローム(2020年1月)、高画素化を図ったM10-R(2020年7月)と、ライカファンのみならず多くのカメラファンを魅了したM10シリーズの系譜が完成しました。
今回、マップカメラスタッフがそれぞれM10シリーズの中から1台をチョイス。
まだまだ衰えることなく輝き続けるM10シリーズの魅力を熱くお届けします。
今こそ深遠なるライカの世界に…
・・・
少しばかり尖った個性を持っているカメラ。
それが私のM10-Rへの印象でした。
前機種であるM10-Pの完成度があまりにも高く、「ライカらしい渋さと、みずみずしい華やぎのある色」という相反する二つの特性を併せ持ったカメラであっただけに、作例を見るたびにより一層そう感じてしまったのです。
しかしながらライカのカメラは、全ての機種に「意味と価値」があります。
新型が出ても、何年経っても輝きを失わないのがLeica。
ここはM10-Rを一度使って、今まで思っていたことが本当なのかを確かめてみたい。
そう思ってから1時間後、私は羽田空港にいました。
レンズはズミルックス M90mm F1.5 ASPH. とズミクロン M35mm F2 (8枚玉) ドイツの2つを携えて。
さっそくズミルックス M90mm F1.5 ASPH. でファーストカット。
M10-RのJPEG設定は、彩度とコントラストを「高」にしました。
床タイルの蒼さ、植木鉢のシャドウトーンにLeicaイズムを感じます。
この渋さ、M10-Pとは少し違えどまぎれもなくLeica。変な色転びもなく、トーンジャンプも起こさずきれいなグラデーションを描けました。
M10-Pが持っていた、「その場の雰囲気を誇張して写す」という特徴は、こういったシーンで「白を白すぎるように表現」しがちでした。対してM10-Rは、大幅に誇張することが少ないように感じます。
ナチュラルな中にM型らしさを残し、うまくまとまった画として再現してくれます。
テンションが上がってきました。
ああ、確かにLeicaだな…!と唸らされる一枚。
これがJPEG撮って出しなのだから恐れ入ります。M11はM10シリーズより背面ディスプレイのドット数が増えていますが、M10-Rも十分以上に高精細です。構図の確認はもとより、ピント調節での拡大時も非常に頼もしいものでした。
こちらはズミクロン M35mm F2 (8枚玉) ドイツに付け替えてのカット。
青空に若干のバンディングノイズが見えますが、8bitのJPEGでこれなら十分と言えます。
陰になった飛行機の尾翼の群青色が何とも言えません。
ライカのレンズは絞り解放時の周辺減光が大きいものが多いですが、それによって周辺部だけ白飛びを防げる事があります。今回も窓の外の景色がごく一部だけ残せました。
こういったシーンでの階調表現は目を見張るものがあります。
現行の国産機では明らかに黒潰れを起こすような光線状態ですが、しっかりと粘っているのが見て取れます。
青空と金色のコンビネーションがたまらなく美しい…!
黒がつぶれるほど露出を下げても、すぐにLeicaだと分かるこの色味。これはずるい。ずるいです。
赤の発色はどうかと思い狙った被写体ですが、かすかに往年の名機「Leica X2」のテイストが感じられました。
渋い色味と、朱色に転ぶこの感じ。間違いありません。あの名機の印象が息づいているとは!!
気品のある物を高貴に写すことができるカメラは、そう多くありません。
M10-Rは紛れもなくその一台。単に彩度が高いだけではなく、発色自体に秘密があるように感じます。
手前にある物は濃く、奥にある物は薄く。イラストを描く時のルールなのですが、これらの写真を見ているとそれを思い出しました。
レンズを交換して、再びズミルックスへ。
発光物(蛍光灯や電球)でない黄色は落ち着いた表現です。
最後は金網の向こうを、手を伸ばしてライブビューで撮影。
背面液晶に映し出された美しい滲みの写真を見て、「世界をガラス玉に閉じ込めて、それを面相筆で少しかき混ぜたらこんな風になるだろうな…。」と思いました。
夕方の少し手前、光が温かみを増し始めるころの雰囲気をそっくり写し撮っています。
数時間の短い試用でも、十分わかりました。
私の好きなLeicaが、ちゃんといた。
M10-Rには、Leicaだからこその色味、Leicaだからこその世界がしっかりとありました。
巷ではM11の話題で持ちきりですが、そんな中だからこそM10-Rの魅力が輝きます。
M型という本棚に、素敵なアーカイブがまた1台、増えました。
M10シリーズ独自の“あの色”で4000万画素。迷うことはありません。
中古商品も見逃せません。