M10-R。約4000万画素を実現し、M型Leicaでの新たな表現の幅を広げたカメラです。
そんなM10-Rブラッククロームの生産終了が発表されました。
M10やM10-Pと比べると隅々までスッキリとした、少し芸術的な写りが楽しめるカメラです。
一抹の寂しさを感じながらもM10-Rと合わせるレンズを考えてみました。
せっかくなのでアポズミクロンの35mmを付けてみようと思います。
どんな写りをするのでしょうか。
そんな時、目にしたのがTTArtisanのAPO-M35mm。
同じアポクロマート設計のレンズで同じ焦点距離の35mm。
どんな違いが出るのか気になります。
カメラにレンズを付けてみると、アポズミクロンの方がコンパクトで軽量なレンズです。APO-Mは重厚感のあるどっしりとしたレンズです。
しかし、どちらもM10-Rにつけてフィットする見た目です。
撮り比べた写真はISO200でF2で撮影しています。
さっそくご覧ください。
【アポズミクロン】
【APO-M】
神社の参道を歩いていると奉納されたワイン樽がありました。
アポズミクロンの方がしっとりとした描写になっているように感じます。APO-Mはカラっとした描写です。
ワインの名称が書かれた白いパネルに注目してみると、アポズミクロンは少し青み掛かっていますが、APO-Mは見たままの白色が表現されています。
【アポズミクロン】
【APO-M】
続いては、サクランボのような青い実にピントを合わせて緑の発色とボケを比べてみました。
アポズミクロンはダークな緑になり、APO-Mは明るめの緑です。
ボケに関しては、アポズミクロンの方がよく見るとどの場所でもきれいな丸の形を維持しているように見えますが、どちらも遜色ないように思います。
【アポズミクロン】
【APO-M】
逆光ではどうでしょうか。太陽を見つけて無限遠で写真を撮りました。
どちらもフレアが最小限に抑えられているように感じます。
さらにゴーストやフリンジもほとんどなく高性能なレンズだと思いました。
しかし、細かい葉の描写などはAPO-Mの方がしっかり描写しきっているように思います。
【アポズミクロン】
【APO-M】
個人的にLeicaを持って歩くと写真に撮りたくなるアスファルトです。
アポズミクロンのアスファルトのしっとりとした感じや深い黒の描写はLeicaらしいな…と思いました。
端から徐々に立ち上がっていくような立体感を感じます。
対するAPO-Mは、端まで均一にしっかり描写するレンズのように感じます。
アスファルトの色味が中央部と端で同一となっています。
【アポズミクロン】
【APO-M】
アンダー寄りの写真を撮った場合はどうでしょうか。
アポズミクロンは黒の階調表現の幅が広く、暗いながらも描き分けが見事です。全体的に重みを感じる写りです。特に黒の輝きが艶めかしくぞくっとしました。
APO-Mは同じSS、同じF値で撮影してもアポズミクロンでは暗めに描写されていた屋根が明るく描写されています。金の菊花紋章の輝きが眩いです。
・・・
今までは構図の近い写真で比較してきましたが、最後にそれぞれの味が出ているなと思った写真を2枚ずつ紹介させていただきます。
まずはLeicaアポズミクロンです。
アポズミクロン35mmの特徴として、マクロアダプターなどをつけなくても0.3mまで寄って撮影ができることがあげられます。(距離計連動は0.7mまで。ライブビューでご利用ください。)
Leicaのレンズでテーブルフォトを撮れる日が来るとは…感動しながら撮りました。
寄ってもアポズミクロンらしい描写はそのままです。
アスファルトの他にLeicaを持つと撮りたくなるものは空です。
この写真はアポズミクロンをつけて最初に撮った一枚ですが、この青がLeicaらしさが一番でていて、深みのあるLeicaの青だとワクワクしました。
青空はもちろん、建物のぬっと立っているような絵画のような描写にこのレンズ…すごい…と月並みながら感動してしまいました。
・・・
次はTTArtisanのApo-Mです。
このレンズをつけて青空も撮ってみました。
隅々まできっちり均一に描いてくれ、見たままの描写が欲しい時に信頼できるレンズだと思いました。
青も鮮やかで夏の空を再現しています。なによりこのレンズのすごいところは木の葉っぱの一つ一つの輪郭をはっきり描いているところです。
細かいところまで質を落とさない描写力に驚きました。
何気なくみた景色がきれいでさっと撮影した一枚です。
現実的なレンズだと思っていましたが、光が溢れた時に幻想的なゴーストが起こる時もあるようです。
光を受けた木の幹があまりにもきれいで、細かいところまできっちり描く解像力の高さと偶発的なゴーストが合わさるとこんな幻想的な景色を見せてくれるのかと思いました。
・・・
2つのレンズ、LeicaアポズミクロンM35mm F2.0 ASPH.とTTArtisan APO-M35mm F2で撮り比べてみました。
どちらのレンズがより優れているということはなく、どちらも個性が違う素敵なレンズでした。
アポズミクロンは暗い時、Apo-Mは明るい時がそれぞれより得意なように思いました。
また、レンズの特性を上手く拾ってくれる基盤がきっちりあるM10-Rも忘れてはいけません。
生産完了といえどまだまだ第一線で活躍してくれるカメラです。