【Leica】Mを愉しむ ~M11でレンズを愉しむ~#3 Thambar M90mm F2.2
きたる2月20日、MapCamera本館1階のLeica Boutique MapCamera Shinjuku が9周年を迎えます。
これもひとえに皆様の厚いご愛顧があったればこそ、心より御礼申し上げます。
9周年を迎えるにあたって、今回ライカブティックでは「愉しむ」をコンセプトに様々なイベントをご用意いたしました。
毎年ご好評いただいているスタッフによる連載ブログですが、今回は『Mを愉しむ』というテーマのもと、「M11でレンズを愉しむ」と「M10シリーズを愉しむ」という豪華2本立てで進行させていただきます。
今回のLeica Boutique MapCamera Shinjuku 9周年を祝福するかのような絶妙なタイミング、1月21日に発売を開始したLeica M11。
M型デジタル待望の新製品とあって、ライカファンは勿論、多くのカメラファンから大きな注目を受けての登場でした。
そこで今回マップカメラスタッフが持ち回りで試写。そのインプレッションを各々の観点で語らせていただきます。
最新鋭機 M11に組み合わせたいレンズを各自でチョイス。その描写を皆様にお届けします。
時代を彩る銘レンズたちが、6000万画素という超高画素・高精細なカメラを通してどんな表現を見せてくれるのか、是非お愉しみください。
今こそ深遠なるライカの世界に…
「Leica Thambar M90mm F2.2」
撮影にはいつも自分が使っているレンズも含めて4本くらい持ち出したのですが、結局この3群4枚に落ち着くという始末。
超高画素のキャンバスにタンバールで光を垂らすのは如何なものか…と、保険も兼ねた複数本態勢だったのですが杞憂でした。
M11では記録画素数をL、M、S、の三段階から選ぶ事ができ、オールドレンズや写りの柔かいレンズでの撮影が捗りそうなものですが、
今回は敢えて、ソフトフォーカスの永久欠番90/2.2、そして6000万画素という出で立ちで挑みます。
多くを語る必要はありませんが、折角なので実際に使用した所感がお伝えできれば幸いです。
デジタルカメラの高画素化には、線をハッキリ、明瞭に写すという固定観念がこびり付きます。少なくとも私には。
しかしある一定の画素を越えると、はっきりした線のその境をさらに滑らかに描写し始めることで写真が柔らかさを帯びることに気付くはずです。
超高画素センサーで写した写真が少し優しく見える、というのも頷ける話。
これを良しと捉えるか悪しと捉えるかは人によりますが、私と、そしておそらくタンバールは、良しとします。
高画素特有の、「写しすぎ」とも言われかねないラインを追い越し、更にその先の滑らかさまで到達したM11のセンサー。
かつて、空気に緩く溶いた光を微細なハロゲン化銀に届けていたレンズ。
タンバールが蘇って数年、このカメラの到来を心待ちにしていた事は想像に難くありません。
冒頭で、高画素とソフトフォーカスの組み合わせを「敢えて」と表現したのは撮影を始める前の自分の気持ち。
きっと低画素の方が写り過ぎなくて良いんだろうな、そう思っていた自分を恥ずかしくすら思います。
高精細、それゆえに見えてくる曲線、それゆえに語られるグラデーション。
画の表情が全く違います。
今回の撮影はセンタースポットフィルター付けっぱなし。
その為F6.3までしか絞り込むことが出来ませんが、その眩しさには頼れる電子シャッターがお供します。
期待していたあのシャッター音が聞こえないのは少し拍子抜けですが意外とすぐに慣れました。
タンバールを絞って使うことには賛否両論、ただ個人的には嫌いではありません。
それに、いくら絞ったところで他のレンズと同じようには写らず、“絞ったタンバール”としての写真が生まれます。
レンズの向く先の殆どは海か空。
反射、滲み、空気、潮風、羽音。
遠い記憶の深い所に、それもむず痒く残るこの見覚えのある感じは何かと思えば、零れる間際の涙越しに見ていた景色でした。
叱られた思い出や喧嘩した日の事、そしてそのうち覚える嬉し泣きというものに紐付くから恥ずかしくてむず痒いのでしょう。
試しに大欠伸をしてみたらまさにその通りの視界。
季節の割に暖かい日射に包まれて腰掛ける砂浜は細かく、風が吹けば、波が洗えば、どんな形だって表現し得るのだろうと羨ましく感じます。
・・・
これまでのLeica M型ボディからは想像もし得なかった作品が生まれるカメラ、M11。
数十年にわたり生産され続けている何十種類というMマウントレンズの数だけ、また新たな表現が開花します。
今日見ていただいた写真はその中のごく一粒に過ぎません。
これまでの長い時間と、これからの長い時間を昇華する愉しみ。
Leicaの可能性が大きく広がった瞬間に立ち会えて嬉しく思います。
次回もお楽しみにお待ちください。
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